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国語の理解と改革

読解力向上へ授業改革

「ごみ処理施設を建設する

 事が最も問題点が少ない。

 市民アンケートにも沿っ

 ている。」


「景気が悪いから建設費は

安い方が良い。

公園にすれば、災害時の

避難場所になる。」


新潟県A市のB中学校で、

昨年の9月下旬、ある

クラスの生徒達が、架

空の都市の市長選で、

どの候補が次のリーダー

にふさわしいのか?

と、意見を交わして

いた。


社会科の授業である。


市長選の争点は、

「工場移転後の空き地

 の活用」

候補者の主張、

市民アンケート、

人口構成・・。

社会科教諭が生徒に情報

を示し、考えをまとめさ

せていく。


ある生徒が、こんな声を

上げた。

「空き地の立地に関する

 情報がなければ、政策

 を選べない。

 住宅地が近いのなら、

 ゴミ処理施設は嫌がら

 れる。」


情報を読み解き、生まれた

新たな気づきである。


「語彙力や文意を把握する

 力をもとに、情報を整理

 して結びつける力」


それが今、教育現場や

入学試験で求められる、

「読解力」

である。


こんな例がある。


「A市<読解力>育成

 プロジェクト」


新潟県A市では、令和3年

度から、小中学生の読解

力向上に注力してきた。


授業を「読解力」の視点で

見直すよう、教諭らに促し

ているのである。


同市教育委員会主任指導

主事によると、中3と小6

を対象に全国一斉に毎年

実施される、

全国学力・学習状況調査

(全国学力テスト)

の結果が関係していると

いう。


全国学力テストのアンケ

ートで、

市内の児童生徒は、

「勉強が好き」

「授業がわかる」

と受け止める割合が

比較的多かった。


しかし、平均点が全国

や県を下回る教科も

あった。


子どもの認識以上に

実際は、

「読めていない」

のではないか?


「ズレ」を解消する方策

の1つとして、小中学校

のあらゆる教科で、

「子どもの読解力」

を高めるための仕掛けを

組み込み始めた。


社会科教諭が架空の市長選

を授業に取り入れたのも、

その模索の一環であった。


全国的に、令和2年度から

小学校で英語やプログラ

ミングが必修化し、子ども

が学ぶべき分野は、かって

ないほど多様化した。


その学びを支えるものが

読解力である。


しかし、日本の子どもの

読解力は危機的状況に

ある。


経済協力開発機構(OECD)

が世界79カ国・地域の15

歳を対象に、2018年に

実施した、

「国際学習到達調査(PISA」

の結果で、日本は読解力が

前回(15年度調査)の8位から

15位に大きく後退した。


その一因を情報環境の変化

に認めるのが、国立国語

研究所教授のC氏だ。


C氏は子どもたちのコミュ

ニケーションを支える、

インターネット、

交流サイト(SNS)、

が、長文に触れる機会を

減少させている、

と危惧する。


C氏は、

「文字や文章を読む行為

 は、その裏にある書い

 た人の意図や人格を

 理解する作業。

 数字でも、その裏に

 ある現象や企業の将

 来を読んでいる。


 小学校から中学校まで

 連続性を持って読解力

 を培うことは、子ども

 の将来に向けた重要な

 カリキュラムだ。」

と話す。


新潟県の教育現場で一定の

成果を上げつつある読解力

向上の取り組み。


それが、一体どのような

方向性を示すのか?


市教委は、新潟県A市B中学

の授業を見学し、こう話した。

「読解力に根差した授業が

 徐々に定着しつつある。

 今後は、家庭学習に還元

 したい」


国語世論調査

文化庁は、

「国語に関する世論調査」

の結果を発表した。


気に入って応援している

アイドルなどを指す、

「推し」

姿かたちをより良く見せ

ようとする、

「盛る」

といった新しい表現の浸透

が伺われた一方、言葉の

使いかたで気を使う人も

増加した。


その理由は、交流サイト

(SNS)などでの情報発信

が定着する中、批判的な

コメントが殺到する、

「炎上」

への懸念が言葉遣いに影響

を及ぼしているようである。


<「炎上」を警戒、言葉に

 気を使う人が増加>


調査は、国語への理解を把握

し、関心を高めるため、平成

7年度から毎年、実施されて

いる。


今回は今年1月~3月に16歳

以上の男女3579人から回答

を得た。


新しい意味が辞書に加わった

「推し」を使うことがある、

と答えた人は49.8%、

続いて、

「盛る」を使うことがある、

と答えた人は53.3%

であった。


若い世代ほど、よく使う

傾向が見られた。


また、これらの言葉を、

他人が使用することに

対して、

「気にならない」

と答えたのは、

「推し」は82.1%、

「盛る」は80.6%

であった。


一方、言葉の使い方に

気を使っている人の割合

80.4%で、平成9年度

の67.3%から大きく上昇

しており、

「SNSによる情報発信の

 普及に伴い、炎上への

 警戒心が背景にあるか

 もしれない。」

と、文化庁国語課の担当

者は話す。


さらに、この8割超の回答者

のうち、気を使っている点を、

「差別や嫌がらせと受け取

 られるような発言をしな

 い」

としたのは、

「62.7%」

と3番目に多く、近年のハラス

メント意識の高まりを伺わせた。


<「略語、分からず困る」8割超>

文化庁が公表した

「国語に関する世論調査」

では「DX 」「SNS」「AED」

といった、

アルファベットの略語について

調査も行われた。


使い勝手の良さがあるものの、

8割超の人は意味が分からず、

困った経験があり、日頃の

言葉遣いを顧みるきっかけ

となりそうである。


DXは、デジタル技術によって

生活やビジネスを変革する

「デジタルトランスフォー

 メーション」。


SNSは、インターネット上で

交流を楽しむX(旧Twitter)な

どの

「ソーシャル・ネットワーキ

 ング・サービス」。


AEDは、停止状態の心臓に

電気ショックを与えて回復

を促す、

「自動体外式除細動器」

を指す。


いずれも英単語の頭文字など

を使った略語である。


近年、見聞きする機会が増え

ているが、


「意味不明で、困ることが

 ある」


との回答は85.1%に上った。


一方、こうした略語を使う

ことを、

「好ましい」

と感じると答えたのは

45.1%、

「好ましくない」

と答えたのは

54.3%

で、ネガティブな受け

止め方が多いものの、

賛否に大きな偏りが

ないことが分かった。


ただ、好ましいと感じる

人の割合は、

10代が76.1%、

70歳以上で27.1%、

と1/3近くまで減り、

世代間の差が際立った。


好ましいと考える理由は、

省略した方が使い

 やすい」

という回答が、

「77.9%」

で最多。


好ましくないとする理由

のトップは、

「意味が分かりにくい」

という回答で

「94.2%」

であった。


また、本来とは異なる意味

で用いられる言葉の調査も

行われた。


➀「涼しい顔をする」は

「関係があるのに知らんぷり

 する」

という本来の意味を理解して

いる人が、

「22.9%」

にとどまり、

61%が、

「大変な状況でも平気そうに

 する」

を表す表現と捉えていた。


➁「忸怩たる思い」を本来の

「恥じ入るような思い」

という意味で使っていたのは

33.5%で、

52.6%

「残念で、もどかしい思い

を表す表現として使っていた。


[*その他の回答を省いている

 ため合計は100%にはなら

 ない。]


文意を正確に把握し、それを

的確な言葉で表現するために、

真の国語力の養成が急務である。


<データと資料>



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