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国民玉木代表「103万円の壁引き上げ」論争。会計士山田真哉氏参戦で「社保計算」へ!? 結局、損か得か?金持ち優遇策か?

2024/11/06

www.youtube.com/watch?v=ytrFL5uClvk&t=2s


最近論争を巻き起こしている「103万円の壁」問題である。国民民主党の玉木代表が「103万円の壁見直しは恒久的な措置としてやっていきたい」と発言したことが、この議論の発端だ。

玉木氏は103万円の基礎控除を178万円まで引き上げることを提案しており、これに対して「庶民の味方だ」という意見がある一方で、「実際は金持ち優遇の政策だ」と批判する意見もある。年収により減税額に大きな差が出ることがあるからだ。

基礎控除を178万円まで引き上げた場合、例えば年収200万円の人の減税額は3万7500円だが、年収1000万円になると17万2500円、年収4500万円では33万7500円になる。このため「結局、金持ち優遇ではないか」という批判があるのだ。

また、財務省も「7兆8000億円の財源をどう確保するのか」「住民税が4兆円減少してしまうが、その補填をどうするのか」「地方交付税をどうするのか」などの課題を上げている。

ただ、一般の有権者の間では「103万円の壁」ではなく、「106万円」や「130万円」の壁の方が問題視されており、主婦にメリットがあるのか、学生に有利な制度になるだけではないのかといった懸念も存在する。

この点について、「オタク会計士」の山田真哉氏がX(旧Twitter)で解説している。山田氏によれば、社会保険料が手取りにどれだけ影響するかを具体的に計算したそうで、年収ごとの手取り率の変化が示されているのでご紹介したい。

まずは、配偶者の年収の壁だ。
※表『「配偶者の年収の壁」夫:会社員(年収800~500万円)、妻:パート、都市部の場合』を参照。ここでの手取り率には、夫側で受ける配偶者特別控除等も加味されている。

現行の制度では、例えば年収100万円の場合は手取り率111%となる。100万円超103万円以下だと住民税や雇用保険が発生するので約110%、103万円超106万円未満はさらに所得税も発生するが同じく約110%である。

しかし、106万円となると、従業員50人超の企業の場合は社会保険に加入する必要が発生し、手取り率が94%に落ちるのだ。さらに130万円では夫の扶養から外れるので全員が社会保険に加入する必要が生じ、手取り率は90%に下がる。そして150万円では配偶者控除が逓減し、手取り率は87%まで低下する。

この計算でいくと、178万円まで収入が増えると手取り率は81%まで低下するのだが、玉木氏の提案する基礎控除引き上げを行うと、手取り率が91%まで回復するとの試算である。

次に、扶養家族である子供の場合だ。
※表『「扶養家族の年収の壁」親:会社員(年収800~500万円)、子(23~39):バイト、都市部の場合』を参照。

年収100万円の場合は手取り率91%、103万円では90%だが、103万円の壁を超えると一気に79%まで低下する。106万円になると84%まで回復するのだが、130万円で82%になり、178万円ではまた79%になるのだ。

この場合でも、玉木氏の提案する基礎控除引き上げを行うと手取り率が92%まで回復するため、結果的には「お得」になるとのことだ。
詳しくは山田氏のXをご覧いただきたい。

基礎控除の拡大が損か得かは微妙なところだ。働きたい人にはインセンティブを与えるが、高所得者まで基礎控除の引き上げによって恩恵を受ける必要があるのかどうかは、たしかに議論の余地はあると思う。

今回の基礎控除の178万円への引き上げ案は、その金額がどこから来たのかは分からないが、財務省出身者らしい絶妙なバランスを狙った数字であると感じる。103万円の壁を178万円に大幅に引き上げることで、最低賃金(全国平均時給)の約1050円で週20時間働いていた人が、週30時間程度まで働けるようになる。

そうなると企業の人手不足も解消されるし、低所得者から高所得者まで恩恵を受けられるため、多くの人がメリットを感じるだろう。そして、年収178万円まで働いても所得税が免除される反面、約16%の社会保険料の支払い義務も発生するので、結果的には社会保険料収入が増え財務省にとってもメリットがあるのではないか。

しかし、先日の衆院選で主要政党が最低賃金を1500円にという公約を掲げており、最低賃金1050円程度なら週30時間働けても、1500円まで引き上げられると週20時間までしか働けなくなる。それを考えると損なのか得なのか判断が難しいラインを狙っているように思われる。繰り返しになるが、この178万円という数字は絶妙だ。

この件について経済学者の原田泰氏と話をしたが、原田氏も社会保険料の負担割合の方が重いのではないかと指摘している。

しかし、実は106万円の壁や130万円の壁に対応した「年収の壁・支援強化パッケージ」という助成金が昨年から始まっているのだ。

実際にこれを利用したという方を知らないので実態は分からないが、厚生労働省の説明によると、パートやアルバイトで働く人々が106万円の壁を超えないよう就業調整することに対して、企業に助成金を出すということである。

例えば103万円の壁を少し超えて104万円で働くと約16万円の社会保険料が発生し、手取りが約90万円に減ることになる。その保険料相当額を企業に支給し、手取り収入を減らさない取り組みを実施した企業に助成するという制度である。これにより、働く人の手取りは106万円まで維持されるという。

このような複雑な仕組みにするのであれば最初から徴収しなければよいと思うのだが、ともあれ「106万円の壁」を取り払うための国の対応は成されているということだ。

また、「130万円の壁」にも「キャリアアップ助成金」というものがある。130万円以上働くと国民年金・国民健康保険に加入するため就業調整してしまうことがあるが、年末年始など繁忙期に残業が発生し一時的に収入が上がった場合、事業主がその旨を証明することで引き続き扶養認定が可能となる仕組みだ。これにより、繁忙期のみ一時的に収入が増加した際も扶養から外れずに済む。

主婦の方々が繁忙期の影響で170万円近くまで働いた場合はどうなるのかなどの論争は出てくると思うが、「106万円の壁」や「130万円の壁」対応を維持していくと、これらの壁のデメリットを受けずに働き続けることができるのかもしれない。

制度が新しいため詳細な運用が見えていないのが現状だが、最大限の恩恵を享受できるよう国が制度を維持すれば、利用者にとってメリットがある可能性もある。

それよりも「130万円の壁」について、既婚者には社会保険料の加入を義務づけないといった抜本的な改革も一つの方法である。昔は既婚者がパートに出ることが少なく、主婦から社会保険料を徴収しなくても国はやっていけていたのだ。

それがなぜ、いまはできないのか。高価な薬を買わされて、それがパーティー券に代わっているのではと邪推してしまう。製薬会社の利益が過剰ではないかと思ってしまうのだ。


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