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補正予算案に盛り込まれた主な補助金

令和6年度補正予算案の概要
(経済産業省)

経済産業省関係令和6年度補正予算案のポイント(PDF形式:1,039KB)

令和6年度補正予算案には、様々な分野の取り組みを支援する補助金が数多く盛り込まれています。

ここでは、特に注目すべき補助金をいくつかピックアップして解説します。


1. 経済成長・賃上げに関する補助金

物価高や最低賃金引上げに対応するため、中小企業の「稼ぐ力」強化を目的とする補助金です。


中小企業生産性革命推進事業

令和6年度補正予算案における中小企業生産性革命推進事業は、3,400億円の予算が計上されており、中小企業や小規模事業者の生産性向上を目的とした多様な支援策が含まれています。

この事業は、物価高や最低賃金の引上げ、人手不足などの経営環境の変化に対応するために設計されています。

◯事業の主な内容

中小企業生産性革命推進事業では、以下のような支援が行われます。

●設備投資の支援:
中小企業が新しい設備や技術を導入する際の費用を補助します。特に、従業員数21人以上の企業に対しては、補助上限が引き上げられています。

●IT導入の促進:
デジタル化を進めるためのITツールの導入を支援し、業務の効率化を図ります。これにより、企業の競争力を高めることが期待されています。

●販路開拓の支援:
国内外の市場への進出を支援し、企業の売上増加を目指します。特に新製品やサービスの開発を促進するための補助金も用意されています。

●事業承継・M&Aの支援:
経営者の高齢化に伴う事業承継やM&Aを円滑に進めるための支援が行われます。これにより、企業の持続的な成長を支援します。

◯補助金の種類

この事業には、以下の主要な補助金が含まれています。

●ものづくり補助金: 革新的な製品やサービスの開発を支援します。

●持続化補助金: 経営計画に基づく販路開拓の取り組みを支援します。

●IT導入補助金: ITを活用した業務改善を促進します。

●事業承継・引継ぎ補助金: M&Aや事業承継を行う企業に対する支援です。

このように、中小企業生産性革命推進事業は、経営環境の変化に対応しながら中小企業の生産性向上を図るための重要な施策となっています。


中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金

  • 中堅・中小企業が、人手不足等の課題に対応し、成長していくことを目指して行う大規模投資等を促進することで、地方においても持続的な賃上げを実現します。

  • 「大規模成長投資補助金」と「地域企業経営人材確保支援事業給付金」の2種類の取り組みが計画されています。

  • 補助金の上限: 最大50億円で、投資額の1/3が補助されます。投資額は10億円以上が条件です。

出典:『令和6年度補正予算案の事業概要(PR資料)』(経済産業省)

事業環境変化対応型支援事業

令和6年度補正予算案における「事業環境変化対応型支援事業」は、エネルギー価格や物価の高騰、最低賃金の引き上げ、インボイス制度への対応など、様々な経営環境の変化に直面している中小企業や小規模事業者を支援するために設けられた施策です。

この事業は、特に中小企業が持続的に成長し、競争力を維持するための「稼ぐ力」を強化することを目的としています。

◯事業の概要

・予算規模:
112億円が計上されています。
・ 目的:
中小企業が直面する事業環境の変化に対応し、経営の安定化を図るための支援を行います。具体的には、以下のような課題に対応します。
- エネルギー価格の高騰
- 物価の上昇
- 最低賃金の引き上げ
- インボイス制度への適応

◯支援内容

この支援事業では、以下のような具体的な支援が行われます。

・専門家の派遣:
商工会や商工会議所を通じて、経営に関する専門家を派遣し、企業の相談に応じます。
相談体制の強化:
よろず支援拠点へのコーディネーターの増員などを通じて、企業が必要とする情報や支援を迅速に提供できる体制を整えます。
・各種支援施策の活用促進:
中小企業が利用可能な各種支援施策を周知し、実際に活用できるようにサポートします。

このように、事業環境変化対応型支援事業は、中小企業が直面する厳しい経営環境に対処するための重要な施策であり、企業の持続的な成長を支援するための基盤を提供します。


中小企業活性化・事業承継総合支援事業

令和6年度補正予算案における「中小企業活性化・事業承継総合支援事業」は、中小企業の経営基盤を強化し、持続可能な成長を促進するための重要な施策です。

この事業は、特に財務上の問題を抱える中小企業や後継者不在の企業に対して、経営改善や事業承継を支援することを目的としています。

◯事業の概要

・予算規模:
61億円が計上されています。
目的:
中小企業の収益力改善や事業再生を支援し、地域経済の安定と雇用の維持を図ることが主な目的です。
また、後継者不在の企業に対しては、事業承継や引継ぎの支援を行います。

