#47 北海道って自然災害が少ない?
本州に住んでいる人から見ると、北海道って自然災害が少ないと思われているんだろうか。
北海道は、自然災害が起こる頻度は本州に比べて少ないかもしれないが、その1回で大きな被害をもたらす可能性は十分にある。
私は、自分自身の防災に対する意識は高い方だと思っている。
防災に関わる公共事業に携わっていたし、大学時代は防災教育に関する研究をしていたし、東日本大震災の時はまだ高校2年生で青森県に住んでいたし。
移住相談会へ行くと、今住んでいる地域の自然災害リスクが高いから、北海道移住を検討しているという方がいたりする。
正直、ちょっとモヤモヤした。
日本は世界でみても自然災害が多い国。
自然災害大国である日本に住むということは、そのリスクを背負って生きなければならないと思っていて。
地震や火山噴火だけでなく、近年は地球温暖化の影響で風水害も増えている。
いろいろな自然災害が起こる可能性がある。
移住した先でも「防災対策」は必須である。
もちろん地形的な観点からリスクの低い場所に住むという選択も防災対策の一つかもしれないが、どこに住んでも防災対策を行う必要があることは忘れてはならない。
北海道に移住しても自然災害が起こる可能性は十分にあるので、これまでに北海道で起きた自然災害のことや情報収集する際によく利用しているWebサイトについて、書きたいと思う。
近年北海道で起きた自然災害
平成30年北海道胆振東部地震
平成30年9月6日に起きた胆振地方中東部を震源とする地震。
マグニチュード6.7、最大震度7で、
北海道で観測史上初めて震度7を記録した地震だった。
震源地周辺で広範囲に大規模な斜面崩壊が発生したり、液状化現象が発生したり、住宅や道路の被害が大きかった。
そして、大規模停電(ブラックアウト)が発生した。
ブラックアウトとは、大手電力会社の管轄する地域の全てで停電が起こること。
北海道でこんなに大きな地震が起きるとは思っていなかった人の方が多かったように思う。
可能性がゼロなんじゃなくて、低いだけ。
北海道でも地震は起こる。
平成28年8月北海道豪雨
平成28年8月7日から8月30日にかけて、あわせて4つの台風が北海道に上陸ないし接近し、前線が刺激されて引き起こされた集中豪雨のこと。
南富良野町や北見市、帯広市では堤防が決壊し、
深川市や旭川市では溢水が起きた。
(溢水とは堤防から川の水が溢れること)
連続して台風が上陸するなどまとまった降雨が続いたため、水位が下がりきらずに再び水位が上昇する現象が発生した。
この台風による農業被害金額は500億円以上で十勝地域やオホーツク地域などの道東の畑作地帯での被害が大きく、ばれいしょやスイートコーン、玉ねぎなどの野菜類の被害額が大部分を占めた。
北海道は、全国の耕地面積の1/4を占め、少量自給率は208%(当時)であり、日本の食糧基地として重要な地域である。
そのため、この台風で受けた農業被害の影響は全国に及んだ。
※2022年の北海道の食糧自給率は216%
https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kn/kawa_kei/ud49g7000000f0l0-att/splaat000000hdsv.pdf
https://www.hkd.mlit.go.jp/sp/kasen_keikaku/gburoi000000m9ku-att/gburoi000000m9p0.pdf
災害時や防災対策に使えるサイト
南海トラフ地震は今後30年以内に発生する確率が70~80%と言われている。
これは気象庁が発表している解説情報に書かれている数値である(令和6年11月8日発表)。
地震は予期できないが、これほど高い確率で発生することが予測されている。
さらに、ここ数年は毎年のように風水害が発生しており、災害への備えは今後ますます重要になっていく。
私がよく利用しているWebサイトを紹介したい。
重ねるハザードマップ
「重ねるハザードマップ」とは、自由にその場所の自然災害リスクを調べることができるWebサイトである。
洪水や土砂災害、津波や高潮等の自然災害のリスクを知ることができる。
災害種別ごとのレイヤーを重ねて表示することができるため、複合的な自然災害リスクも調べることができる。
