俯瞰メールⅡ009号
俯瞰俯瞰工学研究所 松島克守所長の俯瞰メール009号をお届けします。
混沌の中で先が見えないコロナ後の世界、今それを認識するために「コロナ後の世界」、「Gゼロの地経学」、「コロナ後の経済」、「コロナ後の日本」を俯瞰の視座としています。そして、俯瞰サロンのご案内、俯瞰の妄想、俯瞰人の料理、私感・雑感という記事構成です。
記事のURLを参考資料として読んでいただくと俯瞰的な認識が深くなります。 ご意見、ご感想を頂けると励みになります。また読者の投稿歓迎です。6000超える方々に配信しています。熱心に読んで頂いている方もかなりいらっしゃいます。
6月20日 俯瞰人 松島克守
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◆時候のご挨拶◆
花の季節が終わり、木々の緑が濃くなり初夏を感じさせます。田植えが終わった田では稲がかなり成長しました。あとひと月でオリンピックです。国民の多くはオリンピックよりワクチン接種です。若い方々に早く接種をという気持ちです。でないと日本経済の本格的な復旧はありません。居酒屋で盛り上がるパワーが経済の原動力です。現役の頃を懐かしく思い出します。飲み屋でも仕事をしていました。
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◆目次◆
【1】コロナ後の世界
G7で世界は動き出したか、一対一路の岐路
【2】Gゼロの地経学
米国と中国と競争的共存の駆け引き、サイバーテロ国家のロシアの取り扱い
【3】コロナ後の経済
ワクチン接種で先進国と途上国の格差は広がる、コロナ後復興の中国頼みリスク
【4】コロナ後の日本
日中関係をどうデザインするか、日本はEVの波の中でドイツと中国に勝てるか、日本製造業の凋衰が露呈してきた、日本式経営の破綻
【5】俯瞰サロンのご案内:第85回俯瞰サロン(本日6/22開催)
お申込:https://fukansalon85.peatix.com/
次世代マーケティングを探求する、タイガー魔法瓶株式会社取締役 浅見彰子
さんに聞く「老舗刷新請負人のお仕事~家庭から宇宙まで~」
【6】コロナ後の製造業、というパネルディスカッション
【7】再掲載:noteにマガジンをアップしました
【8】俯瞰の妄想
ヘテロトピアという認識の構造
【9】シンプルで美味しい料理
感激の「ラタトゥイユ」
【10】私感・雑感
それにしても受け皿がない総選挙、胸に突き刺さったニュース
※facebookのグループを始めました:https://www.facebook.com/groups/291823599331014
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◆1.コロナ後の世界◆
<G7で世界は動き出したか>
イギリスで3年ぶりにG7が開催されました。「G7は戻ってきた!」ですか。そして共同宣言はとして、
・新型コロナウイルスについて、来年2022年までの感染終息という目標を掲げ、途上国などにワクチン10億回分に相当する支援
・気候変動や生物多様性をはじめとした共通の地球規模課題に対しては中国と協力する一方、新疆ウイグル自治区の人権問題や香港情勢などで、人権や基本的自由を尊重するよう中国に求める
・巨大経済圏構想「一帯一路」への対抗を念頭に、途上国のインフラ整備に向けた具体的な支援の方策を検討
これ以外にも、法人税率なども議論されたようですが。とにかく台湾の脅威への言及が注目されています。これがバイデン大統領の最大の目的だったのでしょう。これで対中国包囲網ができたということでしょうが、まさに呉越同舟です。菅首相は中国名指しで批判していたようですがG7で尖閣という直接軍事的な脅威があるのは日本だけです。あとはある意味地政学的という概念上です。アメリカは西太平洋における自国の覇権が脅かされているというかなり具体的な脅威はあります。
要は、G7が束になって対抗しないといけないほど中国が強大になったということです。アメリカとヨーロッパという欧米が既得権益を脅かされるという脅威をやっと実感したということでもあります。単独で中国に対抗できない日本にとっては大きな成果と考えていいですね。
中南米、アフリカという欧米のこれまでのテリトリーを、ワクチン外交で中国に浸食されている現状に対して、やっと10億回分の無償供与を宣言できるまでに欧米が回復したという宣言でもあります。しかし、人口から見ると極めて不十分です。10億回、これはバイデン大統領とジョンソン首相の国内向けのお土産です。特許一時停止の話題はどうしたのでしょう。日本も1億回!といわないと存在感が出ませんね。その生産ができない、残念な技術・モノづくり大国ですね。記念撮影で後列に置かれた菅首相の位置がG7における日本の存在感です。前列はカナダ、アメリカ、イギリスとアングロサクソン、そしてフランス、ドイツです。イタリアと日本はバックバーナーですね。
ただ、トランプ大統領が滅茶苦茶にした西側の国際関係を、何とか修復したということは極めて重大で、やりたい放題の中国、ロシアにとっては、やりにくくなりました。
このG7と中国のはざまにいる国々はしばし沈黙でしょうか。足りないワクチンはやはり中国から供給を受けるけることになるでしょうから。また招待されたインドと韓国もむしろ困惑でしょう。特に再選なしで任期1年を切っている文大統領を相手にする首脳はなかったでしょう。ジョンソン首相のD11?何を考えているのでしょうか。旧英連邦の国を加えて大英帝国の夢、英国ファースト!そんな頭の持ち主でしょう。
<一対一路の岐路>
G7と中国との経済的な対立構造は、中国が独自の経済圏をアジアヨーロッパに広げる一帯一路の戦略に対する対抗策です。一帯一路構想は、インフラ整備等に巨額の融資を行い支援するという触れ込みでしたが、返済が滞った場合そのインフラの管理権を中国に譲渡する、あるいは周辺の土地を買収するといった契約条項が存在することが判明しました。実際スリランカは港湾の管理権を中国に譲渡せざるをえませんでした。ギリシアも結果として交港湾の管理権を中国に譲渡しました。
G7の中では唯一イタリアがこの一帯一路のメンバーになり、中国からの支援を受けています。またEUの中でもいくつかの国で一帯一路の融資を受けています。高速道路の建設に返済不能なほどの巨額な融資を受けたモンテネグロがEUに泣付きましたが、 EUは支援しませんでした。
