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それでも私がパイロットデンチャーで義歯を作り続ける理由4)

総義歯(総入れ歯)の患者さんは当然、ご高齢の方が多く、何軒も歯医者を転々としていたり、望まない治療を経験していたりいろいろな方がいらっしゃいます。笑顔で来院して下さっていても、心の奥底では私のことを信用していないのがひしひしと伝わってくる患者さんも少なくありません。どうせ痛くされるに決まっている、と例えるならマイナス1000点からのスタートです。大学病院で100点満点を極めた私でも(そう評されただけで私自身はそんな風に思ったことはありませんが)初めから無条件に信頼されることなんてあるわけないのです。

10年使用した義歯が物語ること

初診の時、患者さんに伺う項目は ①何がお困りか ②何をお望みか、 この2点です。仮に、今お使いの入れ歯がガタガタだとしても、初めからガタガタだったとは限りません。10年使っていた入れ歯だとしたらなおさらです。何だかんだ10年も使えた入れ歯です。それを作ったときはピッタリだったのでは?と想像してみるのです。それが10年経てガタガタになったとしたら、元々ぴったりしていた骨や粘膜はどこへ行ってしまったんだろう?と。骨や粘膜がどこかへ行ってしまったとしたら、表に存在する皮膚や筋肉も変わってきていますよね?なぜ変わっちゃったんだろう、え?老化?

されど長き10年

悲しいことに、人間は永遠に18歳でい続けることはできません。年は取ります。でも、30歳代の10年と、60歳代の10年は同じではありません。歯の治療痕を通して、患者さんの10年を想像し、10年前の状態に戻すことが出来ないだろうか?また、これからの10年が変わらず安定した機能を果たし続けられるだろうか?それには何が必要なのか?

患者さんの❝今❞をつぶさに観察すること、❝今まで❞を想像すること、❝今から❞を想定すること、パイロットデンチャーシステムで義歯を作るということはこれらが実現できるのです。



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