
JDヴァンス「子なし猫好きオンナは惨め」発言と故・石原慎太郎氏の口撃と石丸・小泉構文雑感
2024/08/09
//www.youtube.com/watch?v=Oeff_W2Pzk8&t=206s
J・D・ヴァンス氏が余計な一言で炎上している。J・D・ヴァンス氏とは2024年11月に開かれる大統領選での副大統領候補として、トランプ前大統領が正式に指名した若手であるが、今になって3年前の発言が大炎上してしまい話題になっているのだ。
BBCニュースより引用
『【米大統領選2024】ヴァンス副大統領候補「子供のいない猫おばさん」批判を説明 発言への非難受け』
米共和党のドナルド・トランプ大統領候補が副大統領候補に選んだJ・D・ヴァンス上院議員(オハイオ州選出)が2021年に、「子供のいない猫おばさんたち」は「みじめな人生を送っている」と発言していたことがあらためて浮上し、波紋を呼んでいる。ヴァンス氏は、「子供のいない」民主党政治家は未来に利害関係がないのに、そういう人たちが国を動かしているとも批判していた。これについてヴァンス氏は26日、「皮肉だった」と説明した。(引用終り)
「子供のいない猫おばさんは惨めな人生を送っている」というこの一言、アメリカでは左派からも、中道ぐらいの女性からもかなり嫌われる発言だ。勿論ヴァンス氏は記事にもあるように、あくまで子供のいない民主党の指導者たちに象徴される反家族、反子供を推す流れへの政治的な皮肉として発言したのであり、それは筆者も重々承知している。
だから最初はニュースに取り上げる程でもないかとスルーしていたのだが、これが日を追うごとにジワーッとボディブローのように効いてきた。自分も含め、子供もいない、結婚もしていない、猫が好きな女はやはり惨めなのか……と思うようになり、独身・猫好きの女友達にも聞いてみたら「反論できん。確かに惨めだもん」と返事がきた。これは思想に関係なく、結婚を逃した女子、結婚相手が見つからなかった女子にとっては心にグサッと来る、かなり攻撃力が高いセリフなのだ。子供がいない猫おじさん猫おばさんたちの人生は惨めという言葉を心に留めてからは、いわばドラクエの「毒の沼地」で、一歩動くごとにジワジワとヒットポイント(体力)を削られていくようなダメージを受けてしまったのである。
このように本来の意図からはなれ、一般女性までをも巻き込んで「誤爆」してしまった余計な一言といえば、故石原慎太郎氏の「大年増の厚化粧事件」を思い出す。
日刊ゲンダイ
『「大年増の厚化粧」と“口撃” 小池vs石原親子のバトル激化』
これは今から8年前、2016年のニュースだが如何だろうか。なんで男って「それ言わなくていい一言だよね」という一言を言ってしまうのかと、筆者はいつも思うのだ。
ただし「大年増の厚化粧」に関しては女性の中でも賛否が割れていた。なぜかと言うと「女性の女嫌い」というのがあって、たとえ女性同士でも、化粧が厚くて結構モテる女性に対してはちょっと苦手感を抱いている女性は結構いるのである。そういう人達からすると「うん、なるほど」と肯定的に思ったかもしれない。また逆に、もっと女性も政治に進出すべきだと思っている女性達からすると「なんでこんな事言われなきゃいけないの?」みたいに感じただろう。賛否は確かにあったけれど、やはりこれは石原氏の晩節を汚した「余計な一言」ではなかったかと思う。もし自分が攻撃するのだったら学歴の事とか、もっと違う材料で攻撃をしただろう。攻め口はもっと他にあるはずなのに、女性という性を取り上げて何か言ってしまうのは、今の時代ではむしろ逆効果で損ではないかと思う。
とはいえ、かく言う筆者も「こういう特徴の男の人って○○だよね」みたいな発言を結構気楽にしているのであまり他人の事は言えない。言えないのではあるけれど、「子供のいない猫おばさんの人生は惨め」という言葉にはグッとくるものがあった、というのも正直な気持なのである。
しかし「男の一言」には別タイプもある。その好例が最近人気の小泉進次郎氏だ。石丸伸二氏が台頭した都知事選石丸旋風の後から、いわゆる「石丸構文」との対比で「進次郎構文」(小泉構文)が見直されているのである。
毎日新聞
『ポエムな「進次郎構文」は平和的? 石丸伸二氏と比較も』