もしもモンテネグロが債務不履行となれば、契約上中国がモンテネグロの土地を取得する権利を持つことができるということです。
今回のG7では、アメリカを中心に途上国のインフラ整備に巨額な支援をすることが宣言されました。そしてその支援には一切ひも付きはないと強調し、中国の一帯一路を牽制しています。しかし、かつてヨーロッパを支援したアメリカと違い、今回は無償援助というわけにはいきません。とりあえずタスクチームを立ち上げて検討ということになっています。
一方、その一帯一路も思ったよりも進展していません。そしてすでに結んだ協定を破棄するような動きも出ています。むろん欧米と中国の間で揺れるパキスタンのような途上国は、はっきりとした立場を表明することはありません。ラオスやカンボジアなどは中国の支援を断ることはできません。そして今、ミャンマーが綱引きの中でクーデーターです。
中国はG7に先立ち、「反外国制裁法」を制定して、中国関連が深い企業に対して欧米の制裁に加担すれば中国から逆制裁を受けるという牽制をかけています。アメリカを含めG7の企業は巨額の経済取引があるので、中国に対する立場をはっきり打ち出せません。まさに呉越同舟の状態です。
ここに来てアメリカが、中国に対する圧力としてコロナウイルスの武漢研究所からの流出と言う話を持ち出してきました。当初からありましたが、トランプ政権時代では陰謀説として排除されてきました。しかしバイデン大統領は情報機関に精査の報告を求める決定をしました。メディアもなぜか陰謀説を外し、積極的に情報を配信する様になりました。下のURLにある‟ 「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団、新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!“は、読むと興味深いです。初期の研究にアメリカが研究費を出していたという、ややこしい話も取りざたされています。闇は深いようです。
これに対して、中国は別の場所からコウモリ由来のコロナウイルスを発見したという対抗策に出ました。そもそもパンデミック当初からWHO事務局長との不自然な連携と、かたくなに調査を拒んできた言動が今、武漢研究所流出説を盛り上げています。
G7閉幕 首脳宣言 “台湾海峡”に初の言及
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210613/k10013083281000.html
中国で「反外国制裁法」が成立 欧米の制裁に対抗
https://www.asahi.com/articles/ASP6B6V0HP6BULFA02F.html
豪、州政府と中国との協定破棄 一帯一路は「外交と一致せず」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020090400359&g=int
パキスタン首相、一帯一路「地域統合に道」アジアの未来
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB206RZ0Q1A520C2000000/
モンテネグロ、中国への債務返済が困難に EUは肩代わりに難色
https://newsphere.jp/world-report/20210416-2/
欧州で中国への傾斜を強める「怨念の民族」とは(セルビア)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020081400380&g=int
新型コロナは動物由来か、武漢ウイルス研究所から流出か バイデン米大統領が調査指示
https://www.tokyo-np.co.jp/article/106900
「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団、新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/post-96453.php
素手でコウモリを触っていて噛まれ…削除された中国武漢研究所の映像が公開
https://s.japanese.joins.com/Jarticle/279223
中国・雲南省の鉱山、新型コロナ起源探しで注目
https://jp.reuters.com/article/china-mine-covid-idJPKCN2DM0A7
中国研究チーム、コウモリから新たなコロナウイルスを複数発見
https://www.cnn.co.jp/fringe/35172242.html
◆2.Gゼロの地経学◆
<米国と中国と競争的共存の駆け引き>
アメリカの中国抑え込みの経済政策は、トランプ政権の政策を基本的に引き継ぎながら、やや強化する感じです。関税もとりあえずトランプ政権のまま引き継いで、今後の交渉次第では緩めてもいいという交渉カードですが、関係する各国は迷惑でもあります。
まず、米国のバイデン政権は6月8日、重要製品4分野に関するサプライチェーン強化に向けた報告書を発表しまた。「国内外での持続可能なサプライチェーンへの投資」が標語です。この中にはSDGs的な制約が入ります。本心は国内産業振興、Buy Americanですが。
そして、アメリカの公開会社会計監査委員会は、5月13日、「外国企業説明責任法」における「完全な調査・検査が行えない(海外登記の)会計監査法人」の認定の細則を発表し、パブリックコメントを募った。これは、主に中国関連銘柄を狙った監督管理の政策が実行段階に入ったことを意味している。法律自体はトランプ政権で制定されています。執行は2024年からですから、中国との交渉カードの一つでしょう。
さらに、バイデン大統領は、中国軍と関連があるとされる中国のテクノロジー企業や軍事関連企業を「共産中国軍事企業」として、59社に米国民が投資することを禁止する大統領令を発表しまた。アメリカでの資金調達を制限するというものです。トランプ大統領のリストで指定を受けたのは44社でしたが、今回はそのうち26社を継続して指定し、33の企業と組織を新たに追加して59社にしました。
5G基地局のファーウェイ、ZTEはNO、ドローンのDJIはOKという仕分けです。中国の海底ケーブルもアメリカは厳重注意です。その一方でアメリカは、デンマークの海底ケーブルからヨーロッパの同盟国の情報を抜き出してスパイ活動をしています。繰り返しますが、世界はサイバー戦争中で、敵も味方のない?
