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私がパイロットデンチャーシステムで義歯を作り続ける理由3)

私が大学院生のころは1970年代後半~80年代でした。世の中自体がダイナミックに変化し成長していたころで、学説も新薬も新素材も百花繚乱、実験的なテクニックも試すことができ、毎日忙しく楽しく懐かしい日々です。

当時、大学病院で一緒に頑張っていた仲間たちは、それぞれ開業しながらもしょっちゅう集まっては情報交換したものです。その延長で自主的に勉強会(スタディ・グループ)を作り、研修生を集めて講演したり学会発表したり、本を出版したりしました。片足は開業医ですが、もう片方は大学で教える仕事も続けたかったのです。残念ながら開業しながら教えると言うポジションは大学病院にはありません。それでも地道に同好の士を集めて勉強していると、有難いことにお手伝いしてくれるスタッフや陰で支えてくれる業者さんが集まってくるようになりました。パイロットデンチャーシステムもその延長線上にあります。

患者さんから教わることばかり

歯医者という職業は、おそらく嫌われている職業の3本の指に入るのではないかと思います。まず、余程のことがない限り、行きたくありません。私だって歯医者の注射なんて大キライです。患者さんが仰るには「受付けの女性に優しくされたり、衛生士さんに褒められたりすると頑張って治そうと意欲がわく」らしいのです。私には何も訴えない患者さんが、スタッフには正直な症状を語ってくれることも多かったのです。そのあたりの情報共有ができるかできないかは、私とスタッフの信頼関係がなければ成り立ちません。

申し訳ないことに、若いころは、医院のスタッフの存在が面倒くさかったり、ただのお手伝いさん的に考えていましたから、患者さんの言葉で初めてスタッフの大切さを認識できたのだと思います。

自分の技術を上げるだけでは自己満足なのです。

スタッフと共にチームで患者さんに接しなければ、ただ一方的に治療を押し付けるだけなのです。

今は❝チーム医療❞も❝インフォームドコンセント❞も❝セカンドオピニオン❞もあったりまえですが、40年前にはそんな言葉すら存在しませんでしたから一方通行に治療していたと反省します。

それでも、患者さん方がスタッフとコミュニケーションをとることで私に欠けているものを伝えて下さったことは、本当に有難いことです。患者さんの言葉でスタッフ教育にエネルギーを注ぐきっかけになりましたし、スタッフの成長が診療の質を上げるフィードバックにつながったからです。

歯科のスタッフには、大きく2種類があります。秘書的な受付とチェアサイドで患者さんに接する衛生士です。ほぼ100%女性の仕事です。私がいろいろなスタディ・グループで勉強することでスタッフも成長し、チームの一員として長く働いてくれることは患者さんに良いことのみならず、女性の自立にとても大事なことだと思います。

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