人間のてんかん、猫のてんかん。

 二十歳過ぎの頃、てんかんを発症した。大学のゼミの発表会のときだ。気がついたら病院の白い天井が目の先にあった。過緊張のせいだったのだろうか。その前日、前衛映画三本立てを観たのも悪かったと思う。そのとき以来、20年くらいは抗てんかん薬を服用していた。30代を越えると発作は起きなくなり、時折、目の前に星が散るくらいに落ち着いてきた。
 自分のてんかんが落ち着いてホッとしていたら、つい先日、猫のぴーが発症した。台風が近づいて、天候のよくない日だった。低気圧が悪かったのかもしれない。突然、くるくると床を舞い、よだれをまき散らし、倒れて四肢が痙攣した。たいへん驚いて、可哀想だと思ったが、自分もそう思われていたことに気づく。翌日、動物病院に行っててんかんと診断された。対処法は薬しかない。セルシンという人間に使うのと同じ薬を四つに割って飲ませながら、同士だなあと思う。セルシンは筋緊張軽減のための薬で、私も処方されているのだ。
 まだ薬に慣れないぴーは、セルシンを飲むと数時間ぐったりとしている。

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深川岳志
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