俯瞰メールⅡ 12号
俯瞰メールⅡ12号をお届けします。
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収束するどころか世界中で感染が急増しています。それでもワクチン接種が進み治療薬も視野に入ってきましたが、元の世界に戻ることはなくコロナと共存する社会と経済再生を模索し追及しなければなりません。この状況に米国のアフガニスタン撤退の混乱と中国とロシアを核とする専制主義国家が増加しています。専制国家に住む人間はこの10年で48%から68%に増加し、民主主義の国の人口は世界のわずか14%という最近のV-Demレポートは衝撃的です。 9月19日 俯瞰人
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◆時候のご挨拶◆
雨に翻弄された今年の夏です。夏だと感じたのは7月の下旬くらいです。そして金木犀が香る秋です。コロナと天候不順でさぞや農業関係者の方々はご苦労があったと思います。春夏秋冬という季節感は過去のものなりつつあるように思います。
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◆コロナ禍の世界では◆
ワクチン接種が進んで規制緩和の結果は
前報で“徹底的にワクチン接種を進める、そして集団免疫を獲得して一定程度の感染者とごく少数の死亡者を許容して日常を取り戻す、という対応です。大胆にこれに取り組んだのはイギリスとイスラエルです。ですから、この2カ国の状態はワクチン接種によって集団免疫を獲得するという、日本を含めた国々にとっては重要な先行モデルです。”と書きました。
そのイギリスとイスラエルの現在ですが、イギリスの2回接種率は約65%(9月1日)で、新規感染者が1日約3万人、死者数は約150人です。イスラエルは2回接種率が約60%(9月10日BBC)で1日の新規感染者数は約1万人、死者数は約30人です。意外と2回接種率は両国とも低いという感じです。これで集団免疫といえるかと思います。日本は既に53.1%(9月17日)ですからあまり遜色はありません。菅首相の執念の結果でしょうか。2回接種で世界一になるかもしれません。打ちたくない人をどうするかの欧米に対して、打ちたくても打てない、の日本ですから。
この両国の「実験結果」からの学びはワクチン接種ではコロナ感染は完全には防げないということです。理由の一つは接種後予防効果が落ちること、新しい新型コロナウイルスが次々と出てくることです。したがって基本的なソーシャルディスタンス、手洗い、マスクはワクチン接種後も必須です。ワクチン接種で集団免疫獲得は虚構でした。ただこれも上記の2回接種率では結論にはなりなりません。
ただ医療体制が対応できる重症患者数、社会が許容できる死亡者数を受け入れるという判断で規制緩和が行われています。日本でもこの議論が既に始まっています。経済活動の復活も重要な観点ですからこれから世界中でこの判断が受け入れられていくのでしょう。
経済活動の下部構造は人間や組織の濃密なネットワーク構造にあります。したがって本質的に密を避けることができません。濃密なネットワークにおける雑談や立ち話が重要なきっかけになります。各国から大勢の人が集まる会議やコンベンションは新しい研究を、新しいビジネスを始動する場所です。しかしコロナ後の世界はコロナとの共存の世界になりますから、社会、ビジネス、働き方はこれを前提にした新しい形になることは確実です。日本の接種率は既にアメリカに追いつき先頭集団にすぐに追いつくでしょう。コロナ後の新しい社会、組織、働き方の新しい形をどう前向きに賢く作り出すか、今私たちが考えるべきで事です。
世界の感染状況
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/
世界における新型コロナウイルスの感染状況・グラフ・地図
https://graphics.reuters.com/world-coronavirus-tracker-and-maps/ja/
「コロナ規制を全面解除する」…コロナ先進国・イギリスの“賭け”から1ヵ月後
https://news.yahoo.co.jp/articles/18dc7be4273582f5e613c818571e0363ef3b2fa8
3回接種が進んだイスラエルで感染爆発、4回目を準備
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/09/34-16.php
パンデミックから抜け出す方法 追加接種のイスラエルから分かること
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-58510853
東南アジアで新型コロナ感染がピークアウトの兆し
