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兼業・副業人材活用の事例から学ぶ!企業への人材確保支援力向上セミナー
この動画は、四国経済産業局が主催する「兼業・副業人材活用の事例から学ぶ!企業への人材確保支援力向上セミナー」の模様を収めたものです。
セミナーでは、少子高齢化による人材不足が深刻化する中、地域企業が兼業・副業人材を活用することで人材確保を図り、経営課題を解決するための具体的な事例やノウハウが共有されています。
特に、四国経済産業局が実施する「複業マッチングプログラム」の詳細な説明と、プログラムを通じて生まれた具体的なマッチング事例が紹介されています。
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前半のセミナーの内容
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セミナーの前半では、『地域企業の人材不足解消に向けた支援機関職員の人材戦略支援能力向上と支援機関ネットワーク形成の重要性』と題して、以下の内容が説明されました。
◯人口減少による労働力不足:
人口減少によって労働力人口が減少し、一人当たりの生産性を向上させる必要性が高まっています。
そのため、DXや業務効率化、人材育成などが重要となります。
既存市場の縮小、マーケティングや商品力の強化など、より広範な課題への対応も必要です。
◯働き方・価値観の多様化:
兼業・副業、フリーランス、テレワークなどの働き方が一般的になり、働く人の価値観も多様化しています。
副業を行う人材は、金銭報酬だけでなく、経験報酬や心理報酬を求める傾向があります。
企業理念や経営者の魅力に惹かれて副業先を選ぶ人材も増えています。
◯人材戦略の重要性:
多くの企業が人材を重要な経営課題と認識していますが、人事経験や体制が整っていない企業が多い現状です。
従来の「良い人材を選ぶ」という考え方から、「人材から選ばれる企業」への転換、つまり人材戦略が重要になっています。
人事体制が整っていない企業が多いことから、経営支援機関の役割が重要となっています。
◯人材戦略の3ステップ:
人材活用ガイドラインに基づいて、人材戦略は大きく3つのステップで考えられます。
ステップ1:経営課題と人材課題の整理:
課題の解像度を上げることで、より具体的な対策を立てることができます。
ステップ2:人材戦略の検討:
中核人材と業務人材という2つの視点から、現在と将来に必要な人材を明確化します。
ステップ3:人材戦略の実行:
採用、育成、環境整備という3つの領域で具体的な施策を実行します。
◯支援機関ネットワークの必要性:
リソース不足やノウハウ不足といった課題を抱える支援機関が多い現状です。
中小企業庁や経済産業省は、支援機関同士が連携して支援を行う「面的支援」を推進しています。
公的機関と民間機関が連携した支援事例として、琴平町商工会と三島信用金庫の取り組みが紹介されました。
◯副業人材活用のメリット:
中核人材として、人事戦略の立案や実行などを支援することができます。
業務人材として、特定の業務を支援することもできます。
◯支援機関の役割:
人材不足に悩む企業を支援することで、企業の成長を支援し、ひいては地域社会への貢献につながります。
セミナーの前半では、以上のような内容が解説されました。後半では、四国地域で実施されている複業マッチングプログラムの詳細と具体的な事例が紹介されます。
複業マッチングプログラムの詳細
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複業マッチングプログラムは、企業の経営課題解決を目的として、特に中核人材の確保を支援するために、兼業・副業人材とのマッチングを支援するプログラムです。
プログラムの特徴
◯企業経営者様と副業人材との共感重視:
企業の経営者と副業人材がお互いのビジョンや価値観を理解し、共感に基づいたマッチングを目指します。
◯交流を通じた対話型プログラム:
企業と副業人材が直接顔を合わせ、交流する機会を設けることで、相互理解を深めます。
具体的には、チェックインイベントやフィールドワークなどが実施されます。
◯地域コーディネーターによる伴走支援:
地域に密着した支援を行うパートナー企業が、企業の課題整理や言語化、副業人材とのマッチングなどをサポートします。
プログラムの流れ
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1.説明会:
プログラムの概要説明や、兼業・副業人材活用のメリットなどが説明されます。
2.企業のエントリー:
プログラムに参加を希望する企業がエントリーを行います。
3.企業の魅力・強みの言語化、課題・プロジェクト設計:
地域コーディネーターの支援を受けながら、企業は自社の魅力や強みを言語化し、副業人材に依頼するプロジェクトを設計します。
4.副業人材の募集:
