補助金終焉で電気代46%高騰!?新電力倒産撤退は2年で7倍の悲惨なウラ事情!
2024/05/31
https://www.youtube.com/watch?v=mmwXBHoVBRc&t=2s
今日は皆さんに毎日新聞の報道からお話したい。
『6月の電気代は最大46.4%上昇 補助金終了、再エネ付課金は負担増』という非常にショッキングなニュースだ。6月使用分(7月請求)の家庭向け電気料金が大手電力10社全てで大幅に値上がりする見通しとなったことが22日に分かった。価格を抑える政府の補助金が、6月使用分から廃止されるため。前年同月と比べ、関西電力では46.4%、九州電力では43.8%の上昇となる。
再生可能エネルギー普及に向け、電気料金に上乗せする賦課金が4月に引き上げられたことも影響した。その他の値上がり率は中部が25.1%、東京が20.9%、四国が20.1%、沖縄が19.4%、東北と北陸が17.5%、北海道が17.2%、中国が14.4%となる。
これはとてつもない数値だ。 46%上昇とは、半分ではないか。
北から見ていくと、北海道の上昇率17.2%、東北17.5%、東京20.9%、中部25.1%、北陸17.5%、関西46.4%、中国14.4%、四国20.1%、九州43.8%、沖縄19.4%。
関西電力と九州電力がなぜ(40%超)かと思うが、補助金終了と再エネ賦課金の負担増から大幅に料金が上がった。補助金の打ち切りもそうだが、賦課金も負担の原因である。
電気代がかなり上がっていて、家庭の新電力離れが取り沙汰されている。5月25日の日経新聞のニュースでは、家庭向け電力小売りでは新電力会社から大手電力会社に移り始めており、新電力は苦境に立たされているとの報道である。新電力はまさに苦境にさらされている。今年の3月末の帝国データバンクの発表では、新電力の撤退・倒産は2年で7倍という事態になっている。
これまで皆さんにお話をしてきたが、エネルギー調達市場にはFit(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)という仕組みがある。
経産省は新電力会社が電力市場で電力を買い、供給するだけで利ざやを稼げるという仕組みを作り、「さやを抜くだけの簡単なビジネスなので、新電力はたくさん参入してほしい」と大々的に宣伝をした。新電力は「発電設備も発電所も不要で、送電網も引かず、参入するだけで利ざやが稼げる美味しいビジネスがあるのか」と大量に参入した。
ところが2020年末ぐらいから電力市場の価格が高騰し、逆ざやで新電力が倒れることがあり、ロシアのウクライナ侵攻あたりから逆ざや現象が何度も起きた。
Fitには契約者に納品(電力供給)をしなければペナルティ(罰金)が課せられる制度がある。新電力が逆ざやでの電力購入を見送っていると、電力を供給していないとして罰金が課され、次々に倒産していったことを以前お話した。その倒産がこの2年で7倍になるという悲惨な状態である。
一般家庭にすれば、大手電力の方が、価格が安定し信頼できるので、新電力から大手に契約を移す家庭が増え、新電力会社の倒産、撤退が続いている。
新電力の撤退、倒産の急増には容量市場にも要因がある。電力関係者によると、今年から容量市場が始まり、その市場のオークションが新電力会社に大きな負担になっているということだ。
今までは新電力が大手電力会社の余剰電力を電力市場で買い、一般家庭に流して利ざやを抜くだけのビジネスだった。しかし今は、電力価格が安定せずに跳ね上がり、逆ざやになるという現象が始まり、これに追い打ちをかけたのが容量市場である。
新電力は電気代プラス容量市場で容量を買わないといけないという決まりになった。容量市場とは「電気が欲しければその分だけ大手電力会社の電気設備の投資費用を負担しなさい」というマーケットである。
経産省は「容量市場とは将来の供給力を確保し、未来を守るための市場であり、海外でも多く取り入れられている」とすごくよいイメージで紹介し、「日本も2024年から導入する」と説明をしている。
