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私のチップスター、勝手に食べたやつをゆるさない。
出オチ記事!言いたいことはタイトル以上でも以下でもない。ありのままそのままだ。冷蔵庫のプリンに名前を書いたり、書かなかったりして家族に食べられ(そして争い勃発)てしまう。この類の話は古今東西、年がら年中ありふれたものだろう。ただ、今回の事件は家庭の冷蔵庫から起こったものではない。おとな集う会社での話である。
よく、こっそりお菓子をくれる心優しき上司がいる。自分と40ほど年齢が離れているせいもあってか、甘口対応。その方から頂いたチップスターを、お礼を述べた後、炊事場の食器棚、観音開きの戸を開けた一番下段の部分に、確かに収めた。二日後のお昼時、同僚女性に、頂いたお菓子がありますよ~なんて言いながら戸棚を開けて指さした先はすでにもぬけの殻であった。動揺し戸を閉め、再度開けてみたが、当然私のチップスターは姿を消したままである。「何をもらったというのか?」「なぜかなくなっているのです。」と目線のみで無言のやり取りをした。無言で見つめあう瞬間のその感情、筆舌にしがたい。
私個人に頂いた、善意のチップスター!あぁ、チップスター!名前こそ書いていなかったが、普段から個人の私物しか入っていない棚から、未開封のチップスターを無断で持っていくその所業。ゆるしがたい。自分の口もすでにチップスターをおむかえ体制にあったというのに!どうあってもゆるしがたい!
そもそもご自由にどうぞとされていない、かつ自分が持ち込んだものじゃない菓子を勝手に食べるのはのはどうなんだ?(ゆるしがたい)どんな心境で持って行った?(ゆるしがたい)これを外の世界でやったら窃盗?無銭飲食?犯罪でお縄なのでは?(とにもかくにもゆるしがたい)
一応、チップスターを頂いて戸棚に収めた一連の流れが全て自分の妄想であった場合も想定したが、前後のやり取りを含めた鮮明な記憶と手のひらの感触、目にささるような赤いパッケージ…あれは現実であろうという結論に至った。
というわけで、頂き物の私のチップスターは永遠に失われてしまったのである。湧き上がる怒り、絶望、悲しみは交じり合い、憤怒の炎を生んだ。本当のところ、社内中に罪状を書いた貼り紙をしたかった。そして犯人を精神的に追い詰めたかった。ごうごうと燃えさかる精神世界があろうと、現実世界では自由な振る舞いができない大人の柵が物悲しい。
これはありふれた話だ。だが、簡単に水に流すことのできないのが食べ物の恨みというもの。朝日が昇ったらチップスターを買いに行こうと思う。「食べたの誰だ?」の札を貼ってあの戸棚に立てておこう。なんとやさしい復讐心の発露ではないか。
時間が経過するにつれ、この激情も風化するのだろう。だが、今はまだ自分の中の荒ぶる魂がいつまでも叫んでいるのだ。