<サイバーテロ国家のロシアの取り扱い>
このところ、ロシアからアメリカへのサイバーテロが続いています。石油のパイプラインという経済の大動脈にサイバー攻撃をかけシステムを停止させました。アメリカ東海岸では具体的にガソリンの供給に影響を与えました。そして食肉加工会社もサイバーテロを受けました。いずれもロシアに拠点があるサイバーテロの組織です。これに対してはアメリカも反撃して、拠点となっているサイトを潰すと同時に、身代金として支払ったビットコインを奪い返しました。まさにサイバー空間の戦争です。
ロシア政府は関与してないと言っていますが、このテロそのものには関与してないものも、この組織はロシアの諜報組織の別働隊です。トランプ大統領当選の選挙でクリントン候補を落としめたネット上の工作もこの組織が手がけていると、バイデン政権になってもこの話は蒸し返されています。今回の米ロ首脳会談でバイデン大統領はレッドラインを示して自粛を求めましたが、プーチン大統領はサイバー攻撃を一番仕掛けているのはアメリカだとやり返しています。
北朝鮮は外貨獲得のため積極的にサイバー攻撃による身代金テロ展開しているようですが、さすがにアメリカのインフラには手を出していません。中国人民解放軍も積極的にサイバー空間で活動しています。JAXAを始め日本企業の産業技術を抜き取る活動を積極的にやっているようです。むろんアメリカの最先端兵器などの情報も、これまで何度も抜き取っています。中国のステルス戦闘機は、アメリカのそれと全く瓜二つになっています。最近の宇宙開発の進展もかなりの情報をアメリカから抜き出した結果だと思います。
ロシアはサイバーテロ以外にもシリア内戦に介入し、結果としてアサド政権の勝利を助け、シリア国内に軍事基地という利権を手に入れました。そして歴史的な宿敵であるトルコとロシアは、最近は積極的に中東でのプレゼンスを高めるために協調しています。
トルコはNATOの一員でありながら、ロシアの防空ミサイルを購入したことでNATOの求心力は急速に衰えました。最近、バイデン大統領はNATOの総会に参画し、トランプ大統領が時代遅れとして軽視したNATOに対して積極的な参画をコミットしました。ロシアからの侵攻に脅威を感じているバルト海3国は、ほっとしたでしょう。エストニアに行った時に、エストニアが感じている脅威を直接聞きました。小さな国でありながら徴兵制で軍事力を整備して「ロシアにはかなわないが、エストニアの軍隊には痛い棘があることをアピールしている」と言っていました。
このロシアは、最近、中国と軍事的な連携を深めています。中国包囲網が強化されれば、中国とロシアは軍事同盟を結ぶのではないかとも言われてきます。そこまでいかなくても、ロシアと中国が連携してアメリカとヨーロッパに対して軍事的な対抗をするという危惧はかなり高まっています。ロシアは、すでにウクライナのクリミア半島を併合し、さらにウクライナ東部を事実上占領していますから、いつでも軍事的な圧力を西側にかけられます。中東でもシリアを中心に影響力を行使できます。
一方、中国は南シナ海や東シナ海での海洋進出、さらにヒマラヤにおけるインドへの軍事攻撃などを起こしています。ロシアと中国が連携して行動していると思いませんが、両者が連携すれば、世界情勢に大きな不安定要素を与えます。アメリカは、西と東の2つの戦線に同時に関与するだけの力がすでにありませんから、 まずNATOを立て直してロシアに対抗し、クワッドを核に西太平洋で中国と対峙する戦略です。このためにバイデン大統領は精力的に動き、形の上では中国包囲網をほぼ作り上げました。しかしNATOを中心としたヨーロッパも呉越同舟の面もあり、東アジアでは韓国という取り扱いが難しい準同盟国があり、クワッドの一員といってもインドは独自の動きをします。中露が連携してウクライナと台湾の両方面で緊張を高める事態となれば、バイデン政権は苦境に追い込まれます。
日本は、今回のG7でもアメリカとほぼ一体となって中国包囲網の構築に参画してきました。といっても日本は直接的に中国と国境を接している国ですから、安定的で安全な日中関係を作り上げるしかありません。かなり高級な外交技術が必要ですが、今の日本政府にそれがあるのか心配です。ビジネスコンサルタントのスキルだけでは、トランプ流のディールになりかねません。
米国のサプライチェーン強化
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/06/64a24f9651954e67.html
サプライチェーン強化に向けた報告書
https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2021/06/100-day-supply-chain-review-report.pdf
中国企業を狙う、米国「会計ルール」発表の衝撃
https://toyokeizai.net/articles/-/429176
バイデン政権、中国企業への投資禁止を59社に拡大
https://www.bbc.com/japanese/57353675
米国大統領が発表「中国軍産複合体企業」の中身
https://toyokeizai.net/articles/-/433154
米国、アリババやテンセントを投資禁止対象に追加せず-関係者
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-01-14/QMWFFGT1UM0W01
米軍「中国DJI製ドローン」の安全性を認めた背景
https://toyokeizai.net/articles/-/433524
米国が警戒、中国が脅かす「海底ケーブル」覇権
https://news.yahoo.co.jp/articles/404119a6ca50d95f63a5b50d54b105b4475589f5
アメリカがデンマークとの協力関係を悪用してヨーロッパ各国の政治家をスパイしていたことが判明
https://gigazine.net/news/20210601-nsa-denmark-spied-european-politicians/
米 パイプラインのサイバー攻撃 “ロシアの集団が関与” FBI
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210511/k10013023001000.html
食肉世界最大手にサイバー攻撃、ロシア発か 北米・豪で操業停止
https://jp.reuters.com/article/cyber-jbs-whitehouse-idJPKCN2DD4C1
米バイデン政権、ロシアに制裁 SolarWinds悪用サイバー攻撃や大統領選干渉で
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2104/17/news024.html
アメリカの悪夢「中露軍事結託」
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/23250
バイデン=プーチン首脳会談、戦略的安定に向けた対話で合意 人権・サイバー問題では溝も
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/post-96522.php