深川市内には石狩川が流れている。
石狩川は北海道で最も長く、全国では3番目に長い。
流域面積は全国で2番目に大きい。
そのため、深川市内を流れる石狩川はそこそこ川幅が広い。
それなりに堤防幅はあるが、その堤防を越えてしまうようなことが起これば、市街地に一気に水が流れ込む。
重ねるハザードマップで洪水リスクを見てみると、深川市街地は広範囲で浸水する想定になっている。
実際に私も住まいを決める時は、重ねるハザードマップで浸水深を確認したうえで決めた。
市街地は広範囲で浸水する想定のため、「浸水しないところに住む」という選択はほぼ無かった。
浸水したとしても垂直に避難できる(垂直避難)階数のお部屋を選ぶことにした。
北海道は、石狩川(268㎞)、天塩川(256㎞)、十勝川(156㎞)と大きい河川が複数ある。
もちろんこれらの河川周辺は浸水想定区域になっており、水災害のリスクがある。
リスクのない場所を選んで住むというのは難しいかもしれないので、その場所にどういったリスクがあるのか把握し、そのリスクにどう対応できるか考えたうえで、住まいを決めることをおススメしたい。
川の防災情報
川の防災情報は、リアルタイムな情報を収集できるWebサイトである。
自然災害が起きた際に、利用することが多い。
実はこのサイト、ここ数年で大きく変わっている。
一般の方でも利用しやすくなるようにとインターフェイスを変えたり、データの精度が高くなったりしている。
自然災害は頻繁に起こるわけではないのでこういったサイトは災害時以外で利用する場面は少ないかもしれないが、だからこそ、少しでもわかりやすく、情報を収集しやすくするために、より良いサイトに変化していっている。
川の防災情報では地点登録することができ、その地点のリアルタイムな状況を確認できる。
その地点の発表情報や基準値超過情報などが確認できるのだ。
水位やダムを監視するカメラの映像は、大雨の時などほぼリアルタイムな情報を画像から見て判断できるため、ぜひ活用してほしい。
気象庁
気象庁では、気象情報に関わらず、気象警報や注意報などの情報も収集することができる。
気象庁のサイトも川の防災情報と同じく、ここ数年で大きく変わった。
警報情報や避難情報は難しい言葉が多い。
その発令した情報にどのような行動が伴うべきなのか判断しにくかったこともあり、より直接的な言葉になっている。
(R3年5月に「避難勧告」という言葉廃止されている)
現時点での避難情報は以下の通り。
警戒レベル5:緊急安全確保
警戒レベル4:避難指示
警戒レベル3:高齢者等避難
警戒レベル2:大雨・洪水・高潮注意報
警戒レベル1:早期注意情報
ちなみに、自然災害の注意報や警報等の情報は気象庁が発表するが、避難情報を発令するのは自治体である。
発表・発令する情報元が異なるが、先ほど紹介したWebサイトでは一元的に情報を収集できるようになっている。
▼警戒レベルに関する情報(このページ、わかりやすいです)
移住先でも防災対策は必須
北海道に限らず、日本に住むためには防災対策が必須である。
引越でも、移住でも。
地震、風水害、土砂災害・・・
その土地にどんなリスクがあってどんな対応が必要なのか、ぜひ一度考えてほしい。
私は東日本大震災の時、青森県に住んでいたが、地震が発生してから約1日停電していた。
街灯も信号機も消え、月明かりしかないまちを歩いたのは初めてだった。
日本がどんな状況になっているか知る由もなく、停電が解消しテレビで津波の映像を見た時には、その悲惨さに涙した。
「何でこんなことが起きたんだろう。」
誰かのせいに、何かのせいにしたくなった人は私だけじゃなかったと思う。
私の周りに直接的な被害があったわけではないけれど、東日本大震災の時に感じたやるせなさが、防災に興味を持ったきっかけだった。
自然災害が起きたら、誰のせいにも、何のせいにもできない。
だから私たちは、リスクを把握して、日ごろから備えることしかできないのだ。
誰のせいにもできないから、責任を持って防災対策をする必要がある。
移住先でも自然災害が起こる可能性は十分にある。
移住先を決める時は、
・その土地にどんなリスクがあるのか
・どういう対策ができるか
も併せて検討してほしい。