https://gentosha-go.com/articles/-/37113
◆アメリカのアフガン敗退で世界は◆
同盟国の失望と怒り
バイデン大統領によるアフガニスタンからの逃亡にも似た撤退作戦は同盟国に強い衝撃、失望と怒りを与えました。 NATO諸国はアフガニスタンからの米軍の撤退には慎重な意見を表明していました。そういうこともあってかほとんどNATO諸国と情報共有することなく突然に無様な撤兵を行いました。イギリスとオランダではこの撤兵に対する対応が悪かったとして外務大臣が更迭されました。アメリカとの同盟を信じて頼りにしていた台湾でも衝撃は走ったようです。下記、
“欧州の指導者らが激怒するのも無理はない。ベン・ウォレス英国防相はタリバンがアフガン各地を掌握し始めていた今月のインタビューで、トランプ、バイデン両氏とタリバンとの合意が「腐った取引」だと述べていた。英国軍の一員としてアフガン戦争に従軍した英下院外交委員会のトム・トゥゲンハート委員長は18日の議会で、アフガン軍を臆病だとして撤退の理由にしたとして、バイデン氏を「恥ずべき人物」と指摘。テリーザ・メイ前首相は、タリバンと「一方的な」交渉をしたトランプ氏のリードに従ったとして、バイデン氏を批判した。
報道によると、アンゲラ・メルケル独首相は自らが所属する保守政党に対し、バイデン氏が「国内の政治的な理由で」撤退したとみていると述べた。
台湾の蔡英文総統は今週、米国のアフガン撤退を受け「台湾の唯一の選択肢は、より強くなって団結し、自主防衛の意識を高めることだ」と述べた。“(WSJ)
バイデン大統領は20年にわたるアフガニスタン戦争終結させたと自らの決断を正当化していますが、国務長官、軍部その他の反対を押しきって、独断した結果のようです。この20年の戦争はブッシュ大統領が9.11の後始め、その後オバマ大統領、トランプ大統領、そしてバイデン大統領と4代にわたって引き継がれた戦争ですからこの20年戦争の評価はバイデン大統領が責められるものではありませんが、トランプ大統領の無責任なタリバンとの交渉は強く非難されています。
ともかくトランプ大統領の時代から欧州各国はアメリカのコミットメントに対して不信感がありましたが今回で決定的になったでしょう。ただちにアメリカに頼らない安全保障として欧州軍創設の議論が始まりましたがこれもまた簡単にはまとまる話ではありません。ともかくイギリスを除く欧州諸国はアメリカから心が離れました。これは第二次世界大戦の冷戦を経て初めてのことです。歴史的な大変化ではないでしょうか。
さらにバイデン大統領は中国対抗の安全保障として新たなAUKUSという安全保障の新しい枠組みを立ち上げました。この中でオーストラリアの軍備増強のためアメリカとイギリスが原子力潜水艦の技術を供与することを決定しました。結果として日本との競争に勝ってオーストラリアの潜水艦建造プロジェクト推進することになっていたフランスは、一方的に契約が破棄されました。これに対してフランスは怒り心頭です。フランスのルドリアン外相は「背中から刺された。裏切られた」と怒りをあらわにした。バイデン政権に対しても「一方的で乱暴な決断。まるでトランプ前大統領のようだ」と非難した」(産経9月17日)。そして外交手段として最も強硬な、米豪大使を召還に踏み切りました。欧州とアメリカの半目はプーチン大統領にとって予想外のプレゼントになりました。これでさらに世界情勢は混沌さを増します。
今回を含め就任後のバイデン大統領の独断的な意思決定を見ていると大統領としての資質を疑わざるをえません。形を変えたトランプ大統領です。アメリカという国もリーダーの人材が枯渇したのでしょう。
AUKUSという枢軸
AUKUSという新たな枢軸同盟はまさにファイブアイズと呼ばれたアメリカイとイギリスを核にしたアングロサクソンの同盟だと思っていましたが、今回のアメリカ、イギリス、オーストラリアの三か国こそがファイブアイズの本質だと認識しました。イギリスからの移民で始まったアメリカとオーストラリアではその後多数の移民で多様化、混血の社会ですがその支配階級の中枢はアングロサクソンという排他的な価値観を共有する人たちであると感じます。まさに見えない「マフィア」の存在を認識せざるを得ません。
アメリカとソ連の冷戦時代はドイツが冷戦の最前線でした。私がベルリンに滞在した時代には、東ドイツに駐留するソ連軍がラインの左岸まで侵攻する時間という議論もありました。冷戦終結によってソ連が崩壊しドイツとロシアの間には大きな緩衝帯が実現しました。それでもドイツは冷戦の最前線であり、アメリカもこれに重きを置いてきたと思います。
ところが新しい冷戦即ちアメリカと中国が直接対峙する構造では、オーストラリアはいきなり冷戦の最前線に立たされました。ですからオーストラリアはそれを意識すると同時にアメリカもドイツではなくオーストラリアに軍事的な資源を投入することになった結果が今回のAUKUSの立ち上げと強力な軍備増強だと思います。
