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【レビュー】『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』僕らの冒険に限界なんてない【ネタバレ無し】

 任天堂が誇るゼルダの伝説シリーズ最新作であり、傑作と名高い「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の続編。
 オープンワールド形式のアクションアドベンチャーゲームです。
前作はWiiUとの同時発売でしたが、本作はNintendo Switch専用ソフトとなりました。

 城は宙へと浮かび上がり、空からは謎の遺跡群が降り注ぐ。
 ハイラルは突如として"天変地異"に見舞われた。
 主人公リンクは、果てなき冒険に再び身を投じる。

公式サイトより引用

 前作があまりにも絶大な人気とクオリティを誇っていたこともあり、開発が発表された当初から任天堂ファンは本作の話題でもちきりでしたね。

 基本的には前作をベースにしているとはいえ、フィールドにも大幅な追加変更が行われているほか「ウルトラハンド」、「スクラビルド」、「トーレルーフ」、「モドレコ」、「ブループリント」という5つの能力が新登場し、前作とは全く違う体験が楽しめます。

 なお筆者は前作プレイ済み。


ゼルダ×クラフト=面白い に決まってる!!

 本作最大の特徴は「Minecraft」のようないわゆるクラフトゲーの要素を多分に盛り込んだこと。

 なかでも特に画期的だったのは先ほども紹介した「ウルトラハンド」によってさまざまなものを組み立てることが出来る点。
 例えばですが丸太ををつなぎ合わせてイカダを作ったり、複数の板をつないで簡易な橋を作ることが出来るわけです。

 ここに「ゾナウギア」と呼ばれる様々な機能を持ったパーツを組み込むことで出来ることは無限に広がります。
 先ほど挙げたイカダであれば「扇風機」のゾナウギアを組み込むことで動力を確保し、「操縦桿」で操舵機能を付けてあげれば水上を苦も無く移動できるようになり、過去作のように風向きを気にする必要もない立派な船になるわけです。

 ここまで読んで「冒険の中でいちいち組み立てってテンポ悪くならない?」という不安を感じた人もいるかもしれませんが、その為に「ブループリント」という能力が用意されており、一度組み立てたものを登録しておくと一瞬で再組立出来るようになってますのでこの点も安心です。

自分で作ったもの以外にもゲーム内で手に入る設計図からの組立も可能。
こちらは電撃を用いて魚を獲る漁船だが、ここに自分なりのアレンジを加えてより速度を出せるようにしたり、全くの別用途に使っても面白い。

 これに様々なオブジェクトを武器や盾につけて攻撃力を上げたり属性攻撃を可能にする「スクラビルド」が加わると、謎解き、戦闘、移動の仕方まであらゆる点で「思いつくことは大体なんでも出来る」驚くべき自由度を実現しています。

さらに広大になったハイラルと圧倒的ボリューム

 前作の時点でもめちゃくちゃ広かったハイラルの大地ですが、そのはるか上空に複数の「空島」と呼ばれるエリアが登場。
 それに加え地上と全く同じ大きさの「地底」、更に地上にも多数の「洞窟」が追加されているので、実質的な広さは2倍どころか3倍近いかも。

 もちろんスカスカではなく、祠、コログ、マヨイなどなど多数のやり込み要素がちりばめられている為、やりごたえバッチリの巨大ボリュームになってます。
 個人的には少しずつマップを開拓していく方式の地底マップが好み。

 今回は前作のシーカータワーに代わり登場した鳥望台、これがかなりの高度までリンクを打ち上げてくれるため、パラセール一つで大体の場所まで行けてしまいます。
 おかげで「広すぎて探索がしんどいのでは?」という心配もあまりありません。
 先述したゾナウギアを駆使した乗り物や、前作から引き続き使用可能な馬を使えば鳥望台からは行きにくい場所にもわりとすぐ到着出来るので、広さが苦になることはあまりないと思います。

問題だらけのUI

 本作では前作のUIがある程度流用・改良されているのですが、これがかなり大きな問題になっています。

 まず重要なこととして本作では前作に比べアイテムの使用頻度が非常に高くなりました
 またクラフトゲーの仕組みを取り入れたこともあり、素材の種類が前作から大幅に増えています。
 
この二つが合わさったことで、前作のマイナーチェンジに過ぎないUIでは対応しきれなくなり、所有するアイテムが増えてくる中盤辺りから頻繁に使うのにも関わらず検索性が悪いUIにずっとストレスを感じていました。

 使用頻度順でソートが出来るおかげでよく使う素材はだんだん見つけやすくなるのですが、たまに使う程度の素材は本当に困ります。

特に弓矢のメニューは顕著
横にスクロールして数百種類の中から目的のものを探せというのは流石にスマートじゃない

 また装備についても種類が大幅に増えており、切り替えたい場面も多いのにお気に入り登録やセット単位での変更が出来ない為、いちいち面倒に感じていました。

 大ボリュームのゲームだからこそUIが悪いのは致命的。
 正直任天堂謹製らしからぬ仕上がりでした。残念です。

暴発地獄!頼むからキーコンフィグをくれ!

