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パイロットデンチャーシステムと普通の義歯の差とは?3つの視点からの考察

その①患者さんからの視点

患者さんから見て、義歯(入れ歯)の違いって何でしょう.....?

咬めるか咬めないか、白いか黄色いか、金属があるかないか.....その程度でしょう。究極の成果主義、結果オーライの世界です。

患者さんは『早い』『安い』『上手い』を望んでいます。大きくも小さくもなく、高くも低くもない、それでいて噛んでもお財布にも痛くない、究極の入れ歯を望んでいます。

何だか分からないけど、患者が咬めると言うから良い義歯なんだろう、は、科学でも何でもありません。

なぜ噛めるのか噛めないのか、きちんとした理論で作り、どんな歯科医でも安定したエビデンスが得られる、そうでなければ医療とは言えません。

そんなことは分かってるんだよ、でも採算合わないんだよ......現場の声が聞こえます。何度も何度も義歯を削り、削っちゃレジンを足し、足しちゃまた削り....歯科医師ならだれもが通る道です。入れ歯の大家に弟子入りしたとて「背中を見て学べ」では何も伝わりません。10年選手の歯科医でも義歯は苦手な先生の多いこと!

その②ドクターからの視点

普通の義歯とは?

はい、保険の義歯のことです。義歯に体を合わせてほしいくらいです。

パイロットデンチャー義歯とは?

はい、自費治療義歯のひとつです。

その差は何かと、いつも問われますよね。

金属床をはめ込んだら❝自費❞ですか?個人トレーを作ったから、シリコン印象したから、❝自費❞ですか?

それは❝差額診療❞です。若い先生はご存じないかもしれませんが、昔は保険の局部義歯に1カ所だけ白金加金ワイヤーを使い、数万円チャージして小金を稼いだ時代がありました。患者さんも、基本は保険の義歯ですから気軽に課金してくれましたので歯科医院が潤っていたのです。今はもちろん禁止されています。

それはともかく、もうひとつの視点があるのを忘れてはいけません。


その③技工サイドからの視点

技工士から見た総義歯とは何でしょう?

正しい模型とバイトさえあれば、合う義歯を作るのは簡単ですか?

ラボサイドに届いた模型とバイトが正しいと仮定して、技工士さんはどこを見ていますか?

人工歯の選択、顎間対向関係 咬合平面......

技工士さんは、模型を見るだけでも目の前に患者さんが浮かび上がってくるような、そんな情報を求めています。

何もかも技工士さんに押し付けてはいませんか?中には印象すらスタッフ任せの先生もいたと聞きます。一概に悪いこととは申しません。少なくとも模型つくりや咬合採得はチェアサイドの話ですから先生の目が届きますが、ラボサイドは院内ラボでもない限り、目の届かない場での仕事です。


【どこから差がつくのか】

①印象採得時の差

クラウンブリッジでもデンチャーでも、印象を採る際におろそかにしてはいけないのがトレーの適合です。大きすぎてはいけません。特に総義歯に於いては小さめのトレーを使ってください。

金属床の総義歯を思い描いてください。メタルプレートの周りをピンクの床レジンが取り巻いていますよね。そのメタルプレートをトレーだとイメージしてみてください。そのトレーに固めのアルジネートを盛り、概形印象を採ります。辺縁が2~3mmアルジネートが剝き出しになります。その印象面にとろとろのアルジネートを載せてもう一度そーっと口腔内に入れます。辺縁のアルジネートが変形しないように力を入れずトレーを抑えて硬化を待ちます。これで無圧の印象が取れます。

ここまでは、やったことある先生も大勢いらっしゃることでしょう。

石膏は測っていますか?水は測っていますか?温度管理は?湿度管理は?

義歯の模型を作るときボクシングしよう

義歯が合わない原因の一つが模型の変形です。模型の変形の原因は印象の変形よりもボクシングをしないで模型を作ることです。

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総義歯で無圧印象を採った際の模型つくりにはボクシングは絶対欠かせません。

よく石膏を流して❝うつぶせ❞に放置する方がいますが、大学の実習時にそんな置き方をしようものなら教授にぶん殴られたものです。必ず、必ずボクシングをして模型を作成して下さい。

②咬合採得の差

歯科医師が咬合採得(バイト)を採る際の注意点とは何でしょう。総義歯の患者さんは何10年も歯医者を転々とし、担当医よりずっと歯医者歴が長いなんて言うこともザラです。

また、総義歯になるまでにはそれぞれの違う事情があり、いっぺんに総義歯になる方は少数です。❝歯科診療の成れの果て❞と表現する先生もいるほど患者さんひとりひとりの状態が違います。

何を以て『正しい咬合』と言えますか?

『正しい印象』には指標がありますので、まあまあ納得できる❝出来❞があります。『正しい咬合』の指標は....?

ゴールがはっきりしなければ着地できないのは当たり前です。教科書通りに咬合採得できていますか?

出来ていないとしたら、何が原因でしょうか?

ロウ堤にきちんとした基礎床を付けていますか?その概形は正しい概形ですか?『正しい指示』を出していますか?

印象も咬合も先生の腕ひとつ、ああ、また一子相伝やんか、とお感じですね。違います。

規格模型を作ろう

学生の時、カービングの実習がありました。何10本も宿題出されて、手がカサカサになりながら彫ったものです。右上1番にも左下5番にも『典型』像が目に焼き付いているからこそ出来ました。

無歯顎の状態にもそんな『典型』像があります。無歯顎のおよそ80%の患者さんが当てはまる平均、それが規格模型です。

unnamed (1)石膏模型

DSCF7047_convert_20100923115448規格模型

この規格に合わせて概形を制作すると、80%はほぼ合いますよ、と云う❝無歯顎の基準❞サイズなのです。なにごとも、基準点のあるなしではゴールへの道のりが大きく違います。

患者さんによってはもっと大きかったり激しい2級や3級もあることでしょう。 この基準を座標軸の原点とし、アレンジすることができるのです。

③重合の差

印象も自信ない、咬合も安定していない、仕方ないから完成後に調整しよう、そう思っている先生、いけません。最後に待ち構えているのが『重合収縮』による寸法変化です。作業模型は失われますから適合のチェックは、ほぼ難しいステップです。

補綴歯科学会に於いても、1980年代には床用レジンの重合収縮に関して、大勢の研究者がデータを発表していますから参考にしてください。

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