日本は冷戦の最前線に立たされてきましたが、中国に対する安全保障という面ではこのAUKUSとの連携をどうするのか厳しい立場になりました。なにしろ日中両国とりわけ日本は経済的にも中国に大きく依存しています。そして尖閣という直接的かつ具体的な脅威に直面しています。次の日本のリーダーはかつて経験したことがない厳しい地政学的な状況で果たして適切な意思決定を進めることができるか不安に感じます。靖国参拝などとナイーブな私見を言っている状況ではありません。
アフガニスタン、タリバン新政権でどうなる 「包括性」や女性の権利保護は
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-58485046
WSJ【社説】米軍のアフガン撤退で同盟国に衝撃と怒り
https://jp.wsj.com/articles/how-biden-broke-nato-11629433746
アフガン混乱に失望「欧州の米国離れ」が始まった
https://toyokeizai.net/articles/-/453689
米英豪、インド太平洋安保で「AUKUS」創設…中国包囲網を強化
https://www.yomiuri.co.jp/world/20210916-OYT1T50062/
米、豪に軍用機配備拡大
https://nowtice.net/news/1836296/
AUKUS原潜協力 怒り心頭の仏、バイデン政権は「まるでトランプ」
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210917/mcb2109170602002-n1.htm
フランス、米豪大使を召還 潜水艦開発破棄で
https://www.sankei.com/article/20210918-TLL54TWXINIEHB6W4EUKTK2NFA/
◆中国を注視する◆
習近平は文化大革命を目指すのか
最近の習近平政権が矢継ぎ早に出している政策は異常な感じです。巨大テック企業に対する規制強化と罰金の徴収、寄付の強制から始まって、国民生活の様々な部分まで規制をかけています。このような政策は習近平が提唱した「共同富裕」の社会主義の本質的な要求と理念によるもので、具体的には「高過ぎる所得の調整」に加え、「高所得層や企業に対して社会への還元を促す」という主張の実装ですが、だんだん過激になっていく感じがします。1985年頃鄧小平が唱えた改革開放の基本原則を示す、先富論、「我々の政策は、先に豊かになれる者たちを富ませ、落伍した者たちを助けること、富裕層が貧困層を援助することを一つの義務にすることである」の次のステージかもしれませんが、いささか原理主義的です。習政権は社会主義への回帰を強めており、今後はこうした傾向がさらに加速する可能性があります。
個人生活の中まで立ち入った規制が次々と出されています。学習塾の経営をたちゆかせない規制に続き、ゲームする時間を週3時間までとは驚きました。オンラインゲームそのものを悪としてその開発を規制する段階です。中国のゲームは今や日本を超え、世界中で、人気上昇中で市場が広がっています。まさにこれに水をぶっかける規制ですから、ゲーム業界も困惑しているようです。
加えて学校教育では習近平の思想を学ぶことが必須になりました。これはかつての文化大革命と同じです。思い出すとあの頃は赤い小さな「毛沢東語録」の本を手に持って毛沢東主席の教えを唱和する時代でした。この文化大革命の反省に基づいて鄧小平は個人崇拝をなくすために国家主席は任期を10年に決め、個人崇拝を禁止しましたが、習金平主席はすでに任期10年制限を外し、今度は習近平への個人崇拝という思想教育を徹底する動きです。まさに彼は毛沢東になるために文化大革命を始めようとしているではないか、という観測が強まっています。彼と家族はこの文化大革命の悲惨な犠牲者でしたが。
確か毛沢東が文化大革命を始めたのは、自分の共産党内の権力基盤が弱まり、その巻き返しに、大衆蜂起によって失われた権力を取り戻すために始めたと認識しています。しかしその結果は悲劇的でした。それでも習近平主席が強行しようとしているのは、もしかして自分自身のよって立つ権力基盤に不安を感じているのでしょうか。足元の共産党は汚職一掃ということで、大胆な粛正をしてきました。しかし毛沢東の時代と違って、今の中国は、民間企業の力が巨大です。加えてSNSによって、共産党の意向とは違うムーブメントを社会が起こします。ある程度豊かになって、音楽も文化も映画も中国人が本来持っている創造性が発揮されつつあります。この時代に毛沢東の文化大革命が成功するとは思えませんが、ともかく一時的には経済界は事態を静観しますから経済の成長が抑えられるでしょう。ただ、足元の中国経済も不調を匂わせています。
