何が総義歯を難しくしているのだろう
パイロットデンチャーシステムは、簡単に言うと
①仮義歯(パイロットデンチャー)を作成
②粘膜面の調整
③調整が済んだパイロットデンチャーを正確にコピーして完成
と言う3つのステップで成り立っています。ですから①の義歯が多少アバウトでもそれなりに調整すればファイナル義歯に移行出来ると考えている先生も大勢いらっしゃることでしょう。
然るに、患者さんが初めて自分の診療室に足を運んだ日を思い返していただきたい。パイロットデンチャーをセットする前、旧義歯を使っている時点での状態を覚えていますか?
顔貌はどうでしたか?開口時にまっすぐ動いていましたか?
立った時、座ったとき、横顔、後ろ姿、よく見ていますか?
この時の患者さんの状態は、正しく適当なパイロットデンチャーを装着する形態が付与できるものではありません。確実にパイロットデンチャーシステムを成功させるには、この『仮義歯』という概念を捨てて下さい。パイロットデンチャーが手順の上で仮義歯のような存在だからと言ってラフでもよいといった感覚は捨て、「正しい概形」「正しい咬合」が痛みのない快適な義歯を作るための基本中の基本だということを充分に認識したうえで取り組んでほしいのです。
正しい概形を知る
これは歯科医師なら誰がどう見ても右上6番に違いありません。目をつぶっても書けることでしょう。
では総義歯の『正しい概形』は知っていますか?
粘膜だから、骨格だから、年齢性別違うから、と、無歯顎の形態を『個体差』に封じ込めてはいませんか?
テストをするつもりは全くありませんが、6番の概形は寝てても書けるはずなのに、無歯顎の構造がスラスラ書けるでしょうか?
顎堤に触ってください
歯牙の診断の際、検査をしますね。レントゲンを撮り、ポケットデプスを測ります。修復物のマージンを探ります。動揺度や咬合をを審査します。
無歯顎の顎堤を同様に審査してほしいのです。
口唇の張り具合、口腔前庭の深さ、上顎結節遠心の外側翼突筋付着部、口蓋の固さ、フラビーの有無、など......
上顎だけでも見ようと思えばまだまだ沢山チェック項目があります。ひとまず全部触ってみてください。患者さん全員の顎堤をひとまず全員、触ってみてください。そして歯槽頂を軽く押して、どこに圧が掛けられるか試してみてください。
中には、歯科医師の指が触れただけでも拒絶反応を示すような、薄い粘膜の患者さんもいます。強く押しても全く痛まない患者さんもいます。
何人もチェックすることで、われわれも無歯顎に慣れ、患者さんも治療に対する心理的ハードルが下がってきます。
患者さんが少しでもリラックスすれば、筋の緊張がほぐれて、無圧の印象を採ることがより容易になるのです。
前に触れました患者さんの言葉「触られただけで上手か下手かわかる」....
こんな切ない言われ方はすぐに卒業できます。特別な道具がなくても明日からすぐに実行できるのです。
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