ライブ配信による「過程の共有」には世の中をもっとよくする力がある
お絵かきコミュニケーションアプリ「pixiv Sketch」のiOS版が、ライブ配信に対応、というニュースがpixivさんより配信されました。
絵を描くその過程からみんなと共有しようという試みも、ついにタブレットで、こんなに気軽に、しかもリアルタイムでできるようになったんですね。驚きです。
■「過程の共有」の面白さ
そういえば僕自身も、10年ほど前、漫画家の太田垣康男さん(「MOONLIGHT MILE」)のスタジオにお邪魔して、「漫画の発売日にネームを観ながら作品について解説してもらうライブ配信」をやらせてもらったり、佐藤秀峰さん(「海猿」「ブラックジャックによろしく」)のスタジオに行って、「ペン入れしてもらいながらおしゃべりするライブ配信(もちろん、発売前の作品です)」とか「表紙を描くところを生で見せてもらう配信」などをやらせてもらっていました。いずれも、国内では初の試みだったと思うのですが、漫画家さんは、イノベーティブな方が多く、上記のような革新的なものでも、快く、楽しみながらやっていただけました。
リモートワークというと、普通は「プログラマー」とか「ウェブライター」をイメージするかと思いますが、漫画家さんもリモートワークであり、デジタル化も進んでおり、となると目の前に必ず高スペックなPCやペンタブが置いてあり、そしてそれはインターネットに繋がっているわけです。10年前は、Twitterでさまざま発言する漫画家さんが非常に目立っていて、これからの漫画のあり方なども盛んに意見交換されていましたが、上記のような事情とも関連あるのかと思います。ずっと机に向かっていて、目の前にPCがあって、それがネットに繋がっていたら、自然とそうなっちゃうだろうな、という。
当時は先進的な漫画家さんが先頭をきって「漫画を描いている様子をライブ配信でみせる」ということをやっていたのですが、
お絵かきサイトの盛り上がり
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お絵かきサイトのSNS化
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お絵かきツールで過程の記録ができるようになる
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お絵かきの様子をライブで配信できるようになる
といった過程をたどって今にいたり、今やタブレットやスマホで描く様子を気軽にリアルタイムでライブ配信をおこない、フォロワーとその過程ごと楽しむことができるようになりました。
もちろん、絵を描いているところをみられるのは照れくさいという方も多いかとは思いますが、過程を共有することで
・フォロワー・ファンとの関係をさらに深められる
・ノウハウの共有
といった効用が得られますし、それ自体がエンターテインメントとなりうるとも考えられます。
リアルタイムに、過程を共有することで、ものづくりをよりよくしていく、という事例は今後増えていくと思います。
■ものづくりの前の思考過程から共有することでアウトプットを高める
クラウドファンディングは、ものづくりのための資金調達方法に革新をもたらし新しいプロダクトを生み出す新たな方法を提供しましたが、その前の段階のものづくりの思考過程からの参加を促すツールの一つがライブ配信であり、そちらの発展も楽しみですし、これからさまざまな試みがおこなわれると思います。
アイデアやイノベーションというのは、突然個人の頭の中に降りてくるものではなく、人間がこれまで積み重ねてきたさまざまな知恵や実績を組み合わせ、アップデートすることによって生まれるものですし、それをより改善して、世の中に受け入れやすくする過程においても、さまざまな使い手の知恵や発想を取り込んだ方が、最終的にはよい結果をもたらすからです。
アーティスティックな活動だけではなく、さまざまなものづくりの過程にライブ配信が組み込まれ、世の中をもっとより良くするために役立ったら良いなと思います。
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