ピークアウトした中国経済
中国の8月の経済指標が経済後退を示しています。8月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.2と、7月の50.3から低下し、景況改善と悪化の分岐点である50を2020年4月以来初めて割り込みました。理由はいろいろ言われています、コロナの感染拡大、半導体不足、などなど。一時的な国内と米国の需要回復が一段落して本来の水準に戻ったのではないでしょうか。すなわち安定成長の水準の7から8%に。
加えてとんでもない地雷として世界中の金融業界が注視しているのが不動産大手恒大の資金繰りの破綻です。3000億ドル(約33兆1200億円)余りの負債を抱える中国恒大が破綻すれば、貸し手である金融機関、サプライヤー、小規模企業、何百万もの住宅購入者の間で混乱が生じる恐れがあります。特に100万人余りの住宅購入者は途方に暮れています。恒大は2兆円を超える米ドル債権を発行していますから海外投資家も大きな影響を受けます。もう投げ売り状態です。まさに中国版サブプライムです。さすがに中国当局は日本のバブル崩壊とリーマンショックを見ていますからその再現はないと思いますが、世界経済の地雷ではあります。史上最高の株価に沸いている東証も冷や水をかけられる可能性もあるのではと思います。
科学技術でアメリカを超えるか
中国の科学技術の進歩が目覚ましいです。 宇宙開発では完全に最先端に追いつきました。これまでアメリカとロシアの独占していたこの分野で独自の世界を確立しました。中国の宇宙ステーションに、これまで宇宙空間に人を送ったことがない途上国を招待して外交カードとして使ってくるでしょう。
GPSについてもアメリカに匹敵する独自のシステム「北斗」を完成させサービスを提供しています。 「北斗」はiPhoneにも採用されています。ですから今や世界標準の1つです。
これだけのスピードで先進国をキャッチアップした過程では公式的な技術導入に加え、非合法な手段もあったと思います。先進国の人材も積極的に招聘してきました。しかし現在の中国はすでに独自に科学技術を開発する体制が出来上がっていると思います。なんといっても高度に教育された人材の層が圧倒的です。これは人口が利きますから日本の10倍以上の人口という事は日本の10倍の科学技術者がいるということです。加えて中国の指導者には理系の文化を理解した人が多いと思います。胡錦濤主席も習近平主席も精華大学の出身者です。
最近の報道によると、世界でトップレベルの学術論文の量も質も世界一で、アメリカを凌駕しています。これはすでに述べたように高度に教育された人材が出した結果です。驚いたことにノーベル賞候補にもなっている日本発の光触媒の研究チームをごっそりと引き抜いています。藤嶋教授は東京大学で光触媒の開発を行い、 その後理科大学の学長を務められました。大学を離れると研究室が持てません。私も大学を定年で離れた後研究室を失ったという喪失感を感じました。日本で藤嶋教授の研究室も用意できなかったのは残念でもあり、不思議です。すでに光触媒を事業にしている企業は数多くあります。この企業はお世話になった藤嶋教授を支援しキープするという意識はなかったのでしょうか。文部科学省も研究資金を交付していますし、巨額の研究ファンドが立ち上がっていますが、お金を用意することだけで研究の現場を理解しようとする事をしないのでしょう。
【米中ウオッチ】
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-09-17/QZKB7YT1UM1201
習主席「共同富裕」が波紋 大企業に警戒感―中国
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021082800388&g=int
中国で波紋呼ぶ「共同富裕」 富裕層叩きだけではない習近平の“狙い”
https://news.yahoo.co.jp/articles/e30442d0a9a7bed8c6c6b73e4c0d6ef53b2f0238
中国当局、18歳未満のゲーム時間を制限 休日などの1時間に
https://www.cnn.co.jp/tech/35176004.html
中国政府がゲーム会社を呼び出し、「女々しい作品」を禁止
https://news.yahoo.co.jp/articles/be3a0ef3eec30e8b90f711076187df29415fb567
小中高で「習近平思想」教育 長期政権へ統制強化
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021082200245&g=int
中国で次々と学習塾が閉鎖 政府の「塾禁止令」が狙うものは?