◆3.コロナ後の経済◆
ワクチン接種で先進国と途上国の格差は広がる
先進国ではワクチン接種が進み、収束の目途がつきつつあります。イギリスのようにインド株で再度感染が増えているところもありますが、これもワクチンを2回接種すれば十分な感染防止の効果があると言われていますから、基本的に収束に向かうでしょう。アメリカでは特にワクチン接種によって経済活動の回復が顕著です。 一部では経済の過熱やインフラの懸念すら表明されていて、金融当局は2023年には金融緩和を打ち切ると発表もしています。
一方途上国は、ワクチンの入手が困難でワクチン接種が進んでいません。 G7で10億回分のワクチンを途上国に支援すると決めましたが、地球の人口を考えれば、ゆうに100億回分以上必要です。従って途上国のワクチン接種はかなり時間がかかります。という事は、経済活動再開がその分遅れます。途上国は基本的に成長のエンジンですから、その途上国が従前どおり経済活動をしない限り、世界経済の根本的な回復はありません。
したがって、先進国と途上国のワクチン接種の格差をどうやって縮めるかが、大きな課題です。広がった先進国と途上国のワクチン接種の格差はSDGsといった理念からは大きく外れます。ここに中国のワクチン外交が割り込んできていますが、 G7といった先進国は、10億回ではなく、100億回分のワクチンを供給する覚悟を決めなければなりません。
日本も生産体制を整えて数億回分を供給する努力をすべきです。それが経済大国の義務ではないでしょうか。長期的には日本経済の成長につながります。
<コロナ後復興の中国頼みリスク>
コロナ危機からいち早く回復し生産を軌道に乗せている中国は、経済は好調です。輸出入ともに大幅に増加しています。旺盛な内需が回復しているアメリカ向けの輸出も好調です。米中対立といっても、経済は積極的な交流をしているようです。
ヨーロッパも、コロナ後の経済回復を中国との経済交流でと考えています。ですから、G7でもアメリカの強硬な態度や中国包囲網にも距離を置いたポジションを取りました。人権問題での厳しいポジションはアメリカもヨーロッパも譲れませんが、経済的には現実的な折り合いをつける道を探しているのでしょう。
しかし、その中国も内部構造においてはいろいろな問題点を抱えていると指摘されています。まず不動産バブルのような経済の水ぶくれです。これについて中国の金融当局はかなり巧い対応をしてきましたが、世界情勢が極めて不安定ですから、いつバブル崩壊するか関係者一同は薄氷を踏む思いでしょう。
経済とは違う次元ですが、深圳の高層ビルが原因不明の振動を起こして問題になっています。巨大な超高層ビルで揺れが止まらないようです。もちろんビルからは全員退避して、付近のビルからも待避しているようですが、まさにこの不安は、中国経済の不安と重なってみえます。
サプライチェーンの問題もあり、一時的には中国の経済にコロナ後の復興を期待するしかありませんが、中国依存から脱出した、持続した可能な経済モデルが構築されなければなりません。この辺の日本の政策が全く見えません。コロナとオリンピックで政府関係者が頭チンチンなんでしょう。
WHO 感染の波、アジア諸国に急拡大 国際機関が警鐘
https://www.cnn.co.jp/world/35170418.html
ワクチン格差にフランス苦悩 過疎地・高齢者・PC無し
https://www.asahi.com/articles/ASP3H4TP3P3BUHBI00Y.html
世界各国のワクチン接種状況
https://www.jiji.com/jc/tokushu?id=owid_vaccination&g=cov
チャートで見るコロナワクチン世界の接種状況
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-vaccine-status/
2021年の中国経済の行方
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=38362
中国、100億ドル規模のデフォルト…中国バブル崩壊と原油価格変調、世界経済のリスクに
https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/fuji-kazuhiko/243.html
中国の経済統計、ホントの信用度は?GDP至上主義と地方の水増し疑惑
https://media.rakuten-sec.net/articles/-/30822?page=1
中国がコロナ後の世界経済を牽引できない理由
https://toyokeizai.net/articles/-/420773
深セン市の72階建てビルで「謎の揺れ」いまだ原因解明されず
https://www.news-postseven.com/archives/20210605_1664402.html?DETAIL
◆4.コロナ後の日本◆
日中関係をどうデザインするか
G7で日本は、アメリカとタグを組んで対中国包囲網の構築に動きました。結果として、宣言の中に台湾危機に対する懸念を盛り込むことができました。しかしこれは、中国にとっていちばん嫌なことに日本が加担したことになりますから、今後の日中関係にマイナス要素として影響してきます。台湾にワクチンを贈与したことも、不愉快であることを表明しています。
このような中で日中関係をどうデザインするかが、喫緊の外交課題です。韓国のように、G7から帰ったらまったく異なる立場を中国に表明するような訳にはいきません。米国とは違う日本独自の日中関係構築を急ぐ必要があります。
中国は中国共産党100年の式典のために、かなり強行に中華思想を推進してきましたが、これが終われば少し現実的な対応をしてくるのではないでしょうか。バイデン大統領が構築した中国包囲網は中国にとっては予想以上の包囲網だと思います。加えて欧米以外の各国も中国に対する不信感が根強く、中国も「愛される中国」というような発言まで出てきました。
これまでも、日本と中国は政経分離という、ある意味で大人の関係を続けてきましたが、欧米が主張する人権問題について日本は厳しい意思決定を求められます。もともと日本は人権問題についてかなり甘いというか、欧米の基準より寛容でしたが、ウイグル地区の実態が報道されるに従い、G7のメンバーとして人権に真正面から対峙なければならなくなりました。
メディアでの議論は、コロナとオリンピックばかりで日中関係のデザインの議論はほとんどありませんが、関係専門家はきちっと議論を詰めていてくれることを願っています。
<日本はEVの波の中でドイツと中国に勝てるか>
自動車大国のドイツと中国は、急激なEV シフトを進めています。完全にEV一本に絞ってきています。かねてから、これは日本の自動車産業に対抗する戦略だとも言われてますが、日本はまだ色々な選択肢がある、というような議論に流れています。むろん不連続的にEVに自動車が変わるわけではありませんが、10年というスパンを見ればEVの世界になるでしょう。
FCVについてトヨタはまだ未練があるようですが、主力の乗用車にとって選択余地はありません。EVのインフラはこれから整備しなければなりませんが、これはできます。水素ステーションのインフラは経済的に不可能でしょう。長距離バスや物流ルートなどの分野では、FCVの利用と専用の水素ステーションは整備されると思います。
