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【葉梨元大臣とオヤジギャグとローカルネタ】
ローカルのクローズドなソサイエティにおいて、ウケる鉄板ネタが外から見たら寒いということがある。
奈良から大阪に出てきたときは、そもそもおとなしい子の私に対して先輩が顔を合わせるたびに面白いことを言うように強要するので、毎回ネタを仕込んで行った。面白いことやるまで、放してくれないのだ。
ところが、大阪から東京に出てきたとき、大阪の人なら絶対に喜ぶようなリアクションが東京ではドン引きされる。大阪だと、わざとボケるとみんな喜んで突っ込んでくる。ニコニコしながら「美しすぎてすみませーん」というと、「ふざけんな!」と突っ込まれてそこから仲良くなるんだけど、東京で同じことを言うと頭がおかしい人にしか見えない。
これが元法務相にも言える。
法務相、外務相が「票も金も集まらないポジション」というのは有名で、このポジションだと誰もパーティーに来てくれなくて、大臣に出世しても忙しくなるだけで事務所の運営経費に困るという現象に陥る。
問題の発端は、政治家を務めるのに「金がかかり過ぎる」ということに起因しているのだが、その現状は打破できない。下っ端議員を務める間に、貧乏事務所は人件費もギリギリで下手すれば赤字、世襲で地盤がないとやっていけないシビアな世界だ。(皆さんの好きな保守政治家もピーピーで泣いているので、皆さん、パーティー券くらいは買ってあげましょう)
そういう政治家のお寒い現状を知っている人の間では、「ご存じの通り、法務相というのは金も票も集まらないポジションです」というのは鉄板のローカル自虐ネタで、みんながウケるところだ。
ここまではローカルネタで鉄板。
ここからは若い女性が嫌うオヤジギャグの世界だ。
「法務大臣なんて死刑のハンコを押した時しかメディアで報じられない地味なポジション」
これもある意味、法務大臣の現実を表した自虐ネタで、下手すると超凶悪犯の死刑のハンコを押せば、自分の名前が報道されて超凶悪犯の手下に命は狙われるのに金はないという最悪の展開が待っている。
そういう意味で、麻原彰晃の死刑のハンコを押した上川陽子元法務相は、彼女は自分の残りの人生を一生追われるリスクを取ってハンコを押した勇気ある人だ。男たちは、逃げてきたのだから。
どちらかというと、後者のオヤジギャグが今回は的になっている。
皆さんもご経験があると思うが、ウケると思った冗談を言ったら若い女性に嫌われたという展開だ。(私もある)
くだらないオヤジギャグを連発する私ですら、女性の前では大人しくしている。それは、女性に嫌われたくないからだ。
オジサンの間ではウケるはずのオヤジギャグが、若年層や女性には「デリカシーがない」ととらえられる。わざわざ「死刑」をネタに自虐ネタを作るリスクを取る必要はないと思うが、オジサンゆえに気が付かなかったのかもしれない。
仮に自分の娘が冷たかったら、自分にそういう要素があると思った方が良い。私も失言から、妹や親友から冷たくされるという措置で鍛えられてきた。
問題はここからだ。
クローズドの会合での自虐ネタが報道されて辞任にまで結びついているのは、これは仕掛け人がいるということだ。
よくあることだが、自民党議員のスキャンダルは秘書や関係者がメディアにリークして叩かせる。
自民党内では、それほど岸田政権を潰そうという動きが激しくなっているということで、安倍元首相を失い、岸田首相が二階外しに踏切り、保守派リベラル共に大御所が消えたところで中堅どころの闘いが始まっているとみるべきだ。
ここから日本の政治は混迷を極めるだろうが、冷静に考えると小中学生のころは首相の名前が覚えられないほど転々と変わっていた。
日本の問題は、オヤジギャグ以上に、「カッコいいリーダー」を育てる土壌がなかったことなのかもしれない。