https://news.yahoo.co.jp/articles/a64c6612a070f1daf0c894dca8a6affabff360ff
中国経済、強まる減速懸念
https://www.jcer.or.jp/research-report/2021091-2.html
中国、「リーマン危機」再発防げるか-恒大巡る悪夢のシナリオ検証
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-09-17/QZJBEQDWRGG301
中国8月製造業PMIは49.2、昨年4月以来の50割れ
https://jp.reuters.com/article/china-pmi-august-idJPKBN2FX2EV
中国恒大、ドル建て債にまた売り浴びせ-銀行借入の利払い停止報道で
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-09-08/QZ3M1VT0AFB501
ドル円の「最弱相場」、じつは世界経済「ピークアウト」でもまだまだ終わらない!
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/87052
「中国の宇宙ステーションが完成へ」日米欧が後塵を拝するようになった根本原因
https://president.jp/articles/-/46655
中国版GPS「北斗」躍進の波紋
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/25070
中国、論文の数・質ともに世界一に 日本はインドにも抜かれ過去最下位に没落
https://news.livedoor.com/article/detail/20814755/
光触媒「発見者」藤嶋昭氏と研究チーム、中国・上海理工大に移籍
https://mainichi.jp/articles/20210902/k00/00m/040/261000c
◆日本の本質◆
日本のダメを世界に晒したカブール救出
今回の自衛隊によるカブール脱出作戦ほど世界中に日本の恥を晒した事件はないでしょう。 15日にカブールが陥落して自衛隊機がカブールに到着したのは25日です。そして26日脱出の際自爆にテロがあり、予定の脱出は挫折しました。結果は日本人1名、アメリカから頼まれたアフガン人14名です。韓国は前日に予定通り390人の救出作戦を完了しました。韓国は大使館員が最後まで残っていました。実戦経験の差でしょうか。
ここで問題は日本人の大使館員はさっさと全員にイギリスの輸送機で脱出してしまって、現地で救出作戦を指揮する人がいなかったこと、さらに15日から自衛隊機到着まで10日間もかかっていることです。出来ない理由を聞くと「安全が確保されないと自衛隊機は邦人救済に出動できない」という法律があったからだ、「現地政府の承認が取れなかった」とも言っていますが、政権が崩壊して存在しないのにこんな議論を霞ヶ関でしていたとは冗談にも程があるでしょう。かつてイラン革命でも親米政権が倒されたとき、日本人の救出はトルコが航空機を出して救出してくれました。ちなみに米国は「現地で31日に日付が変わると間もなく、大型輸送機C17がロス・ウイルソン駐アフガニスタン代理大使を乗せて、離陸した」(BBCnews8月31日)とのことです。最後に輸送機に乗ったのは陸軍第82空挺師団の司令官クリス・ドナヒュー少将とウィルソン駐アフガニスタン代理大使です。
日本国民の安全と財産を守るための自衛隊がなぜ邦人救助ができないのか、そんな法律作ったのか。推測するに、当時の法律制定で与野党の妥協によって、上記の言い訳の条文を入れたのではないでしょうか。ただ、国会で法律を通したい。それだけの霞ヶ関官僚と自民党の政治家です。妥協して良い事と、妥協してはいけない事が世の中にはあります。それをきちっと勇気を持って判断することがリーダーです。
今回のアフガンからのアメリカ撤退もトランプ大統領、そしてバイテン大統領が妥協してはいけないところ自分の政治家としてのアピールのために守らなかったことです。そのためにどれだけの人が苦しみ、あまつさえ死んだのでしょうか。