いつでもEVは作れると言っていますが、 10年後の日本の自動産業はどうなっているか極めて心配です。かつて造船世界一、鉄鋼世界一、半導体世界一、そして自動車世界一と素晴らしいトラックレコード作ってきましたが、その現状は無残なものです。自動車産業はその例に加わることがあれば、日本経済は確実に崩落します。
<日本製造業の凋衰(弱り衰える)が露呈してきた>
日立製作所が英国の国鉄に納入した最新鋭の鉄道車両の880両がトラブルです。原因は応力腐食です。わずか3年ですから、材料そのものの不良も考えられます。気になるのは、以前に神戸製鋼所は検査データを偽造して新幹線車両の台車の不良を引き起こした事件です。
このメールでも取れ上げましたが、日本企業による検査データの不正は後をたちません。タカタのシートベルトは重大な人身事故を起こしています。気になるのは次々と不正が発覚し、驚くことに発覚後もそれが継続されているということです。日本の製造業の根幹が腐っているとしか考えられません。“ものづくり”を大声で議論している人はまだいますが、この現実をどう評価してどう、考えているのでしょうか。私は、日本製造業は虚構の中に生きてきたと認識しています。品質世界一、これこそが虚構です。
これから人生を開いていく優秀な人材が、製造業に身を投じるとは考えにくい状況です。私はキャリアの最初にその世界に入りました。ジェットエンジンという最も高度な製造業でしたが、当時のアメリカとはかなり格差がありました。もともとライセンス生産ということもあり、格差がありました。製造する工作機械も主要な設備はほとんどアメリカからの輸入でした。日本の工作機械は補助的な利用に限定されていました。日本の生産技術は、飛躍的な発展を遂げて一時は世界の最高峰に立ったかに思いましたが、その後の慢心で今は、その技術水準は危惧すべき状態だと思います。これは個人的にもなんとかしたいという思いはあります。したがって、このメールで提案しましたが、日本の製造業どうするかというパネルディスカッションを企画したいと思います。
<日本式経営の破綻>
また東芝ですが、昨年の株主総会が「公正に運営されたとは言えない」と、第三者委員会が認定した報告書が6月10日に発表されました。東芝は監査委員の「機能不全」を認めて、取締役の候補者13人から2人を除くことを決めました。 2人は、いずれも社外取締役で監査委員長を務めてきた太田順司氏と監査委員を担ってきた山内卓氏です。
生産技術という現場もグローバルの水準に付いて行っていませんが、経営の現場はさらに酷い状態であることが改めて露呈しました。上場廃止になるほどまでの深刻なトラブルで抜本的に刷新した東芝ですが、基本は何も変わっていなかったことが、今回露呈しました。
今までおとなしかった株主が積極的に経営に関与する傾向は、近年盛んになっています。これまでの資本主義を変えないといけないという大きな認識からきていると思います。これまでは株主という立場にあるありながら、経営陣のやりたい放題を許してしてきました。特にアメリカでは経営者と一般社員の格差が何百倍というお手盛りの報酬がまかり通って来ました。日本では、形の上ではガバナンスと言いながら、身内の中で都合の良いような意思決定を行い、その現状維持するために、企業の変革と成長を顧みずに、結果として失われた20年さらに30年になるかもしれませんが、という経済の停滞を作りました。日本が全く成長出来なかった20年間で、なんとあの一時は英国病と揶揄されたイギリス経済は2倍に成長しています。この停滞を導いた一端は、経済産業省の訳が分からない指導にあります。戦後単純な経済モデルの中で成功した政策はずっと前に時代遅れになっていましたが、それから先の政策が全くわからないまま指導を続けてきました。結果として、日本経済・産業は凋衰してきました。最悪はディジタル産業です。
中国海警船、尖閣接続水域で111日連続航行 過去最長に並ぶ
https://mainichi.jp/articles/20210603/k00/00m/010/218000c
中国、外国船「領海侵入」に罰金 尖閣で緊張高まる懸念
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM291F20Z20C21A4000000/
台湾を包囲した空軍機 「二正面」訓練で圧力高める中国
https://www.asahi.com/articles/ASP624TZDP50ULZU00D.html?ref=mor_mail_topix1
ドイツにEV時代は到来するか?
http://www.newsdigest.de/newsde/column/dokudan/11751-1140/
電気自動車への移行を加速させるドイツ──EV革命のリーダーは、ドイツと中国に絞られてきた
https://www.newsweekjapan.jp/takemura/2021/04/post-15.php
ドイツが突然「自動運転で世界のパイオニアになる」と宣言した理由
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83566?page=4
中国が「EV」生産で世界の覇権を握る日が来る! 破竹の勢いに米紙も瞠目
https://courrier.jp/amp/247763/?utm_source=yahoonews&utm_medium=related&utm_campaign=247763
中国の47万円EV車、米テスラを猛追
https://www.bbc.com/japanese/56192099
「このままでは日本車は本当にヤバい」自動車評論家が決死の覚悟でそう訴えるワケ
https://president.jp/articles/-/46586
日立製英高速列車の亀裂は800車両 応力腐食割れが原因か 日本の製造業に打撃
https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2021/06/800.php
神戸製鋼所(神鋼)のデータ改ざん問題 相次ぐ企業不祥事、際立つ組織の甘さと人間の弱さ
https://webronza.asahi.com/business/articles/2017101800003.html
不正検査を行った曙ブレーキの調査結果 複数工場で20年にわたった不正検査
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2102/17/news048.html
横領起訴の郵便局長39人が無実を証明。冤罪の原因は富士通の会計システムのバグ
https://finders.me/articles.php?id=2765
経産省とのやりとり「法令順守が欠如」 東芝が陳謝
https://www.asahi.com/articles/ASP6G51YYP6GULFA00M.html
東芝報告書が広げる波紋、対日投資に響く恐れ
https://jp.reuters.com/article/toshiba-impact-idJPKCN2DQ0L8
東芝で高まる「上場廃止」リスク、“赤裸々”報告書でアクティビスト猛攻!
