
【レビュー】『JUDGE EYES:死神の遺言』キムタク+如くの化学反応【ネタバレ無し】
龍が如くスタジオの送り出したまさかの新シリーズ。
PlayStation4で発売された他、リマスター版がPlayStation5、Xbox Series X/S、steam等のPCで発売されています。
俳優・アーティストの木村拓哉と、「龍が如くスタジオ」が強力なタッグを組み、本格リーガルサスペンスアクションを制作! 現代の東京を舞台に、おぞましい犯罪や陰謀と闘う新たなヒーロー・八神隆之の活躍が描かれる。
人の心に潜む“闇”が、全ての“光”を閉ざしていく
過去に囚われた男が、苦悩と挫折を乗り越えた先にあるは
聖なる啓示か― -、死神の囁きか―-。
SMAP解散後の木村拓哉さんを主人公に起用すると発表した当初は、「オワコン」扱いされ炎上気味だったうえ、そもそもその前に発売された龍が如く6や極2の出来が今ひとつだったこともあり、ファンは龍が如くスタジオや当時同スタジオ総合監督であった名越さんへの不信感を募らせている状況でした。
更にはピエール瀧氏の逮捕により主要キャラを差し替える事態になるなど、かなりの逆風に襲われた本作ですが、高い評価を得て続編が作られるに至っているのはゲーマー諸兄には周知の事実でしょう。
現在は価格も非常に安くなってますし、フリープレイ化された事もあって手に取りやすい作品です。
なお筆者はPS4版をプレイ、 龍が如くシリーズは1~6までプレイ済みです。
久々に登場したシナリオの面白い「龍が如く」
初めにはっきりと申し上げますが、本作は龍が如くを何ら逸脱するものではありませんでした。
というより龍が如く本編がRPGへと変更されたことで、代わりに従来のアクションゲームとしての龍が如くがこちらに継承されたというのが正しいですね。
本記事も完全新作というよりはあくまで龍が如くシリーズの新作としてのレビューをしていきたいと思います。
龍が如くシリーズは3あたりから正直シナリオ面で今一つな作品が多かったんですが、本作のシナリオははっきりいって面白かったです。
新シリーズ新主役登板という大仕事を無事成功させることが出来たのも、ひとえにシナリオの出来が良かった故ではないでしょうか。
ネタバレになるので多くは語りませんが、新主人公・八神は元弁護士の探偵ということで、推理や追跡、法廷でのシーンがあったりと頭脳プレーも駆使しながらのサスペンス仕立てとなっていて、元極道の桐生が主役だった龍が如くに慣れてると新鮮ですね。
私個人としては木村拓哉さんを起用することで表現が制限されることを危惧していたんですが、キャバクラとカラオケがないくらいで龍が如くとほぼ変わらなかったのは安心しました。
まあ事情は察しますが、せっかくカラオケ館が町中にあるのに中に入れないのはちょっと寂しかったですけど。
アクション面の大幅強化
肝心のアクション面ですが、こちらも龍が如く以上にパワーアップしてると感じました。
一対多を得意とする「円舞」と一対一を得意とする「一閃」の二つのスタイルを自在に切り替え可能となっていますが、龍が如く7からアクション要素がなくなった分、こちらのアクションにリソースが集中されたのか、どちらも出来が良く、またどちらかが極端に強いというバランス崩壊も起きていなかったので好感触です。
主人公が変わった=モーションを一から作り直し なので心配してた部分でしたが杞憂でしたね。
変に守りの堅い敵もいませんのでガンガン攻めていけて楽しいです。
その分アイテムの所持数や防具廃止などシステム周りで難易度が調整され、敵の攻撃がわりと痛いので難易度や緊張感も落ちていません。
ドラゴンエンジンを使うようになってから戦闘がつまらないと言われ続けていましたが、ここまで立て直したのは見事というほかありません。
結局「キムタク」を主役に据えた時点で成功が約束されていた
シリアスパートはさながら往年の連ドラのようにカッコよく、ギャグパートはイケメンが馬鹿な事をやるからこそ面白くなり、木村拓哉さんを主役に据えたキャスティングが完璧だったと言わざるを得ません。
冷静に考えると、抜群の知名度を誇り、顔も声も良いうえに声優経験があって演技に不安がなく、コント番組を長年やっていてお笑いも出来るあの「キムタク」を操って、龍が如くのフォーマットでアクション俳優ばりのバトルをさせたら面白くないわけがないんですよね。
