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【レビュー】これこそが真の三國無双だ!『真・三國無双 ORIGINS』【ネタバレ無し】
真・三國無双シリーズ待望の最新作にしてナンバリングを改め心機一転となる本作は、コーエーテクモ販売・同社のチームω-Forceによって開発されたタイトル。対応プラットフォームはPS5、Xbox、Steam。
天下、久しく分かれれば必ず合し、久しく合すれば必ず分かれる──
後漢の成立より百五十余年。
続く旱魃と異常気象により、大地は深刻な飢饉に見舞われていた。
人々は飢え、草の根や木の皮を口にしてもなお飢えて、命を落としていく。
だが、為政者たちは重税を課し、横領を重ね、民を救うどころか苦しめる一方であった。
過去の記憶を失った主人公は、旅の中で荒れ果てた里に立ち寄る。
そこで、仲間と共に人々を助ける「長髪の男」、悪徳官吏を糾弾する「髯の偉丈夫」と出会う。
主人公は一人の子供を救おうとしたことで、彼らと共に官吏の軍団と戦うことになる――
年が明け、時代は大きく動く。
困窮する人々に救いの手を差し伸べ、絶大な支持を得ていた太平道なる組織が、漢王朝に反旗を翻したのである。
彼らは団結の証として黄色い布を身に付けたことから「黄巾党」と呼ばれた。
後の世に言う、「黄巾の乱」である。
そして主人公は、北の地・幽州にて「髯の偉丈夫」と再会する――
本作はシリーズの原点回帰を掲げ、ナンバリングを改め、真・三國無双シリーズの黄金期ともいえる2~5までのナンバリングを手掛けていた庄 知彦氏がプロデューサーとして復帰という、ある意味「これでダメならもう三國無双は終わり」くらいのω-Forceにとってかなりの大勝負を仕掛けたタイトルでした。
従来からシステムを大きく変更し、固定の主人公のみ使用可能、今までの無双武将たちは一部のみ「随行武将」という形でゲージが溜まるごとに一時的に操作可能になるという形に。
シナリオも黄巾の乱から赤壁の戦いまでに絞って、その分密度を濃く描くということで、結果的に晋の武将など赤壁以降に活躍する武将は登場しません。
これまでの「キャラゲーとしての無双」をかなぐり捨てて原点である「タクティカルアクションとしての無双」を進化した形で作り切ることに振り切ったわけですね。
三國無双も年々キャラゲー寄りになっていたこともあって大きな決断だったと思いますし、この決断を下した開発陣の皆様には頭が下がります。
これが戦場の臨場感
最新技術で描く圧倒的軍団戦闘
過去作では倒したらすぐに消えてしまっていた敵の体や武器、兜がそこら中に散乱し、命がけの戦争の只中にいるという事を再認識させてくれます。
土埃や風、雨の描写も力が入っており、一つ一つは決して超美麗ではないのかもしれないですが、とんでもない数の敵味方を描写しながらこれを両立させていることに凄まじさを感じました。
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イベントシーンと思いきやこのままシームレスに襲撃してくる
そして何よりも重要なのは味方と共に戦ってる連帯感。
敵将がかなり手ごわくなったこともあり、従来のような複数の敵将を一人で全部倒す、というようなプレイングは難しくなったため、基本的に味方と共に少しずつ戦線を押し上げていくことが重要になります。
味方が近くにいるだけで敵のターゲットが分散して戦いやすくなりますし、3以来の復活である護衛兵たちとともにこちらから集団戦法を仕掛けたり、味方武将と連携技なども使えるため自然と一緒に戦う機会が増えるはず。
そもそもほっといても敵を倒してくれることも多く、ただの防衛目標に過ぎなかった過去作とは大違いの頼もしい存在です。
そんなバランスだからこそ輝いているのが新要素である「大軍団」。
とんでもない数の将兵が集結した敵の主力部隊で非常に強力です。
これに対抗するためこちらも友軍を集め、一斉に突撃します!
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おもわず「うおおおおおお!!!」と叫びたくなること間違いなし
大軍同士が正面からぶつかり合う大混戦の中で仲間と少しずつ敵軍を切り崩していくわけですが、これがまあほんとに面白い。
従来だと消化試合となっていた敵本陣での戦いがクライマックスにふさわしい最後の山場と化したのはお見事というほかありません。
原点回帰 蘇ったタクティクス要素
本作は無双6以降と異なりタクティカルアクションに回帰。
6以降は基本的に全部一人でなんとかするゲーム性になっていたうえ、指示通りに敵を倒していく事実上の一本道であったのでシリーズから戦略性は失われつつありました。
本作では有名無実と化していた「士気」の影響が大幅に上がったことに加え、実質一本道だったステージ構成が見直され複数の戦闘が同時進行で進むようになりました。
敵と戦いつつ次はあっちを救援、向こうは間に合いそうもないから見捨てるしかないか・・・?とか考えながら刻々と変わる戦場を駆け巡る無双シリーズの醍醐味がやっと戻ってきてくれたわけですね。
終盤に控える大軍団との戦いでは味方の援護が欠かせない為、救援することによるメリットが過去作と比べても大きいのもポイント。
助けた味方が後々思わぬ奮戦でプレイヤーを救ってくれたときなんかはもう脳汁ドバドバですよ!