https://diamond.jp/articles/-/274201
東芝不公正運営、暴いた外部弁護士 AI使いメール復元
https://www.asahi.com/articles/ASP6G560DP6GULFA00J.html
パワハラ自殺、トヨタと遺族が和解 豊田章男社長が直接謝罪
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60bd8c47e4b0134269b03d68
◆俯瞰サロン◆
<第85回俯瞰サロン>
次世代マーケティングを探求する、タイガー魔法瓶株式会社取締役 浅見彰子さんに聞く
「老舗刷新請負人のお仕事~家庭から宇宙まで~」
浅見彰子さんは、米国企業からソニーに転職し、VAIOの立ち上げ、ソニー本社研究開発本部事業戦略部統括課長として活躍後、OKWaveなどのスタートアップを上場・イグジットさせたという経歴をお持ちです。そして今、炊飯器などの家庭用品の老舗で知られるタイガー魔法瓶の取締役として、家庭はもちろん宇宙開発に係る製品開発に携われ、業界内外から注目を集めていらっしゃいます。俯瞰サロンのご参加者には、ソニー時代に浅見さんと共にされた方も多いと思います。斯くいう私もその一人。斬新なアイディアと行動力は卓越したものでした。変革を余儀なくされているこの時に、皆様と一緒にお話を伺いたいと思います。ご参加お待ちしています(俯瞰サロン担当:石川公子)。
■講師プロフィール
浅見 彰子(あさみあきこ)
上智大学工学部電気電子工学科卒。
米国企業でキャリアをスタート、デジタルイメージングを研究開発する中で共同開発先のアップルにてジョブスと仕事をした事で戦略マーケティングに目覚める。ソニー?へヘッドハントで入社、VAIO立ち上げやデジタル化ネット化を手掛け、ソニー本社研究開発本部事業戦略部統括課長等を歴任し独立、口コミ系ITベンチャー(OKWave・OKLife・OKMusic)のコアメンバー(取締役・代表取締役)として立上&EXIT後、競合禁止条項に基づきITから再び民生向け家電界隈に出戻り、お料理好きが高じて2019年より某調理家電メーカーの取締役CPO兼CMOとして、事業戦略・ブランディング・要素技術研究・商品企画・戦略マーケティングを担当。
<記>
■日時:2021年6月22日(火) 18:30~20:30 (開場:18:20)
■参加費用:500円(税込)
■主催:(社)俯瞰工学研究所 https://www.fukan.jp/
■お申込サイト:https://fukansalon85.peatix.com/view
■ご参考:
・日経クロストレンド(2021.0114) タイガー魔法瓶 ECサイトでボトルの売れ行き急増のワケ
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/00512/
・ビジネス+IT(2021.01.14) タイガー魔法瓶「復活劇」立役者が明かす、100年企業のDXとD2Cの取り組み
https://www.sbbit.jp/article/cont1/50140
・タイガー魔法瓶の技術が再び宇宙へ 当社が開発に携わった「真空二重構造断熱・保温輸送容器」が搭載されたSpaceXの宇宙船「ドラゴン22号機」が6月4日に打ち上げられました
https://www.tiger.jp/news/information/news_210607.html
・次世代マーケティングを探求する女性マーケッターのブログ
https://ameblo.jp/asami-akiko/
<今後の俯瞰サロン>
ご予定いただければ幸いです。
・第86回俯瞰サロン
日程:2021年7月20日(火)18時30分~ オンライン
講師:前田恵理子さん 東京大学 放射線科医
テーマ/キーワード:放射線医学、画像診断、がん治療
ご参考:
・前田恵理子、 第一線の放射線科医で患者である私の当事者研究
https://erikospassion.hatenablog.com/?fbclid=IwAR3kaDSsbDztABB5_prv_sq44vnByGHSjgyu6im-1wkqt7oDZBVAalHZNl8
・日経新聞 2020年1月
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO54224230Z00C20A1TCC000/
・第87回俯瞰サロン
2021年8月(日程調整中)
講師:石川裕さん
前フラッグシップ2020プロジェクト(スーパーコンピュータ「富岳」 プロジェクトリーダー/現 国立情報学研究所 教授
テーマ/キーワード:スーパーコンピュータ、富岳
ご参考:
・理化学研究所「プロジェクトリーダーからのメッセージ」
https://www.r-ccs.riken.jp/fugaku/history/message/
・HPCwireジャパン「理化学研究所 石川裕氏、富岳開発について語る」
https://www.hpcwire.jp/archives/36861
◆6.コロナ後の製造業、というパネルディスカッション◆
表記のパネルディスカッションを有志の方々と企画・開催したいと思います。パネラーとしての参加者を募集です。「円卓の騎士」の集結です。開催はzoomです。ぜひご参加ください。開催の都合上パネラーは数名になると思いますが、詳細は参加希望の方が集まってからと思います。企画だけの参加も問題ありません。
ご興味ある方、まずは、webmaster@fukan.jpまで、ご連絡ください。
とりあえず、企画のウォームアップとして、異論が続出しそうな「日本製造業が犯した誤謬の仮設」始めましょうか。
・国内は高付加価値を残す→誰が価値を認める
・高機能で高付加価値を→高機能を誰が求める
・顧客の意見に耳を傾けよ→顧客の知識の限界
・ブランド力はある→競争力の空洞化
・技術を磨き上げてきた→技能を磨いてきた
・良いものを安く→だから利益が出ない
・日本のマザー工場→人材の空洞化
・モノ作り→まだハードの売り切り?サービスプラットフォームは
・電力供給が不足だからとりあえずハイブリッドで、ミライに未来がある?