◯支援内容

この支援事業では、以下のような具体的な支援が行われます。

・経営改善支援:
財務上の問題を抱える中小企業に対して、専門家による経営改善計画の策定支援や実行支援を行います。
これにより、企業の収益性を向上させることを目指します。
事業承継支援:
後継者不在の企業に対して、事業承継計画の策定や後継者の育成支援を行います。
これにより、事業の継続性を確保し、地域経済の活性化を図ります。
相談体制の強化:
中小企業活性化協議会や事業承継・引継ぎ支援センターを通じて、企業が抱える課題に対する相談窓口を設置し、迅速な支援を提供します。

このように、「中小企業活性化・事業承継総合支援事業」は、中小企業が直面する様々な課題に対処するための重要な施策であり、地域経済の持続可能な発展を支える役割を果たしています。


中小企業取引対策事業

令和6年度補正予算案における「中小企業取引対策事業」は、中小企業が適正な取引を行えるよう支援するための施策です。

この事業は、特に価格転嫁や取引条件の改善を促進することを目的としています。

◯事業の概要

・予算規模:
8.3億円が計上されています。
目的:
中小企業が直面する取引上の不公平や価格転嫁の困難を解消し、適正な取引環境を整えることを目指しています。
これにより、中小企業の経営基盤を強化し、持続可能な成長を支援します。

◯支援内容

・価格交渉促進:
中小企業が取引先との価格交渉を行いやすくするための支援を行います。
具体的には、価格交渉促進月間を設け、取引条件の改善に向けた取り組みを強化します。
フォローアップ調査:
取引条件の改善状況を把握するための調査を実施し、必要に応じて追加の支援を行います。
これにより、実際の取引環境の改善を図ります。
情報提供と相談支援:
中小企業が適正な取引を行うための情報提供や相談窓口を設置し、企業が抱える取引上の課題に対する支援を行います。

出典:『令和6年度補正予算案の事業概要(PR資料)』(経済産業省)

「中小企業取引対策事業」は、中小企業が直面する取引上の課題を解決するための重要な施策であり、企業の持続可能な成長を支える役割を果たしています。


100億企業育成ファンド出資事業

令和6年度補正予算案における「100億企業育成ファンド出資事業」は、成長志向の中小企業を対象にした重要な施策です。

この事業は、特に売上高100億円を超える企業を目指す中小企業に対して、資金調達の支援を行うことを目的としています。

◯事業の概要

・予算規模:
30億円が計上されています。
・目的:
中小企業が成長するための資金を提供し、特にM&A(合併・買収)や新事業展開を促進することを目指しています。
このファンドは、経営権の委譲を必要としないメザニンファイナンス(劣後ローン)を通じて、企業の財務基盤を強化します。

出典:『令和6年度補正予算案の事業概要(PR資料)』(経済産業省)

◯支援内容

・資金供給:
売上高100億円を目指す中小企業に対して、メザニンファイナンスを中心としたリスクマネーを供給します。
これにより、企業は新たな事業展開やM&Aを行いやすくなります。
ハンズオン支援:
資金提供に加えて、企業の成長を支援するための専門的なアドバイスやサポートも行われます。
これにより、企業は資金を有効に活用し、成長戦略を実行することが可能になります。

「100億企業育成ファンド出資事業」は、中小企業の成長を支援するための重要な施策であり、地域経済の発展にも寄与することが期待されています。

※メザニンファイナンスとは
メザニンファイナンスとは、企業が資金調達を行う際に利用される手法の一つで、デットファイナンス(負債)とエクイティファイナンス(資本)の中間に位置する金融商品です。

「メザニン」はラテン語で「中二階」を意味し、貸借対照表の負債と純資産の間に位置することからこの名称がつけられました

このファイナンスは、主に成長企業やM&A(合併・買収)を行う企業が資金を調達するために用いられます。

メザニンファイナンスの特徴
- ミドルリスク・ミドルリターン:
メザニンファイナンスは、シニアローン(通常の銀行融資)よりもリスクが高く、エクイティファイナンス(株式発行)よりもリスクが低いという特性を持っています。
これにより、投資家は比較的高いリターンを期待できますが、同時に一定のリスクも伴います。
- 資金調達の柔軟性:
メザニンファイナンスは、企業が必要な資金を迅速に調達できる柔軟性を提供します。
特に、企業が成長段階にある場合や、資金ニーズが高まっている場合に有効です。
- 議決権の希薄化を回避:
メザニンファイナンスでは、通常、資金提供者に議決権を与えないため、経営者は経営権を維持しながら資金を調達できます。
これは、特に事業承継やM&Aの際に重要な要素となります。