プログラム事務局が、企業のニーズに合致した副業人材を募集します。
5.チェックインイベント・フィールドワーク:
企業と副業人材が初めて顔を合わせ、企業紹介や質疑応答などを通して交流します。
6.提案書作成:
副業人材は、企業の課題や魅力に対する提案書を作成し、提出します。
7.面談オファー:
企業は、提案書を元に、面談を希望する副業人材を選定し、オファーを出します。
8.マッチング面談:
企業、副業人材、事務局、地域コーディネーターが同席し、提案内容や条件面などについて具体的な協議を行います。
9.マッチング成立:
双方の合意が得られれば、マッチングが成立し、プロジェクトが開始されます。
参加企業の特性
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四国地域で実施された複業マッチングプログラムに参加した企業には、以下のような特性が見られます。
◯多様な業種:
建設、不動産、食品、飲食、観光、農業、放送、通信、木材加工など、幅広い業種の企業が参加しています。
◯規模:
従業員1名から10名程度の小規模事業者から、100名以下の企業まで、様々な規模の企業が参加しています。
◯課題:
営業強化、ブランディング、マーケティング企画、商品開発、広報PR、人事関連、地域活性化事業など、多岐にわたる課題に取り組んでいます。
◯求める人材像:
→マインド:
地域創生や活性化に関心のある人材、企業のビジョンに共感し、アイデアを提供してくれる人材を求めています。
→スタンス:
アイデア立案や企画構想など、企業と議論しながらプロジェクトを進めてくれる人材を求めています。
コンサルタントのように上から目線で指示するのではなく、一緒に考え、協力してくれる人材が求められています。
→スキル:
企業の課題に応じて、商品企画、SNS運用、営業戦略など、専門的なスキルを持つ人材を求めています。
副業人材の特性
四国地域の複業マッチングプログラムに参加する副業人材には、以下のような特性が見られます。
1. 経験豊富で多様なスキルを持つ
◯働き方:
約半数が会社員で、フリーランスや個人事業主、会社経営者なども参加しています。
◯副業経験:
約3分の1は副業経験者ですが、約13%は四国との繋がりを求めて副業に初挑戦する人材です。
◯年代:
30代から50代を中心に、幅広い年代層が参加しています。
◯属性:
企画・マーケティング、営業、広報PR、クリエイティブ、経営、財務、人事・採用など、多様な職種・スキルを持つ人材が参加しています。
2. 地域貢献意欲が高い
◯出身地:
参加者の約5人に1人が四国出身者で、現在は都市部に住んでいても出身地の企業や地域活性化に関わりたいという思いを持っています。
◯参加動機:
地域の人や企業との新たな出会いを求めている、本業以外での経験を積みたいなど、金銭面以外の報酬を重視する傾向があります。
3. 企業理念や経営者の魅力を重視する
◯副業先選びの基準:
企業理念・ビジョン、事業内容、経営者の魅力を重視する傾向があります。
これらの特性から、四国地域の副業人材は、単に報酬を得るためだけでなく、自身の経験やスキルを活かして地域に貢献したいという高いモチベーションを持っていることが分かります。
また、企業側も、単なる労働力としてではなく、企業理念に共感し、共に課題解決に取り組んでくれるパートナーとして副業人材を受け入れていることが伺えます。
具体的な事例
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①KBN株式会社の事例
KBN株式会社は、香川県坂出市に本社を置く放送・通信業者で、ケーブルテレビ事業を主力としています。
同社は以下のような課題を抱えて参加しました。
若年層へのリーチ不足: 特に20歳から40歳代の若者層への訴求力の強化が課題でした。
テレビ離れへの対応: テレビ離れによるビジネスモデルの変化に対応していく必要がありました。同社はアプリ配信の契約訴求など、新たな取り組みを進めていました。
今後の事業戦略: これらの課題を踏まえ、今後の事業戦略をどのように展開していくべきか模索していました。
KBN株式会社は、これらの課題解決に向けて、副業人材に求める人物像として下記を挙げていました。
地域創生への関心: 香川県坂出市の地域創生に興味関心のある人材を求めていました。
KBNの魅力発信: KBNの魅力を広く発信し、サービス契約獲得に貢献してくれる人材を求めていました。
この募集に対して、神奈川県出身で香川県在住の40代男性会社員がマッチングしました。
副業人材の提案:
動機: これまでの営業経験のノウハウをKBN株式会社に共有することで、課題解決に貢献したいという強い思いから提案を行いました。
内容:
営業力強化のためのビジョンやポイントを共有し、具体的な営業力強化のミッション・施策を策定・実行することを提案しました。
マッチングの理由:
