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ゾンビ企業が生き残る時代 ~支援と課題のはざま~01
新年、あけましておめでとうございます。
一向に上向かない製造業の景況感のなか、創業3年目何とか生き延びることができました。3年間、経営者として、コンサルタントとして、町工場の社長として様々な知見、経験をさせてもらうことができ、今年から発信を再開してゆきます。
ぜひ、お付き合いいただき、日々の事業運営のヒントにして頂ければ幸いです。
ゾンビ企業が生き残る時代 ~支援と課題のはざま~
1970年代。中小企業も大企業も、十分な仕事があり、働きやすい時代だった。
中小企業で働く職人たちは、自分で機械を購入し独立。
大なり小なり、それでも仕事は余るほどある時代だった。
「発注された仕事を、言われた通りにやればいい」
そんな時代が、たしかにあった。
バブルが弾け、リーマンショックが日本を襲った2000年代。
「発注された仕事を、言われた通りにやればいい」
という時代が終焉を迎えます。
今まで、営業努力をしなくても注文は来たし、資金が足りなければ銀行は融資に協力を惜しまなかったのに。
そんな時代が、終わったのです。なんとか乗り越えた会社もあれば、上手く乗り越えて大きく成長した会社もあります。
それが出来なかった会社も、当然あります。
廃業もままならず、当時の規模のまま自転車操業を繰り返し、なんとか業界にしがみついている会社は……『ゾンビ企業』とも、言われてしまっています。
利益を十分に上げられず、借金の返済すらままならない。
経済的に非常に困難な状態にあるものの、何らかの理由で存続している企業の中には、銀行や政府の支援などにより倒産を免れている会社が存在します。事業活動は継続していても、利益不足で借入金の利息すら十分に支払えない状況であったり、銀行の融資延長や政府の補助金に依存していたり……。少なからず、思い当たる節があるかもしれませんね。
『ゾンビ企業』という言葉は、経済の効率性や成長を阻害する要因として、特に日本のバブル崩壊後の経済停滞期に注目されるようになりました。
こういった企業が多いと、資源の効率的な配分が妨げられ、経済全体に悪影響を及ぼすことがあります。本来であれば市場から退出すべき企業が存続することで、他の健全な企業との競争を阻害、なんてことも……。
バブル崩壊後、金融機関が手のひらを返したようにお金の返済を求め始めたのは、1990年代後半からのことでした。以前は『資金ですか? もちろんお助けします!』と寛容だった金融機関も、気前よく融資をしていたのが嘘のように、鬼の形相で追い込みをかけてきたのです。中小企業にとって、これほど恐ろしいシナリオはなかったでしょう。
ここで救世主として登場したのが金融庁や経産省でした。
彼らは声高らかに宣言したのです。
「中小企業は日本経済の要だ! 追い詰めるなんて、何事だ!」
そこで打ち出されたのが、信用保証協会という中小企業支援の柱です。
簡単に言えば、企業がお金を返せない場合でも、金融機関に肩代わりを促す仕組み。これにより、多くの中小企業が厳しい経営環境の中で、事業を続けるための時間を確保することができました。しかし、猶予期間を活用して再建に成功した企業がある一方で、経営改善が進まず、依然として困難な状況に直面する企業も少なくありませんでした。そうした企業にとっても、支援の継続は事業を継続し、再建の足がかりを得るための重要な支援となったのです。
さらに平成21年(2009年)、金融庁が「中小企業金融円滑化法」を制定しました。この法律は、中小企業が資金繰りの難局を乗り越えられるよう、借金の返済猶予や条件変更の仕組みを法的に整えたものです。具体的には、返済が厳しい企業が銀行に「返済条件を見直してほしい」と申し入れると、銀行が柔軟に対応する環境を作ることを目指しました。
これは、金融機関がただ単に猶予を与えるのではなく、中小企業の再建や経営改善の支援を目的とした取り組みです。その裏では、政府が金融機関の対応状況を適切に監視し、中小企業の事業継続を後押ししていました。
もちろん、この仕組みが全ての中小企業を救ったわけではありません。支援が続く中で、「非効率な企業構造を整理する必要がある」という声も上がりました。延命中の企業の存在が経済全体の効率性を下げるという課題が、いつしか大きな問題として浮上してきたのです。
ですが、中小企業の経営者にとっては、『延命措置』や『猶予』があるだけでも、事業を続けるための最低限の支えとなったことでしょう。苦しい場面で手を差し伸べてくれる頼もしい仕組みのようにも見えました。しかし、頼もしい仕組みであるスーパーヒーローも万能ではなく、どこかで「これ以上は無理」となるタイミングがやってくるのです。
このような応急処置は、一部では非効率との批判もありますが、日本特有の『情』や『協調を重んじる文化』が色濃く反映されているのかもしれません。
ゾンビを救うことが本当に未来を救うのか。それとも、これは単なる一時しのぎに過ぎなかったのか……。
経済の効率性よりも人々の生活を守ることを優先したこの政策、あなたはどう評価しますか?
賢く、厳しく、そして魅力的に。
中小企業が輝けば、日本の経済はきっと動き出すはずです。
ゾンビなんて言わせない。言われたくない。
次の時代……いや、その前に、2025年をどう生きるか。
迷いながら、それでも笑いながら。
新しい1ページを、自分たちの手で綴っていきましょう。