 まずアイテムを取る為に都度Aを押す仕様なので、特にルピーやポゥなどの1箇所に幾つもまとまって出現するアイテムはいちいち10回20回と連打する必要があります。
 長押しで連続取得とかもないのでなんでこんな仕様にしたのか謎です。
特に前作では接触するだけで取得できたルピーは猶更。

 面倒なだけならまだ良かったのですが、仲間たちのスキルを使用するボタンも「仲間の近くでA」になっている為、アイテム回収中に仲間がフラッと近くに来るとスキルが暴発してしまいます。
 するとスキルにもよりますが、アイテムを吹き飛ばして回収不可にしたり、火がついて意図せず食品を「焼き○○」に調理してしまったり、木製の武器などは焼失の危険もあります。
 正直ものすごくフラストレーションが溜まります。

 これを避けるには仲間を呼び出さない以外の方法がないので、今作の目玉要素の一つでもある共闘を諦めるか事故を許容するかの二択を迫られる事に。
 スキル自体は非常に便利なんで出来るなら常時連れ歩きたいんですけどね。

 これ、キーコンフィグが出来るだけで解決する話では・・・?
と思うのですが、キーコンフィグは本記事投稿時点で実装されていません。
アプデで追加出来るならぜひお願いしたいところです。

作中での前作の扱いが中途半端

 前作をプレイしてないプレイヤーが置いてけぼりにならないような配慮をどうするか、というのは続編ものである以上避けては通れない問題なんですが、ここの扱いが上手くいってないように感じました。

 前作から進め方が自由すぎるゲームだったこともあり、100%遭遇するキャラクター以外、今作では誰もリンクと面識の無い状態になっていて、さらに徹底的に前作の出来事に対して触れないようになっており、やりすぎて逆に不自然。

 例えば今作での仲間達と再会した際、一般的には前作でどういう出来事があって仲良くなったのかを簡単に振り返る演出が入りますが、それが一切ありません。
 前作未プレイの人からすると「誰やねんお前!」となること請け合いですし、例え前作プレイ済みでもそういった演出があれば懐かしんだり思い出したりするきっかけになるはず。

 前作ブレス オブ ザ ワイルドは如何に傑作といえどすでに7年前のゲームなので、今作に悪影響を及ぼすほどネタバレに気を遣う必要があったのかは正直疑問です。
 先に今作をやった人が前作をやってくれる需要を期待しての戦略なのかもしれませんが、だとしたら尚更前作が気になる程度に情報を出すべきだったと思います。

 結果として「地続きの続編」のはずなのにまるで「パラレルワールド」のような印象を受けるほど、不自然さが際立っていました。

要点まとめ

良い点

  • クラフトゲーの要素がゼルダとバッチリ噛み合っている

  • ゾナウギアの登場によりとにかく出来る事が豊富

  • 広大なのに様々な要素が詰まったフィールドと異次元の大ボリューム

  • 仲間と共に敵に立ち向かう共闘要素

悪い点

  • 長時間プレイする前提のオープンワールドなのにUIの出来が悪い

  • とにかくAボタンを押させるボタン配置

  • 頻繁に暴発する仲間のスキルが邪魔で共闘要素を楽しみにくい

  • 前作の出来事を不自然に隠しすぎている

総評

 正直言いたいことはまだまだあります。誘導に関してとか。
 ただそうした問題点を補って余りあるほど面白いゲームなのは確かで、決して高い期待を裏切るようなものではなかったのは間違いありません。
 そこは誤解なきように。

 特に本作の新能力はいずれも画期的かつ新鮮な遊びを提供してくれていて、続編にもかかわらず絶対にマンネリ感を感じさせないという強い意志を感じましたね。

 ただなんといいますか、ブレスオブザワイルドの続編として生み出されたことがこの作品の不幸という感じはします。
 いや、勿論前作のベースが無ければ完成しなかったであろう作品なのはわかっているんですが。

 あくまでブレスオブザワイルドをベースとした結果、そこから変更されていない一部UIやボタン配置などに不便さが生まれてしまいました。
 DLCも無いことが発表されているので、アップデートによる改善もあまり望めないのが辛いところ。

 次世代機の噂も絶えないので、次のゼルダ新作はそちらで出るかもしれませんね。
 ハリウッドでの実写映画化も発表されゲーム以外にも活躍の場を拡げつつあり、今後どのような展開がなされていくのか楽しみです。

評価・・・9 - Amazing(驚くほど素晴らしい)/10

※本レビューの点数はIGNのガイドラインを基準としています。


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