また中尾彬さんや谷原章介さん、滝藤賢一さんといった有名俳優の方々も出演されていますが、この手の一般の芸能人を声優に起用した場合にありがちな棒読み演技はほとんど無し。
元々こういった声の仕事がこなせる方を選んでいるのでしょうが、芸能人キャスティングは失敗例の方が圧倒的に多いので、ここまで上手くいっているのも珍しいですね。

面白さを削ぐ二つの大きな欠点
一方で問題点ですが、システム面で致命的なポイントが二点。
まず一つ目は致命傷システム。
ボス級の大技や銃、刀などの凶器攻撃を受けると体力の最大値が一時的に減る、というもの。
減った最大値は医者に診てもらうか、その医者だけが売ってくれる特定のアイテムを使うかしか回復することができないのですが、これがかなり高価なうえマップの外れまで行かなければいけない為かなり不便。
特に本作は序盤の金策に苦労するバランスとなっていることもあって、最悪詰みに近い状況に陥る可能性もあるほか、後述する京浜同盟と組み合わさって本作に著しい悪影響を与えてしまっています。
そしてもう一つは悪名高い京浜同盟イベント。
チンピラ軍団である京浜同盟に目を付けられたことで発生するイベントなんですが、これが本作の面白さを大幅に損なうことになってしまいました。
内容としては一定時間が経過する毎に京浜同盟の幹部が出没、この時「危険度」という数値が表示され、これがゼロになるまでザコ敵とのエンカウント率が大幅に上昇する、というもの。
このザコ敵には副幹部にあたる強敵や銃を使い大ダメージ+致命傷を与えてくる敵が混ざっている為、この状態では探索もままなりません。
そしてこの危険度を減らすには時間経過か幹部を撃破するしかありません。
が、この幹部連中はボス相当に強力で、全員が致命傷を与える大技を使ってきて、さらにろくな報酬も得られない、と出来ることなら戦いたくない相手。
結果的に私は安全な建物の中などで放置する羽目になり、ゲームとして根本的に間違っているとしか思えませんでした。
なお、このイベントはわりと頻繁に発生するうえに発生を止める方法はありません。
ちなみに不評だったことは開発陣も理解していたようで、どちらも続編では廃止されているそうです。
その他細かい気になったポイント
・変装がプレミアムアドベンチャーですら自由に出来ない
せっかく色々な姿に変装できるシステムがあるのにこの姿で街を出歩くことが出来ないというのは正直もったいないですね。

犬の着ぐるみも欲しい
クリア後解禁の自由探索モード(プレミアムアドベンチャー)でも出来ないので、何らかの大人の事情?とも思いましたが、次回作では出来るようになっているそうです。
・一部実績の解除が大変すぎる
トロフィーや実績集めに興味のある方向けですが、龍が如くシリーズはいつまでたってもコンプリートが大変すぎる問題が改善されません。
単に難易度が高いだけならまだ仕方ないと思うのですが、特にぷよぷよや麻雀といった覚えるのに時間がかかるタイプのゲームができないと不可能というのはちょっとどうなのかなと。
要点まとめ
良い点
探偵という設定を活かし、今までの龍が如くシリーズと一線を画したストーリーが新鮮で面白かった
使ってて楽しい派手さと適度なバランスがしっかり両立されたアクション
キムタクを動かせるのがとにかく面白い
その他のキャスティングも◎
悪い点
京浜同盟にまつわる全要素
シンプルに面倒なだけの致命傷システム
総評
面白い。多くの方にお勧めできるゲームでした。
新価格版は驚異の1,980円であのボリュームですから、コスパは抜群じゃないでしょうか。
どちらかというと私は木村さん起用に懐疑的でしたが、見事に覆されてしまいましたね。
まさか彼を使ってゲームをする、ということがここまで面白いとは思ってもみませんでした。
龍が如くシリーズの域を出ないとはいえ、龍が如くと名乗らなかったお陰で新規のプレイヤーは入りやすくなりましたし、過去作キャラを無理に出す必要も無くなったことがシナリオの面白さに繋がっていますので、タイトルを変えて正解だったと思います。
ただ如何に面白くとも京浜同盟イベントは許容できません。
よってその分1点減点したのが以下の評価だと思っていただければ。
評価・・・8 - GREAT(素晴らしい)/10
※本レビューの点数はIGNのガイドラインを基準としています。