・構想大きく、着手小さく→構想が小さすぎる!ユニコーンなし。
・選択と集中?→何が残ったの?足し忘れ?
・歴史的な国難にワクチンも治療薬も作れない!
・・・
まえの記事で書いた、日立の英国国鉄車両の品質トラブル、東芝のコンプライアンス、トヨタパワハラ・・・と日本製造業の酷さが噴出しています。この企画では、“これが、ここがダメで。。”というような議論では終わらせません。ふるってご参加いただきたい。
◆7.再掲載:noteにマガジンをアップしました◆
これまで俯瞰メールその他に書いた記事・原稿をネット上の一か所に整理する作業をしました。継続中ですが。そしてメディアプラットフォームのnoteに記事をテーマに分けてマガジンとしてアップしました。ご覧ください。
https://note.com/
→右上の検索で 俯瞰人またはProfFukan を入力
→マガジン を選択
でお願いします。
現在のマガジンは。
俯瞰学のすすめ 俯瞰とは何か、なぜか
俯瞰の一汁三菜 毎日何を食べているかの日記
俯瞰サロン 俯瞰工学研究所の公開セミナーの案内
頭がよくなるクッキング 我流のお医食同源
俯瞰の随想 風のように流れてきた想い
俯瞰人の書棚 読書感想文
ディジタル書斎の知的生産技術 知的腕力をつける技法
俯瞰メール 今、そしてこれから
日本の今、そして未来を考える
です。気に入ったものがあればフォローしてください。書斎のパソコンのアーカイブですが。
◆8.俯瞰の妄想◆
<ヘテロトピアという認識の構造>
以前「コロナ後の世界」の記事で「ディストピア」という言葉を唐突に使いましたが、ウィキペディアには下記のような解説があります。
“平等で秩序正しく、貧困や紛争もない理想的な社会に見えるが、実態は徹底的な管理・統制が敷かれ、自由も、外見のみであったり、人としての尊厳や人間性がどこかで否定されている。その描写は作品毎に異なるが、典型的なパターンとして以下のような問題点がやがて描き出されていく。
・粛清がある。体制(指導者)が自らの政治体制をプロパガンダで「理想社会」に見せかけ国民を洗脳し、体制に反抗する者には治安組織(準軍事組織)が制裁を加え社会から排除する。
表現の自由が損なわれており、社会に有害と見なされた出版物は発禁・焚書・没収されることがある。
・格差社会が存在する。社会の担い手と認められた市民階級の下に、人間扱いされない貧困階級・賤民が存在し、事実上は貧富の差が激しい社会となっている。
・市民社会では貧困の根絶が達成されたことになっているが、実際には社会の統制の枠から爪弾きにされた者たちが極貧層となる。それらの者たちによりスラムが形成されるも、中央政府によって市民の目の届かぬ地域に隔離されている。
・社会の枠の中で暮らす市民階級について、体制が市民階級を血統やDNAのレベルで把握・管理している。
・産児制限が行なわれる。強制的に人口を調整ないし維持する必要があり、市民の家族計画、さらには恋愛・性行為や妊娠・出産など人類の繁殖にまつわる部分さえ社会によって管理されている。“
これはかつてのナチスや、ロシア革命の共産主義、そして現代の共産党中国を改めて意識させます。とりわけ最近BBCが伝えるウイグル自治区の人権問題です。ユートピアの反意語とされる「ディストピア」そのものではないかと混乱します。これを見れば、アメリカとイギリスが「ジェノサイド」という言葉で非難するのが理解できます。片目つぶって中国との通商をという経済を取るか、ドイツやフランスが揺れているよう見えます。
最近、私が気になっている言葉が「ヘテロトピア」です。たまたま「異他なる空間(ヘテロトピア)」というネットのページに行き当たり、なぜか「ヘテロトピア」という言葉に引き付けられました。
そこでは 「・・・ヘテロトピアとは、“社会の制度そのものの中で構成された反=場所”ということができる。みずからが属する文化の内側に見いだしうる現実の場所を、同時に表象し=異議を申し立て=反転する、そのような空間である。それは社会制度や文化の内部にありながら外部性を包含し、他のあらゆる場所から絶対的に異他なる空間として生成されるのだ」と定義されていました。
いくつかの「ヘテロトピア」すなわち「社会の制度そのものの中で構成された反=場所」として、刑務所や売春宿、精神病院、墓と並んで、東京大学駒場寮も挙げられていました。駒場寮は、私の最初の東京の拠点でした。そうだったのか、と思うと合点がいくところがありました。むろん当時は誰もそんなことは言っていませんでしたし、そういう感覚や認識もありませんでした。「インポ合戦」、「ストーム」など、今では説明できない奇習もありました。ヘテロトピアという世界だったと思えば、合点がいきます。
この妄想もここで一息つきました。この先の世界へどうぞ。
公開シンポジウム「〈異他なる空間(ヘテロトピア)〉へ ─映像・景観・詩─」
https://beyondboundaries.jp/news/20141107/
ディストピア ウィキペディア(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%94%E3%82%A2
他者の場所--ヘテロトピアとしての博物館
https://core.ac.uk/download/pdf/145719459.pdf
実存主義の巨人 ジャン・ポール・サルトルの思想をわかりやすく解説
https://kusanomido.com/study/philosophy/52957/
ウイグル族のモデル、中国の収容施設から動画 BBCが入手
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-53659893
ウイグル女性、収容所での組織的レイプをBBCに証言 米英は中国を非難
https://www.bbc.com/japanese/55945241
中国、ウイグル族を遠方で働かせ「同化」進める 大がかりな施策が判明