メザニンファイナンスの種類
1. 劣後ローン:
返済順位がシニアローンに劣るローンで、リスクが高いため金利も高めに設定されます。
企業が破綻した場合、シニアローンの後に返済されるため、リスクを取る分、リターンも大きくなります。
2. 優先株式:
配当や残余財産の分配が普通株式に対して優先される株式です。
通常、議決権は付与されず、高い配当率が設定されることが一般的です。
3. ハイブリッドファイナンス:
劣後ローンや優先株式の特性を併せ持つ金融商品で、資本として扱われることが多いです。
これにより、企業は財務状況を改善しやすくなります。

メザニンファイナンスのメリットとデメリット
メリット
- 資金調達の選択肢を増やす:
メザニンファイナンスは、銀行融資やエクイティファイナンスに加えて、企業に新たな資金調達の手段を提供します。
- 経営権の維持:
議決権を持たない資金調達が可能なため、経営者は経営権を維持しつつ資金を調達できます。

デメリット
- 高いコスト:
メザニンファイナンスはリスクが高いため、資金提供者は高いリターンを求めます。
これにより、企業にとってはコストが高くなる可能性があります。
- 経営の自由度の低下:
メザニンファイナンスを利用する際には、コベナンツ(契約上の制約)や担保の設定が求められることが多く、これが経営の自由度を制限する要因となることがあります。


2. GX関連補助金

カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを支援する補助金が多く見られます。以下、GXに関連する補助金について列挙します。


再エネ導入拡大のためのフレキシビリティ確保に向けた分散型エネルギーリソース導入支援等事業

令和6年度補正予算案における「再エネ導入拡大のためのフレキシビリティ確保に向けた分散型エネルギーリソース導入支援等事業」は、再生可能エネルギーの導入を促進し、エネルギー供給の安定性を高めることを目的とした施策です。

この事業は、特に家庭や企業におけるエネルギーの効率的な利用を促進するための支援を行います。

◯事業の概要

・目的:
再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、エネルギー供給のフレキシビリティを確保することを目指しています。
具体的には、家庭や企業が持つエネルギーリソースを最大限に活用し、電力需給のバランスを取ることが重要です。
支援内容:
この事業では、以下のような支援が行われます。
- 蓄電池の導入:
家庭や企業における蓄電池の導入を支援し、再生可能エネルギーの自家消費を促進します。
- エネルギーマネジメントシステムの導入:
エネルギーの使用状況を管理し、効率的なエネルギー利用を実現するためのシステム導入を支援します。
- ディマンドリスポンス(DR)の促進:
電力需要のピークを平準化するための施策として、需要家が電力使用を調整することを促進します。

このように、再エネ導入拡大のためのフレキシビリティ確保に向けた分散型エネルギーリソース導入支援等事業は、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた重要な施策となっています。


中小水力発電に係る自治体主導型案件創出支援等事業

令和6年度補正予算案における「中小水力発電に係る自治体主導型案件創出支援等事業」は、中小水力発電の導入を促進するための支援策です。

この事業は、地方自治体が主導して行うもので、地域のエネルギー自給率向上やGX(グリーントランスフォーメーション)推進に寄与することを目的としています。

◯事業の概要

・目的:
中小水力発電の初期開発コストや期間を短縮し、開発事業者の参入を促進することを目指しています。
具体的には、自治体が主導して開発地点の候補を調査し、その結果を公表する取り組みを支援します。

・支援内容:
- 流量調査:
水力発電に必要な水流の量を調査するための費用を支援します。
- 専門家の招へい:
開発に必要な専門的な知識を持つ人材を招くための費用を補助します。
- 地域理解の醸成:
地域住民や関係者に対する説明会や情報提供を行うための費用も支援対象です。


地熱資源等開発事業

◯事業の概要

・目的:
地熱資源の開発を進めることで、再生可能エネルギーの導入を促進し、エネルギー自給率の向上を図ります。
また、地熱発電の実用化を進めることで、カーボンニュートラルの実現にも寄与することが期待されています。

支援内容:
- 資源量調査:

地熱資源の量を把握するための調査を行い、開発の可能性を評価します。
- 地表調査や掘削調査:
地熱発電所の設置に向けた具体的な調査を支援し、実際の開発に必要なデータを収集します。
- 次世代型地熱技術の実証:
新しい技術の開発や実証を行い、地熱エネルギーの効率的な利用を促進します。