そもそも石丸構文とは極めて攻撃的な話法である。以前ある番組で、女性レポーターに対し「その言葉の定義は何?」「それさっきお答えしましたよね」などの逆質問を繰り返して話をずらしながら、結局は「絶対に何も答えてあげないよ」となってしまう結構意地悪な対応が見られた。そこから「石丸構文」という概念が生まれてネット上では結構話題になったのである。
その一方で進次郎構文・小泉構文はなんと言うか、自分が言った言葉にそのまま回帰するという「循環型の構文」で、特に誰かを傷つける事がないのである。その代表例を、上記毎日新聞の記事から一部引用しつつご紹介しよう。
(ここから引用)小泉氏は環境相だった2019年9月17日、東京電力福島第一原発事故に伴う除染廃棄物を中間貯蔵施設から30年以内に県外に搬出するという年限について、記者団に「これは福島県民の皆さんとの約束だと思います。その約束は守るためにあるものです。全力を尽くします」などと述べた。
具体的な取り組みについて記者団に問われると「30年後の自分は何歳かなと発災直後から考えてきた。私は健康でいられれば、30年後の約束を守れるかどうかという節目を見届けることができる可能性のある政治家だ。だからこそ果たせる責任もあると思う」と発言した。(引用終り)
という謎の発言をしているのである。同年の気候変動サミットでは
「気候変動のような大きな問題は楽しく、クールで、セクシーに取り組むべきです」と発言し、けっこう話題になった。翌年の衆院予算委員会においては「『反省の色が見えない』というのは、まさに私の問題だ。なかなか反省が伝わらない自分に対しても反省をしたい」
といった謎構文が結構話題になっているのである。
小泉構文と言っても父親の純一郎氏はまた別で、構文にすらなっていない。ワンフレーズのオンリーで語っているので、特に構文としてどこかにその話が発展することも全く無い。それに対し進次郎氏は、自分が言った言葉を言い換え、そのまま自分に戻してくるという特殊な構文を使っている。これをもって小泉進次郎はバカだと言う人が結構いるのだが、彼の頭が悪いかどうか、筆者は一概には言えないと思っている。
理由を説明しよう。小泉パパはポジションを取って煽り、架空の対立構造を生み出して自分のポジションを上げていくスタイルであった。これを真似て登ったのが橋下徹氏だ。橋下氏も架空の対立構造、二重行政というものを敵と見做したが、全ての行政は本来何重にもなっているわけで、敵でも何でもない。それなのにそれがあたかも悪であるかのように騒ぎ立て、自分こそ正義というポジションを上げてきた純一郎・橋下徹スタイルは、架空の対立構造を生み出してはそれを煽る形で政界を登ってきたのである。
ちなみに橋下徹氏に憧れているという石丸氏も同じスタイルだ。市議会の地方議員と自分が対立しているかのような構図で自身のポーズを作り出し「恥を知れ」という決めゼリフで煽る、というやり方で人気を得ていく。言ってみればこれはプロレスを見ているようなもので、プロレスを見るような層にとってそういう戦いは「面白い」のだ。だから「戦っているように見える政治家」というのが一般庶民からするとカッコよく見える訳なのである。面白い、というか面白く見える、戦っている姿(ポーズ)が清々しいという風に見えてしまうのだ。
本当に真面目な政治家であれば、政策の話とか新しい法案で何条何項がどうなっている、みたいな話を結構するだろうが、それは「つまらない」のだ。架空の対立構造がさも存在するように見せながら、分かりやすい一言で煽っていくスタイルの方が人気は出やすい。ただし存在しない対立構造を煽っているので、無駄に人を傷つける可能性があるのである。
かたや小泉進次郎氏のケースはどうか。筆者は以前から、彼は本当にバカなのだろうかとずっと考えていた。バカだったら簡単に、右に寄るか左に振るかのポジションを取って他者を攻撃すればいいのである。しかし彼は相手を攻撃しない。相手を攻撃せず、自分の不用意な発言が右派からも左派からも叩かれないようにするにはどうしたらいいかを考えた上で、自分の発言は全て自分に回帰してくるという、特殊な「進次郎構文」を生み出したのではないか、と筆者は考えている。
以上、石丸構文が話題となった事で奇しくも小泉進次郎氏のポジションが段々上がってくるという不思議な現象に見舞われたこの機会に、各人の政策や思想の是非はさておき、大衆に訴えかけるスタイルの違いに着目して考察してみた「雑感」である。
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