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-56369796
ジェノサイドとは
https://encyclopedia.ushmm.org/content/ja/article/what-is-genocide
◆9.シンプルで美味しい料理◆
感激の「ラタトゥイユ」
大好物でよく作りますし、これから夏野菜のトマト、ナス、ピーマン、ズキーニがおいしくなるので出番は多いです。料理もレシピを見ず長年作っていると、いろいろ試しているうちに原点を失います。ネットで下記の記事を読み、改めてこのレシピで作ってみました。感動の美味しさでした。これが原点だなと実感しました。
「野菜を炒めるときは、思いきってたっぷりのオリーブ油を使うのがポイント。ふたをして弱火でじっくり煮込みます。そうすると夏野菜のうまみ成分がオリーブ油に移って、オリーブ油と野菜のマリアージュが楽しめますよ。作り立てがおいしいですが、私は一晩経ったほうが好み。作って3~4日間はもちます。たっぷり作っておくと、つけ合わせなどにも重宝します。私はパンにのせ、チーズをふって焼くオープンサンドにするのも好きです」と元ホテルオークラ総料理長・根岸規雄さん。
【材料】(作りやすい分量)
なす…4個(360g)、玉ねぎ…1個(200g)、パプリカ(黄)…1/2個(100g)、パプリカ(赤)…1/2個(100g)、ズッキーニ…1本(150g)、トマト…3個(450g)、にんにく…小1片、塩…小さじ1と1/3、こしょう…少々、オリーブ油…大さじ2
この分量の割合がポイントなのでしょう。どうしてもこれが適当になってしまします。この夏はこのレシピでラタトゥイユを楽しみます。以前このメールで紹介しましたが、残ったラタトゥイユを生クリームとチーズでグラタンにします。「外道」でしょうが美味しいです。
https://www.lettuceclub.net/news/article/151401/
◆10.私感・雑感◆
それにしても受け皿がない総選挙
国会も閉会し、オリンピック・パラリンピック、そして総選挙という流れになりますが、不祥事が続き緩み切った自民党、コロナ対策で「コロナ戦争敗者」と揶揄される菅政権という中の総選挙ですが、国民から見ると受け皿が全くありません。枝野代表の話を聞けば聞くほど、あの民主党政権の悪夢が蘇るでしょう。消費税5%、こんなポピュリストの公約で国民が動くわけないでしょう。コロナ対策で巨額の赤字国債を発行しています。その前の国家債務と合わせて中期のプライマリーバランスをどうするかの議論をすべきです。ほんの少し共産党の支援が必要ということでこれを受け入れたようですが、いずれにせよあまりにも無責任です。長い間の自粛で、コロナが収束すれば一時的に消費は爆増するでしょう。消費税で経済活性化する必要はないでしょう。先行するアメリカでは景気過熱、インフレ不安の議論で金融緩和も終わりという流れになっています。腰軽がるの株式市場はそれで大幅下落の局面も出てきています。今の金融市場は異常です。
総選挙の受け皿がない、選挙に行かない、政治無関心、そしてどうしようもない二世議員の自民党政権の延伸でやりきれないですね。公約としてコロナで学んだパンデミック対策の恒久化など、まともな提案が野党はできないのか、科学もテクノロジーも経済もわからない立憲民主党です。そこに集う政治家は?
胸に突き刺さったニュース
6月19日の報道特集というテレビ番組で、沖縄の名護市辺野古沖の基地建設の埋め立てに、遺骨が埋まっていて今日まで放置されてきた山裾の土砂を使うというニュースに慟哭しました。その山は最後に住民が逃げ込んだ山です。そして子供を含めてほぼ全員死んだ場所です。遺骨は回収されずにそのままです。その土を! 沖縄の開発工事では、これまでも遺骨が散乱した土を土木工事で使ってきたとのことです。知らなったとはいえ、受けた衝撃はこれまでにないほど胸に突き刺さりました。
さらに、この土で埋め立ては許されないと、これまでコツコツと個人で遺骨収集をしてきた方が政府に掛け合い、ハンガーストライキで抗議しているとのことですが、何と政府の答えは「最終的な決定はされていない、工事を請け負った業者が適切に処理するはずだ」とのことです。
ずっと以前に沖縄に行ったとき、日本軍最後の塹壕が観光用に公開されていて、そこで司令官の太田中将が「沖縄県民が払った犠牲はあまりにも大きい、日本はこれに必ず十分に報いてほしい」と、玉砕前に本土の司令部に打電した電文「沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後生特別ノゴ高配ヲ賜ランコトヲ」を知り慟哭しましたが、今回はそれ以上です。基地反対を声高にアッピールする現知事の、このような人間の尊厳について特に発言を聞いたことがありません。わかったうえでしょうが。
オリンピックの開催、感染者、・・・・国民の命、人権軽視、すべては人間として命に対する軽さが基底にあるのでしょうか。自戒!
JOG(643) 「沖縄県民斯ク戦へり」(上) ~ 仁愛の将・大田實
https://www.google.com/search?q=%E6%B2%96%E7%B8%84+%E5%A4%AA%E7%94%B0%E4%B8%AD%E5%B0%86&rlz=1C1PWSB_jaJP957JP958&oq=%E6%B2%96%E7%B8%84%E3%80%80%E5%A4%AA%E7%94%B0&aqs=chrome.2.69i57j0l4.9338j0j15&sourceid=chrome&ie=UTF-8
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◆俯瞰MAIL第2世代009号(2021年6月20日)◆
編集:俯瞰人(松島克守)
配信:石川公子
URL:https:/www.fukan.jp
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