石油・天然ガス等のエネルギー安定供給実現事業

◯事業の概要

・目的:
石油や天然ガスの供給が国民生活や経済活動に与える影響を考慮し、安定的かつ低廉なエネルギー供給を確保することを目指しています。

特に、国際情勢の変化によるリスクを軽減し、エネルギーの自給自足を促進することが重要です。

・支援内容:
- リスクマネー供給:
国内企業が石油や天然ガスの権益を獲得するためのリスクマネーを供給し、企業の活動を支援します。
- 権益獲得の促進:
国際的なエネルギー市場における競争力を高めるため、企業による権益獲得を促進する施策を実施します。


先進的 CCS支援事業

令和6年度補正予算案における「先進的CCS支援事業」は、カーボンキャプチャー・ユーティライゼーション・ストレージ(CCUS)技術の普及と拡大を目指す重要な施策です。

この事業は、温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みの一環として位置づけられています。

◯事業の概要

・目的:
先進的CCS事業は、CO2の回収、輸送、貯留に関する技術の開発と実証を行い、2030年までに事業を開始することを目指しています。
これにより、温室効果ガスの排出を大幅に削減し、持続可能な社会の実現に寄与することが期待されています。

支援内容:
- ビジネスモデルの確立:
さまざまなプロジェクトに対して、横展開可能なビジネスモデルを確立するための支援を行います。
具体的には、CO2の回収源、輸送方法、貯留地域の組み合わせが異なるプロジェクトを対象とします。
- 官民協力:
官民協議会を設置し、次世代型CCS技術の特定や実証、事業化に向けた調査を支援します。


省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金

令和6年度補正予算案における「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」は、企業の省エネルギー化を促進し、持続可能なエネルギー利用を実現するための重要な施策です。

この補助金は、特に中小企業や大企業が省エネルギー設備を導入する際の経済的負担を軽減することを目的としています。

◯事業の概要

・目的:
省エネルギー投資を促進し、エネルギー需要の構造転換を図ることで、温室効果ガスの排出削減を目指します。
これにより、企業の競争力を高め、持続可能な社会の実現に寄与します。

・支援内容:
- 先進事業:

エネルギーマネジメントシステム(EMS)制御や高効率設備の導入、運用改善による省エネ取り組みを支援します。
- オーダーメイド型事業:
特注設備の導入やプロセス改修を含む省エネ設備への更新を支援します。
- エネルギー需要最適化対策事業:
EMS制御や高効率設備の導入を通じて、エネルギー需要の最適化を図ります。

・補助率と上限額
●先進事業:

 - 補助率: 中小企業2/3以内、大企業1/2以内
 - 上限額: 15億円(非化石転換設備の場合は20億円)

●オーダーメイド型事業:
 - 補助率: 中小企業1/2以内、大企業1/3以内(投資回収年7年未満の場合は中小企業1/3、大企業1/4)
 - 上限額: 15億円(非化石転換設備の場合は20億円)

●エネルギー需要最適化対策事業:
 - 補助率: 中小企業1/2以内、中小企業以外1/3以内
 - 上限額: 1億円


高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金

  • 家庭のエネルギー消費の約3割を占める給湯分野につき、高効率給湯器の導入を支援します。


クリーンエネルギー自動車導入促進補助金

  • 電気自動車や燃料電池自動車等の購入費の一部を補助します。


クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金

  • 電気自動車等の充電設備等の購入費及び工事費並びに燃料電池自動車の充てん設備の整備費及び運営費の一部を補助します。


3. その他の注目すべき補助金

その他にも、地域活性化やイノベーション促進を目的とした補助金があります。


地域未来人材の育成に資する民間サービス等利活用促進事業

  • ICT 技術等を活用した学校活動支援サービスの導入を通じて、教師の業務を効率化しながら、地域の未来を担う子どもたちに対する探究的な学びの高度化を図ります。


介護 DX を利用した抜本的現場改善事業

  • 介護現場の効率化に繋がる効果の高い機器・システムのパッケージ化、改良及び投資効果検証を支援することで、介護現場の DX 投資を促し、介護人材不足の解消に貢献します。


デジタルヘルスケア開発・導入加速化事業

  • 医療の高度化及び医療機関等の生産性向上等に繋がるデジタルヘルスケアの開発及び有用性に関するエビデンス構築を支援することで、医療機関等への導入を加速し、医療機器産業の競争力を強化します。


予防・健康づくり分野における先端技術を活用した社会課題解決サービス開発促進事業

  • AI やデジタル技術を活用したサービスの開発・検証等の支援を行い、社会実装を推進します。


上記の補助金以外にも、多数の補助金が予算案に盛り込まれています。詳細については、経済産業省のウェブサイトなどを参照してください。

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