卸電力の市場が始まったことは大手電力には決してハッピーな出来事ではなかった。太陽光パネルが増加したことで、新電力会社がたくさん参入してきて、大手電力の売上が減少し、電力事業が安定した収益ではなくなってしまった。
最近の日本の電力は一番暑い時と寒い時のピーク時が逼迫しており、供給が足りていない。理由は、太陽光パネルが増え、大手電力の採算が合わなくなり、徐々に発電設備に投資をしなくなったことによるものだが、国は大手電力に対して安定した電力供給が可能な火力発電への投資を求めている。
経産省は大手電力に対し「最近、電力が足りていないのに、なぜ投資をしないのか」と言うのだが、「あなた方が卸電力市場の様な余計なことを始めて私たちの収益を圧迫している。しかも太陽光パネルは昼しか発電しない。夜の足りない分は火力で賄えとは冗談ではない。原子力発電も再稼働させずにいい加減にしてほしい。」という話だ。
そうなれば国も何とかしなければならなくなり、「では、発電設備を投資する資金を調達する市場を作り、負担は中小零細にやらせましょう」といって新市場を発明して導入した。
新電力はただでさえ卸電力市場の逆ざやで赤字になりフラフラなうえに、謎の容量市場で大手企業の投資資金を中小が補うという地獄のビジネスが始まった事により倒産はしないが、やる意味がないので撤退しようというムードになっている。
新電力が参入できる卸電力市場やFitという仕組みは、最初の制度設計でミスを犯した。
「卸電力市場で大手の余剰電力を買って利ざやを稼ぐだけの簡単なビジネスが新電力だ」とは言ったが、大手電力がそれに賛同できないというので、経産省は大手電力の同意を取り付けるために、「電力市場の価格高騰時に新電力が卸電力を買わず、一般家庭に納品しない場合には、大手電力は新電力にペナルティを課してもよい」というルールを作った。新電力が契約している家庭に電力を納品しない場合、大手電力が代わりに電気を流し、その請求額を新電力にペナルティとして課したのだ。
卸電力の市場は大手電力の余剰電力でできているので、大手電力が発電量を控えると余剰がなくなる。燃料価格が高騰して赤字になる場合は、控えめに発電するのかもしれないが、新電力を潰すために意図的に行っているとも考えられる。その真相は分からないが、いずれにせよ、卸電力市場で電力価格が高騰して新電力が逆ざやになったのは事実だ。
新電力は高騰した電力を逆ざやで買って納品すれば会社は赤字になる。高くて買えなければ、大手電力からペナルティの請求書が届いて倒産する。ここ数年この事態が相次いだ。そしてこれに容量市場がとどめを刺した。
経産省が作った制度には欠陥があったのにもかかわらず、その欠陥をさらに強化して新電力を潰すのは全くひどい話である。このようなことから新電力はやる気をなくしたと、電力事業者の方から聞いた。
産業遺産国民会議専務理事の加藤康子先生は太陽光パネルに反対されている。太陽光パネルが増えれば増えるほど賦課金の価格は上がる。大手電力は太陽光パネルの増加で、自分たちの収益が確保できなくなり、発電所等に設備投資ができない。昼はよいが、夜は足りなくなる。夜の足りない電源を確保するための発電所に投資はするが、投資をしても収益が見込めるかどうかは分からない。
経産省は、勝ち組の生まれない制度を作ってしまったのである。
【お知らせ】
東京講演
・6月15日(土曜日)14時開演16時まで
星稜会館
『弁護士が解説する自民党の危険な憲法改正案』
参加費2000円
https://peatix.com/event/3903585/
・6月23日(日曜日)13時半開場 14時開演16時まで
ビジョンセンター赤坂6F VisionHall
経済アナリスト森永康平氏×深田萌絵
『積極財政で日本経済は成長できる』
13時半 開場
14時 開演
森永康平氏「積極財政で日本経済は成長する」
15時 パネルディスカッション&質問タイム
深田萌絵 × 森永康平氏 「給料成長には経済成長だ!」
16時 書籍販売タイム
16時半 閉館
参加費3000円
https://peatix.com/event/3964898/
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