ZOZOが買収されたので、今までとこれからの事を総括してみた!
ZOZOが買収されたので、今までとこれからの事を総括してみた!
ソフトバンク傘下のヤフーが、衣料品通販サイト運営のZOZOの買収を決めた。国内のネット通販企業の買収では過去最大となる。10月に社名を「Zホールディングス」に変更するヤフーとZOZO。日本の電子商取引(EC)で2強の楽天とアマゾンジャパンへの反攻はなるか。
先週はヤフーがZOZOを買収したという事で、ファッション業界はこれでもちきりでしたね。業界外からも連絡が来たりで、ZOZOと前澤さんの知名度って本当高いんだなと改めて思い知らされました。伊勢丹の大西社長が退任しても「それ誰?」って感じだったのに…。
普段からヘビーなZOZOウォッチャーである筆者ですが(主に決算書ですが)、周辺からのリクエストもあり、せっかくなんでZOZO関連についてnoteにまとめてみる事にしました。とはいえ、ほとんどのメディアで既に特集が組まれていますので、自分の思い出話も踏まえながらゆるーく過去から遡ってみたいと思います。
○ファッションECモール黎明期
ファッションECモールとしてダントツ1強のZOZOですが、実はサービスとしては後発です。早かったのは商社ですね。
・スタイライフ(ニチメンメディア株式会社が2000年5月にスタート)
・マガシーク(伊藤忠の社内事業として2000年8月にスタート)
・セレクトスクエア(丸紅の新規事業として2001年2月にスタート)
※ZOZOの前身である「EPROZE(イープローズ)」で2000年10月スタート。ZOZOTOWNとしてのサービス開始は2004年12月です。
しかし、これらのファッションECモールは今や、
スタイライフは楽天(楽天ブランドアベニューに名称変更)
マガシークはNTTドコモ
セレクトスクエアは高島屋(タカシマヤファッションスクエアに名称変更)
がそれぞれ買収しています。
余談ですが、コーディネート系のソーシャルも2009年にfukulogというサービスが開始されていて、
実はWEARも後発です。
なので、前澤さんが言う「誰もやってないことをやる。」というのはちょっと違和感があって、「誰かやってても勝てそうな事ならやる。」って印象ですね。ビジネスとしては正しいと思います。
○過去のサービス
ZOZOが成長するきっかけとしてよく語られているのはユナイテッドアローズの出店ですね。当時の代表である重松さんがメディアでも語っていますが、ZOZOのサイトがカッコよくて服好きな感じがすごく伝わってきたというのが理由だそうです。今ではちょっと考えにくいようなお話ですが、サイトデザインやサービスも独特なものが多かったように思います。
ZOZONAVIというセレクトショップ検索サービスや。(2013年終了:セレクトショップの集客に繋がらず、アパレル卸の営業が格段に増えてしまったというお話も…。)
ZOZOPEOPLEといったソーシャル系のサービスなんかもありましたね。結局は撤退したサービスなんですが、サイトを覗くだけでワクワクしたのを覚えています。当時はずっとこのサイトに滞在できるなぁと思ったものです。
WEARにもバーコードスキャンなんていう機能がありましたね。商品のバーコードをWEARのアプリで読み取ると、ブランドの自社ECサイトか、もしくはZOZOTOWNの商品ページに飛ばせるという仕組み。当時としては画期的でしたが一部のデベロッパーの反対もあって(特にルミネ)終了しました。
当時は送料について不満をもらすユーザーに対して、前澤さんご本人がキレるという事件もありました。この時の方がロックな感じがして個人的には好感持ってました。
めちゃめちゃ余談ですが、2000年代後半によく「ZOZOに商品放り込むだけで半期で1億売れた」と自慢げに話すアパレルおじさんが発生したりしました。
当時のアパレルってメインの販路は小売・卸の2択で、ECモールに納品するのは卸と同じ感覚だったんです。今でこそZOZOの料率35%が高いという論争が発生していますが、当時はそんな発想全く無かったでしょう。何故なら、卸の掛け率は50〜60%なんてざらでしたから。