今回の自民党総裁選挙は次の総理大臣を決めることになりますが我々国民がこれに参加できないまでも、その後の総選挙できちっとした判断を迫られます。しかし、リーダーとして日本の政治を託す人がいるのでしょうか。
もし尖閣で何かあったらまず議論してから出動するのでしょうか。
◆俯瞰サロン◆
◆俯瞰の随想◆
コロナでクラッシックを聞く時間が増えた
コロナ自粛生活のため自宅で過ごす時間がとんでもなく長くなりました。時間を持て余しています。テレビもコロナ、コロナで見ても仕方ありません。私は映画好きだったのですが、なぜか最近は映画をみようという気になりません。ネットフリックスとAmazonプライムには見切れないほどの映画がありますが。結果として、クラシック音楽を聴く時間が多くなりました。むろん気にいったCDもかけますが、画面があった方がなぜか楽しいので、テレビのクラシック番組をよく見ます。ただ数は少ないのです。
その中で、 NHKの「クラシック倶楽部」は自動録画でほぼ毎回見ています。以前にもご紹介しましたが、我が家では10チャンネルを約1週間分自動的に録画していますから時間にあわせてテレビのチャンネルを合わせるなどという事は10数年したことありません。すべて自動録画で見ます。見落としはありません。なにしろ、ハードディスクの値段が下がったので、レコーダーに昔では考えられなかったように4テラバイトのハードディスクがあります。ただ、実際に見る番組、見ようとする番組はごくわずかですが、時間という制約から解放された世界を知ると元には戻れません。
この「クラシック倶楽部」はこれまで聞いたことも見たことも無い才能に溢れたアーティストの演奏を聴くことができます。コロナでコンサートがなくなり、新しい収録がないからか、過去の番組から色々と放映してくれます。何よりも若くて才能あふれる音楽家ばかりです。ここで気がついたのですが、かつてはコンサートも放送番組もいわゆる大家と言われる作曲家の作品を、これまた名人と言われる一部の演奏家で聞いていたことに気が付きました。今まで聞いたことがない楽曲、聞いたことも無いみたことがない才能と出会う番組になりました。改めて日本人音楽家の水準の高さと層の厚さを認識させられました。
NHKに「クラシックTV」という番組もあります。これは、クラシック音楽をエンターテイメントとして楽しむ番組だと思います。実に楽しい番組です。毎回色々な演出でゲストとし出演する人は実にユニークで才能に溢れた若い人です。本当は脂の乗り切ったアーティストですが、私から見るとすべて若い人に見えてしまいますので、ご容赦願います。
むろん番組はディレクターがいて企画していると思いますが、 MCのピアニスト、清塚信也さんが番組を素晴らしいものに仕上げていると思います。もちろんピアノはどの曲も弾けるのではないかと思うほど堪能ですが、語りの音楽の知識がタメになって、かつ面白いです。音楽の知識が増えました。ゲストとの掛け合いも凄いく水準が高くて感心するばかりです。ということは、精神がわくわくする時間です。アシスタントの鈴木愛理さんもこの番組に花を添えています。あどけない美人歌手です。
テレビ朝日の「題名のない音楽会」これは何十年も続いている番組ですが、最近よく見るようになりました。この番組もクラシックをエンターテイメントにした番組ですが、特徴はクラシックの枠を打ち破るような企画です。あり得ない組み合わせの楽器とアーティストが、見たことも聞いたことも無いパフォーマンスを楽しませてくれます。この番組のMCの石丸幹二さんも万能のミュージシャンで、そして語りが楽しくて魅力的です。さらに、この番組の画像というか画面作りが非常にイノベーティブです。ですから、すごく脳に刺激的です。
このように、クラシックを聴くようになって改めて気がついたことがありました。若い時からクラシック音楽を好きというより、聞いた方がいい、というような学校教育の延長線上に自分自身がいたことに改めて気がつきました。ですから、聴く音楽もバッハ、モーツアルト、ベートーベンが多く、ブラームスやショパンそしてチャイコフスキーといったお馴染みの曲が多かったと思います。コンサートやテレビ番組でもやはりこのような曲目が多かったと思います。「クラシック倶楽部」はこれと違う世界を私に押し込んできたと思います。いわゆるウィーンのドイツ系の音楽から少しずつ新しい音楽の世界に変わってきました。ウィーンからパリに移動したようです。どちらかといえば重厚で暗い感じのドイツ系の音楽からドビッシー、サティー、ラベルといった明るい春のような音楽をもっぱら聞くようになりました。CDも改めて何枚か買うことになりました。むろん、明るい曲ばかりではありません。それでも深刻ではなく、オシャレな感じに聞こえます。