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もう草刈りとは呼ばせない
敵将との戦いに生まれた緊張感
アクションに大幅なてこ入れが入り、ただ連打してるだけで勝てるゲーム性ではなくなったため、単調だった従来シリーズの戦闘から脱却に成功。
主人公の武器も複数種類用意されており、いずれも操作感にかなり個性があるのでマンネリとは無縁になっています。
とはいえいずれも操作は簡単でさして敷居が高くなったわけでもないのが良いですね。
また従来ではちょっと固いだけの雑魚でしかなかった敵将たちが大幅に強化され、戦闘を緩急あるものに変えてくれたのも好印象。
簡単に説明すると彼らは「外功」と呼ばれるゲージをもっており、そのままでは怯んでくれない、いわゆるスーパーアーマー状態。
このまま闇雲に攻撃しても反撃を食らうだけなので、攻撃後の隙や新要素である弾き返し(タイミング良くガードを押すと反撃する俗に言う”パリィ”)などを駆使して「外功」をゼロにすることで大きなダメージを与えられるシステムとなっています。
重要なのは基本的に敵の攻撃の「後」に反撃するという仕組みで、前述の弾き返しを含めガードや回避によってまず相手の攻撃をしのがなければいけないため、ボタン連打で一方的に敵将を制圧することは不可能となっているということ。
なかには完全にガード不能な大技や「発頸」という特殊技でのみ防げる攻撃なんかもあってただガードしてればオッケーというわけでもないのがミソ。
これにより名もない敵武将であっても油断はできないし、強力な有名武将たちとの闘いは一層緊迫感あるものになりました。
とはいえ弾き返しの判定はかなり緩いし、回避の無敵時間も長くガードは大半の攻撃を無効化してくれます。
攻撃モーションの途中であっても即回避やガードに移行できる、敗北してもチェックポイントからすぐ再開できるなどものすごく優しい仕様なので、「ゲームは上手くないけど無双は簡単だから楽しめる」という方にも今まで同様遊んでもらえるよう調整してくれています。
各武将の描き方が劇的によくなった
一番良かったのは「特定のフレーズを連呼するキャラ付けを減らした」点ですね。
例えば張郃の「美しく!華麗に!」とか袁紹の「名族」、董卓の「酒池肉林」とかが無くなっていてよかったです。
そんなことしなくてもキャラ強いですからねこの人たち。
逆に楽進の「先駆け!一番乗り!」とか李典の「~だぜ俺」とか韓当の「影が薄い」キャラは据え置きなのはちょっと残念だったり。
正直この手のキャラ付けはシナリオが少なかった初期作だから有効だっただけで年々鬱陶しくなっていたのでもっとバッサリと無くしてくれて構わないと思ってます。
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史実の悲劇的結末を念頭に、儚い深窓のご令嬢といった雰囲気に
他にも個々の武将たちの描写が丁寧になり、主人公に対し友人として辛い心情を吐露してくれたり、作中の行動がどのような信念に基づいて行われたのかが語られたりするのは大変に良かったです。
正直水増し感のあるIFルート
ifルートでもステージ構成に大した変化がないのが最も残念に感じたポイント。
ネタバレの為多くは語りませんが、ifルート専用ステージは存在しないし、ステージ内で大きな変化が起きるのは全ルート含め一つだけ。
シナリオとしても前後のイベントを使い回すために無理のある展開になってる箇所も多かったと感じました。
歴史のifは確かにファンにはたまらない要素ですが、正直作り込みが甘く力尽きた感があって、これならifルート消してその分のリソースを他に回した方が良かったように思います。
まあこのシステムが活きるのは三國志の後半部分を描く時でしょうから、その後を描く次回作が出る際にしっかり充実させてくれることを祈ります。
その他気になった部分
・主要な戦いのbgmは過去作のアレンジ中心
しかもキッチリ人気曲を取り揃えてある「わかってる」選曲になっており手厚いファンサービスが嬉しいですね。
今回従来のナンバリングからタイトルを変更したリブート的立ち位置にある作品ということもあって新曲よりもこうした選曲が優先されたのかなと。
とはいえ新曲もちゃんと良かったですよ!
・各武器種の性能差が目立つ
一人用ゲームなので許容範囲、と言いたいところですが各武器の熟練度でレベルアップする仕様上嫌でも弱い武器を使わなきゃいけなくなるのは辛いところ。
高難易度になればなるほど差を感じますねこれは。
色んな武器を使ってほしいというデザインにした以上はもう少しバランスもとってほしかったなというのが本音です。
・特典のBGMがループしてくれない微妙仕様
初回特典に入っていた過去作のBGMがループさせるように作られてないので、戦闘中にかけても1~2ループするごとに曲が途切れてイントロからまた始まる形になってしまってるのはちょっとがっかり。
要点まとめ
良い点
戦場のただ中にいる臨場感と味方との共闘感
失われつつあったタクティクス要素が完全復活
アクション面の大改修で遊びやすさは維持しつつ緊張感ある攻防を実現
各武将の描写の改善
シリーズファンには嬉しいBGMの選曲
悪い点
せっかくルート分岐を用意したのに出来が今一つ
武器種毎の性能差が深刻
総評
間違いなく無双史上最高傑作と言って良い快作。
私がこういう無双をやりたい!と期待していた通りの作品を出してくれた開発陣の皆様には重ね重ね感謝申し上げたい。
とはいえ私個人の想いは別として、ゲーム全体としてみるとまだまだブラッシュアップできる、してほしいと感じる部分が少なくないのも事実。
こうなるとそのままパワーアップした続編を期待しちゃいますね!
赤壁以降の武将たちに会いたいという方も多いでしょうし。
本当に庄Pが三國無双に帰ってきてくれてよかった・・・
評価・・・9 - Amazing(驚くほど素晴らしい)/10
※本レビューの点数はIGNのガイドラインを基準としています。