方向性の一致: イベントや面談を通して、KBN株式会社と副業人材の間で、今後の事業展開の方向性やビジョンが一致しました。
信頼関係: 互いに共感し、信頼できる関係性を築けたことが、マッチング成功に繋がりました。
具体的提案: 営業力強化や新規事業拡大といったKBN株式会社が目指す方向性に合致する具体的な提案が評価されました。
マッチング後の活動:
契約形態: 業務委託契約を締結し、現在も活動中です。
活動内容:
月2回程度の打ち合わせをベースに、社内営業スタッフの育成、新規事業の営業戦略策定・実行サポートなどを行っています。
KBN株式会社の事例は、副業人材の持つ専門知識や経験が、企業の課題解決に大きく貢献することを示しています。
特に、外部の視点を取り入れることで、社内だけでは気づかなかった課題や解決策を見出すことができるという点で、副業人材活用は大きなメリットをもたらすと言えるでしょう。
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②紅葉屋の事例
紅葉屋は徳島県阿南市にある、菓子やパンの製造販売事業を行う企業です。紅葉屋は下記の課題を抱え、複業マッチングプログラムに参加しました。
ECサイトでの販売拡大: 自社サイト、Amazon、楽天市場などのECサイトでの販売拡大に課題を感じていました。
SNSマーケティング: 効果的なSNSマーケティング戦略の立案・実行に課題を感じていました。
市場調査・商品開発: 時代のトレンド調査や、それに基づいた新商品の開発に課題を感じていました。
これらの課題に対し、大阪在住の50代フリーランスの女性がマッチングしました。
副業人材の提案:
動機: 紅葉屋の経営者の話を聞き、魅力的な商品や事業内容を持っているにも関わらず、その魅力が十分に発信されていないと感じ、支援したいという思いから提案しました。
内容:
「売れる商品開発」を支援
費用をかけずに効果的なSNS運用やプレスリリースによる情報発信
楽天ECサイトのスキルアップと売上アップ
マッチングの理由:
豊富な経験: 副業人材の豊富な経験に基づいた的確なアドバイスが、イベントや面談を通して高く評価されました。
信頼関係: 紅葉屋は副業人材とのコミュニケーションを通じて、信頼できる人物だと感じました。
寄り添った提案: 当初ECサイト運用に悩んでいた紅葉屋に対し、まずはマーケティング戦略を一緒に考え、段階的に課題解決を進めていくという寄り添った提案が、納得感を与えました。
マッチング後の活動:
契約形態: 業務委託契約を締結し、約半年間プロジェクトを進めています。
活動内容:
既存商品のコンセプトやマーケティング戦略の整理
将来的には、ECサイトの活用も視野に入れています。
紅葉屋の事例は、副業人材のマーケティングや商品開発に関する専門知識が、企業の成長を促進する可能性を示唆しています。
特に、中小企業では、専門人材の不足が課題となるケースが多く、外部人材の活用は有効な手段と言えるでしょう。
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③ヤングドライグループの事例
ヤングドライグループは、愛媛県新居浜市で一般クリーニング事業を営む企業です。同社は、下記の課題を抱えていました。
従業員の長期定着: 従業員の長期的な定着を促進するための施策に課題を感じていました。
新卒採用: 新卒採用への対応に課題を感じていました。
バックオフィスのDX化: バックオフィス業務のデジタル化を進める必要性を感じていました。
業務効率化: 業務効率化を推進し、生産性を向上させる必要性を感じていました。
従業員教育: 従業員のスキルアップを図るための教育体制の強化に課題を感じていました。
これらの課題解決に向けて、ヤングドライグループは、副業人材に求める人物像として、下記を挙げていました。
社内協力: 会社の良い会社作りを目指し、社内の他のメンバーと意見を出し合い、協力してくれる人材を求めていました。
この募集に対して、神奈川県在住の40代会社員/個人事業主の男性がマッチングしました。
副業人材の提案:
動機: ヤングドライグループの社長の思いに強く共感し、そこで働きたいと思う若い世代が多いことを強みだと感じ、自身の経験を活かして支援したいという思いから提案しました。
内容: 新卒採用開始に向けた実行支援を提案しました。
マッチングの理由:
知識・経験: イベントや面談を通じて、副業人材が新卒採用に関する知識・経験を持っていることが分かりました。
信頼関係: 対面でのコミュニケーションを通じて、互いに信頼できる、共感できる人柄であることを確認しました。
マッチング後の活動:
プロジェクト: 新卒採用支援のプロジェクトを実際に進めています。
ヤングドライグループの事例は、副業人材の人事・採用分野における専門性が、企業の課題解決に貢献する可能性を示しています。
特に、地方の中小企業では、人事・採用に関するノウハウを持つ人材が不足しているケースが多く、外部人材の活用は効果的な解決策となり得ます。