恥ずかしい話ですが、クラシック音楽をある意味、本格的に聴くようになったのは、30代後半のベルリン在住の時代でした。なにしろベルリンフィルの本拠地ですし、ベルリン・ドイツ・オペラ、そして東ベルリンに行けばベルリン・コーミッシェ・オーパーがあり、世界中の超一流の音楽家が毎日のように演奏していました。しかも極めて安いチケットでした。
ベルリンフィルではむろんカラヤンの演奏も聞きました。印象に残っているのは小澤征爾がカラヤンの後継候補として、ベルリンフィルを指揮した時のことです。通常、数回で終わるカーテンコールが十数回も続いていつ終わるのか心配したことでした。もう一つは、これもカラヤン後継の候補としてバレンボエムが来た時のことです。確か曲目はベートーベンピアノソナタだったと。このチケットは真冬のベルリンの午前3時に並んで買いました。一緒に並んでいるのは音楽学校の生徒たちです。なにしろ5マルク約500円でした。そしてこの席は舞台裏のくぼみの席です。音楽学校の生徒はこの席からは鍵盤の上の指使いが見えるから、それを見るために並んでこの席の切符を買うわけです。私はその中に混じって聞いていました。
このベルリンフィルで本当に音楽を聴いたと実感したのはアルノルト・シェーンベルクの「浄められた夜」です。それまでに聞いたことのなかった音楽で、背筋に刺激が走る感じでした。これまでに経験がなかったことです。帰って調べると「世紀末の音楽」で20世紀の夜明けを告げる曲で全くあたらしいジャンルの音楽だったと知りました。イノベーションに触れたのでした。新しい化学工学、電気工学、機械工学の産業革命の始まった時代です。現在の大企業の多くが19世紀末から20世紀の初めにかけて創業しています。
ベルリン・ドイツ・オペラでは多分カール・ベームの最終公演を聞いたと思います。両腕を抱えられて登場しましたが、流石指揮台ではシャキッとしていました。 この劇場でワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」を初めて観劇しましたが、歌詞もわからずただ延々と続く歌声でいつしかくすぐっすり眠ってしまい、音楽が終わったとき目が覚め、ロビーでシャンパンを飲んでそのあとも、やっぱり寝込んでしまいました。当時のオペラ劇場のロビーは社交場の雰囲気が残っていて、ドイツ人の男性ははタキシードでご婦人はロングのドレスでした。これはこの劇場だけでしたが。旅行者と学生はひどい服装でした。会員制ですが、チケットはその日観劇の都合がつかない人が玄関先で安く売ってくれました。ダフ屋という人はいませんでした。で3,000円くらいでしたでしょうか。
当時の東ベルリンは西ベルリンと全く貨幣価値が違い、シュタットオペラで一番いい席が5マルク、約500円でした。世界的に有名だった、オットマール・スイトナーの指揮する演奏を最前列、そのスイトナーの真後ろの席で聞きました。その印象が強くて何を聞いたか記憶にありません。プログラムを取っておけばわかったかもしれませんが捨ててしまったと思います。
この後の人生は時間に余裕がない生活でコンサートやクラッシック番組から縁のない生活が何十年も続きましたが、コロナの自粛でクラシックを聴くという世界にまた迷い込んだわけです。
クラシック倶楽部
https://www.nhk.jp/p/c-club/ts/6N5K88R4Q5/
クラシックTV
https://www.nhk.jp/p/classictv/ts/14LJN694JR/
題名のない音楽会
https://www.tv-asahi.co.jp/daimei/
◆私感・雑感◆
あえて菅首相の業績を評価する