1990年代、ブランドによっては2000年初期くらいってまだ「プロパー消化率」、つまり定価販売で売れる率がめっちゃ高く(90%超えるブラドも多くありました。)その掛け率でも儲けが出てたんです。今やプロパー消化率は店頭で50%〜60%程度ならいい方で、特にECモールなんてほぼプロパー販売やってません。(クーポン販売をプロパーと言い張ってるかもしれませんが。)30%程度がいいところでしょう。こんな時代だからこそ、料率35%が高く感じてしまうというのはあるかと。
○迷走期
個人的にちょっとおかしな空気を感じ出したのは「クーポン乱発」し出したあたりからでしょうか。お知り合いのEC担当者から話を聞く限りでは、元々はZOZOの周年記念にという事でクーポンを発行したようなんですが、それが何故か毎月連続してやる事になったようです。このクーポン発行でバカみたいに売上がアップしたらしいので、ブランド側もやめるにやめれず今も継続してしまっているようです。まぁブランドも共犯と言えば共犯ですかね。
ここから「ツケ払い」や「ZOZOSUIT」「ZOZOARIGATO」など、メディアでも問題視されていたサービスが続く訳です。
ZOZOARIGATOは一部の大手アパレルの離脱を招きましたが、参加したブランドの売上はどうやら上がっていたようです。同時にAmazonにも出品していたブランドは、Amazonの売上が著しく下がったようで、サービス終了と共にまた売上が回復するといった事態もあり、ZOZOとしての狙いは悪くなかったかと思います。店頭販売員からの反対の声が強かったとはよく聞いてましたけど。
ちなみにZOZOSUITの精度に関しては、採寸師との比較を用いてこちらに記載していますので参考までに。
あと、外せないのは前澤さんの「Twitter騒動」ですね。アパレルの原価率発言や1億円お年玉などなど、世間を騒がせた事で有名です。
こちらに関しては賛否両論あり、この頃くらいから、今までZOZOを礼賛していたNewsPicks民でもZOZO叩きが見られるようになりました。Twitter戦略もインプレッションを伸ばすという点では成功していましたが、前澤さんはファッションアイコンじゃないから、Twitterでどれだけ有名になっても服の売上に対する貢献度って限定的なんじゃないかと思いますけどね。
○会社売るのは想定内?
会社を売る件に関しては、以前から多くの人が予想していたように思います。周りがあんまり言うんで、個人的にも何となく「そのうち売るんだろうなー。」と思っていた節があります。
保有している株式もちょいちょい現金化していましたしね。
このあたりはダイヤモンドさんが大好きな件ですから、会見でも突っ込んでましたね。
2016年には既にこんな事もあったので、会社売るのはそんなに意外な事でもなかった感じです。売り先をヤフーと予想していた人はほとんどいませんでしたが…。(ほぼ、みんなAmazonと予想してたような…。)
○今後はどうなる?
これは会見を見てもらった方が早いかもですが、一応掲載しときます。
paypayモールに出店というのは面白い発想だと思いました。最近はプラットフォーマーとしての成長鈍化を感じておりましたので、ZOZOを「ソフト」として売るのはいいのではないかと。キュレーションのクオリティが高ければもっと小型化してもいいと思います。ファーフェッチとかtmallみたいなモールに差し込めたらもっと売上拡大も望めますし、苦戦していた海外展開も可能になりますね。何だったらリアル店舗も出せるかも。楽天化している今のZOZOにそれだけの感度があるかは知りませんが。
あとはこちらが興味深かったです。ソフトバンクも決済代行持ってますし、そのせいかGMOペイメントゲートウェイの株価が下がったとの事。ZOZOくらいでかいと決済代行変えられたら痛すぎますね。(GMOは15億円ほど営業損失出る見込みって…。)
○成長鈍化の兆しも
ZOZOの決算書見てるとこれはすぐわかるのですが、明らかに成長鈍化してきています。有名ブランド取り切った感もありますし、国内でこれ以上、売上伸ばそうと思うと、楽天に出店しているような低価格帯ブランドを誘引したり、非アパレル商材増やしたりするしかないでしょう。
今期の第一Q決算では購入者数が初めて減少。ゲスト購入者数は以前からも割合が下がっていて、明らかに新規の取り込みが鈍化しています。頭打ちな感が否めません。
