助さん格さん
「助さん拡散」
水戸黄門が呼びかけると、助さんの姿はみるみるうちに透明になり、飛び散った。
あ然としたご老公は、
「しまった。アクセントを間違えたか」
と呟いたが、時すでに遅し。
諸国を覆い尽くした助さんは、時、ところを構わず、ご老公に不正を通達してきた。
これを見逃すことができないご老公、格さんに背負われて、八面六臂の大活躍。時代場所人種を問わずに正義の鉄槌を下し続けた。
いい加減疲労困憊したとき、ふと思いついたのは、ひょっとして自分は超能力者ではないかということ。そうでなければ、助さんが拡散してしまった理由がわからない。
そこで、一言叫んでみた。
「助さん集約」
ひゅっと音がして、助さんが目の前にあらわれた。
安堵のあまり、がくっと膝をつく格さん。
「かっかっかっ。これで本日も天下太平」
ご老公は天に向かって笑い、付け加えた。
「のう。助さんともう一人や」
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