一年と短命でしたが菅政権は長期安倍政権よりも実績を残したのではないでしょうか。政権は長かったですが、私が認識している安倍政権の実績はアメリカが抜けた後、主体的にTTP11をまとめ上げたこと少子化対策を政策として確立した事だけです。華々しく外交をぶち上げましたが対米外交は「トランプのポチ」でむしろ米国追従の日本を世界に知らしめ、鳴り物入りの北方外交はポシャリ、拉致も進まず、中国関係も進展ない、日韓関係は相手が悪かったこともありますが悪化..。何しろ任期の大半が森友、加計の釈明で浪費しましたから。
菅首相は説明能力がない、棒読み、後手後手…と酷評されましたが官房長官時代に培った剛腕でほかの内閣なら議論を広げただけで継続案件になったに違いない懸案を決着させたと思います。
脱炭素宣言、デジタル庁、携帯料金引き下げ、ワクチン加速、不妊治療の保険適用、そして福島汚染水の海洋放出です。ワクチン予防接種は欧米が始めた昨年末に、逆走のコロナ対策、GOTOキャンぺーンで2か月遅れましたが愚図な河野担当大臣のしりをたたいて一日100万回のペースを言明して行わせ今では180万回程度の実績と伝えられています。ただこの2か月の遅れが菅内閣の命運を左右したかもしせん。2か月先行していれば希望する国民がすべてワクチン接種を受けられるといっている10月末の状態にこの9月が成っているでしょうから自民党内部も文句は言いえなかったでしょう。すでに1回接種でもたついている米国に追いつきましたが、すぐに2回接種では追い越すでしょう。
総裁選挙に外野で出馬の高市候補の発言「福島県だけでなく他の県にも輸入制限をかけている国があるという中で、さらに日本全体に風評被害を広げてしまう可能性がある。リスクがある限り、私であれば放出の決断はしません」(東京新聞9月8日)は、かつての鳩山由紀夫首相の普天間移転の“ちゃぶ台返し”と同じす。その後始末に10年かかってもトラブっています。この間普天間基地周辺の住民は危険にさらされたままです。高市候補の発言もあとを考えればあまりにも無責ですが今回は事後ですからよかったです。余談ですがこの人と小池百合子は絶対に首相になってほしくないです。本人たちは「鉄の女サッチャー」を口にしますが教養と資質で比較にもなりません。ただオンナのウリだけです。
オリンピック・パラリンピックが終わって
オリンピック・パラリンピックが終わって何故かほっとしました。無意識に「何事もなく無事に終了して欲しい」という思いがあったのでしょうか。同じ気持ちの方もいると思います。コロナ感染リスクで中止の議論もありましたが感染が選手村から広がるのでなく、外からの関係者持ち込みが多かったのは皮肉です。
あの「場」がなかったらあのアスリートたちの人生がどうなったかと考えると、やってよかったと素直に思いました。コロナ禍の中でのいろいろ不手際はありましがあの異常な環境で手が回らない、気が付かなかったことは許容範囲です。批判は簡単です。それにしてもメディア、コメンテーターのレベルの低さが気になりました。自身がよくわかっていないことを批判して言い立てるのが彼らのスキルだとわかりました。
残念ですがオリンピックは菅内閣の支持率とは全く無関係でした。支持率浮揚を追求して菅首相が開催に突き進んだとすれば彼にとっては失敗ですが。人類無経験のコロナ禍でのオリンピック開催は海外からは前向き評価こそあれ批判はありません。ただ事前に一部の米国メディアの記者が酷評していましたが、今は自己反省をしているのでは。
一番ホットしたのは中国とIOCでしょう。これで北京オリンピック開催が世界的に認知されましたから。ただ北京オリンピックは人権問題で外交的なボイコットという頭の痛い問題がありますが。人権問題ではアメリカは言える立場ではありません。9.11のあと容疑者をキューバのグアンタナモ収容所に超法規的に収監して拷問その他、国内外から批判を受けていますが現在も存続しているようです。
グアンタナモ収容所の容疑者を移送 米政府、閉鎖目指す
https://www.asahi.com/articles/ASP7N32B0P7NUHBI002.html
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◆俯瞰MAILⅡ12号(2021年9月19日)◆
編集:俯瞰人(松島克守)
配信:石川公子
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