売上を上げようと思うと、ショップの数増やしてSKU数伸ばすしかない。そうなると、もうブランドの中身とか言ってられず、「出店ショップ数」と「SKU」がKPIになってもおかしくないでしょう。以前からZOZOのトラフィックは頭打ちだと言われており、新規セッション稼げない=売上増加が見込めなくなります。となると、クーポンや値引きを連発して1人あたりの購入金額増やすか、CVRアップ狙うか。ZOZOからしたら売上×料率でRevenueが決まるから、ブランドがクーポンやセールで利益削ろうが知った事ではないんですが、ブランドが疲弊したら最終的には離脱しか方法はないんじゃないかと。
○利益率高める為のto B施策
成長鈍化から、利益率高めるためにto Bを強化している節もあります。
昨年導入されたプロダクト広告や、(絞り込みした時に画面上部に出てくる「PR」ってやつですね。)
買収後に完全に塩漬けになっていたアラタナを使った受託業務。特にPBで利益削られた時だったんで、これで補填しようとしてたんではないかと思います。
○競合の状況
冒頭でも言いましたが、現状ファッションECモールとしてダントツ一位のZOZO。ですが、ファッション専業で無いところだと楽天・Amazonの存在があります。ファッションカテゴリー単体での流通総額は発表しておりませんが、過去からの情報を整理すると、
楽天は2017年時点で4000億円以上と推測。
こちらもあくまで推測ですが、Amazonも2000億円以上はありそう。
こんな感じですので、楽天は恐らくZOZOより規模感は上、Amazonは急速にその差を詰めていると言えます。問題は出品ブランドの中身。ここはまだZOZOが他のモールに勝っている部分でしょうか。しかし、今の低価格ブランド中心の出品やブランド力が削られていくような施策が続くようなら、そのうち差がなくなってくる可能性はあります。
仮にヤフーがファッションカテゴリーで1000億円以上あれば楽天に並ぶくらいの規模感になる訳ですね。
他社モールを離脱したら料率を優遇するって話もあったようですが、本当なんだろうか…。
○その他のファッションECモール
規模感は小さいですが、その他のファッションECモールの流通総額も一応掲載しておきますと、
・マガシーク 250億円(2018年)
・ロコンド 141億円(2018年)
・ショップリスト 263億円(2018年)
規模感だと、どこもZOZOの10分の1以下ですね。圧倒的な二位グループはどこいった…。
○進む楽天化
有名アパレル企業の離脱が増えてるのって、いつかの「楽天離れ」を彷彿とさせます。自社EC強化に舵を切る大手アパレルも増えていて、各社「ZOZO比率」を下げようとしているんでしょうかね。それでもまだまだZOZOの存在感は大きいようですが。
ZOZOの売上上位を占めているのってセレクトショップ中心なんですが(ナノユニバース・アーバンリサーチ・UAあたり)、ここは売上規模が大きすぎるでしょうから直近での離脱は考えにくいです。ブランドとのパワーバランスによって料率は変化しているでしょうから、利益をあげている可能性もありますしね。
ちなみにZOZOとずぶずぶの関係で撤退が考えにくい企業は下記ですかね。
・アダストリア
・マークスタイラー
・TOKYO BASE
・ストライプインターナショナル
特に、
Fulfillment by ZOZOというサービスを利用すると、ブランドは店頭在庫までZOZOBASEに預ける事になります。そうなるともう身動きできなくなるので、ZOZO依存度が高くなります。どちらかと言うと、大手アパレルのトレンドは自社で物流を担保して、モール依存脱却を狙っているんですけど、この提案ってトレンドに逆行してるんですよね。。
まぁロコンドだって同じような施策してますから、これも顧客を囲い込むという意味では同様ですね。
めっちゃ長々と書きましたが、これらを踏まえるとこのままではZOZOからアパレル企業の撤退は進むと予想しています。そうなると今後は料率を下げるしかなくなってくるのではないかと。ヤフーとの連携で、その事態を防げるようになるのか、経過を見守りたいと思います。
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