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水俣病から学べない熊本の環境ペテン

2023/07/10

https://www.youtube.com/watch?v=rSAK-qdoj8w&t=957s


■ 水は減っていないとグラフでごまかす

現在の熊本が、今後どの様に環境対策を取っていくのか。県の中で話し合っているが、その委員会資料の中で少しおかしな事が起こっている。

どうやら環境保護運動活動家から企業の利益を守る為に熊本県環境法の立てつけを歪めようとしている。最近、熊本では半導体関連企業、特にTSMCを中心とした開発が行われているが、どうも熊本は水俣病から何も学んではいない様な流れができている。

24時間工事をやっているが、住民に対してろくに説明もされていない。騒音公害も酷く、TSMC工場の建設が始まってからほどなくして、近隣の井戸水が干上がってしまう事件があった。
それにもかかわらず、熊本県側は、県会議員に対して菊陽町の水は減っていない、熊本の水は減っていない。むしろ増えていると説明している。

県の環境経済常任委員会から資料が出ている。熊本地域の地下水の現状、常任委員会で発表されたオフィシャルレポートがある。

地下水位は長期的に低下傾向にあり、江津湖の湧水量も減少傾向にあった為、平成16年度以降、白川中流域等で人工的な地下水涵養を開始した。

現状の県の観測井戸の水位の多くは回復傾向にあり、現状の取水量と涵養量のバランスを確保し、地下水を持続的に使う仕組み作りが必要と書かれている。

県議会議員が県に、菊陽町で地下水が減っている件を質したところ、県はその様な事はない。地下水は増えているという根拠を示している。

「菊陽町辛川観測井水位」
この菊陽町の観測用の井戸の水位は、平成1年から17年度にかけては減っているが、平成17年から令和4年にかけては増えているとの説明だ。

説明用の図に違和感を感じる。平成1年のグラフの山の頂上と、平成17年の山の谷、平成17年の谷から令和4年の山の頂上に繋がれている。この図を、よく見てみると増えたり減ったりしているが、いかにもV字回復をしたかの様に線が結ばれている。
この様な線の結び方は統計的にはありえない。この観測した数値に対して統計的に回帰直線を引き、それを示すと言うのなら解る。山―谷―山と線を結んでV字回復しているかの様に見せかけているとしか見えない。

このような表示の仕方は、NHKや朝日新聞でもここまではやらない。あたかも菊陽町の観測井戸での推移がV字回復していると言いたげだ。専門家に任せれば回帰直線を引くべきところであろう。


■ TSMCのために法律を変える

TSMCは環境影響評価法に基づいてのアセスメントをやらないのか。工事の計画をちゃんと開示して、その工事計画がどれ位周囲の環境に影響があるのか。水を取りすぎて水が減ったりしないのか。工事が突貫工事すぎて騒音公害が出ていないか。

環境影響評価法に基づくアセスメント、俗に言う環境アセスと呼ばれるものがある。通常だったら6カ月から1年位掛かる。なぜかTSMCの子会社のJASMだけはそういったことをやった様子もなく突然工事が始まった。 住民説明もろくに行わずに24時間工事が行われている。

一応、住民説明会はあったようだが、参加した人の話によれば、茶番の様な説明会で、質問には何も答えないと不満の声が上がった。

何故、環境アセスメントをやらないのかと地元の不満が溜まった所に、なんと熊本県は、環境アセスメントの要件緩和をしようと言い出した。

現在は、環境アセスメントを行う工場や施設の規模は、全県で面積50ヘクタール以上が対象である。さらに地下水保全地域、 菊陽町など地下水を保全して行く地域では、25ヘクタール以上の面積の建物や、工場を建てる場合には、きちんとアセスメントすると言われている。

地下水位の資料。人工的に涵養をすれば地下水の量が増えたと、先ほどの資料から熊本県は主張している。工事をして地下水が減るのではなく、涵養を人工的に増やすから、地下からくみ上げる分の涵養を作ればよい。環境アセスメント要件を緩和しても良いのではないかと言い始めたのが、先月の6月21日頃の環境経済常任委員会での話し合いにおいてだった。

この「環境アセスメントに係る地下水涵養誘導策」は、地下水採取量プラス開発による涵養減を超える、地下水涵養に取り組む面的開発事業においては、県の環境影響評価条例の規模要件を緩和するとなっている。

開発したら地下水をくみ上げるので地下水が減る。しかし、それと同じ位の地下水を超える涵養を人工的に作るのであれば、アセスメントの要件緩和をしてもよいということだ。

全県面積50ヘクタール以上、地下水の保全地域においては面積25ヘクタール以上の所ではアセスメントをしなければいけなかった。

今後、この改正案が通ってしまえば涵養さえ作ると宣言すれば、アセスメントしなくてよい事になる。アセスメントの要件緩和が合法化されてしまえば環境保護活動家からの企業への利益を守る方向に熊本県は舵を切った、とんでもない状態だ。

人工涵養を作ったとしてもどれ程の水が入るのか解らない。それをどのようにして証明するのか。涵養を作ったはいいが、入ってくる水は一体どこから引き込んでくるのかは誰にも立証できない。採取した水量を人工的に涵養を作ることで取り戻せるのかは未知数なのだ。

毎日1万2000トンもの水を汲み上げて、その水は一体どこから持ってくるのか。TSMCも工場が始まっているので、例えばこの改正案があったとしても、その後に熊本に、毎日何万トンも汲み上げる工場がやってくる。そうすると毎日何万トンも汲み上げて、その分の水が涵養を作ったから大丈夫と言われても、その分の涵養があっても、そこに入ってくる水はどこから来るのだと疑問に思っている地元の人が結構いる。

これは、ある種の環境ペテンだ。環境保護をやっているように見せながら、企業が工場の計画を開示しなくてもよいなど、要件を緩和し企業が好き勝手出来る様に熊本県が誘導している様にしか見えない。そして環境経済常任委員会の同じ資料に、こんな資料があったのかと言う資料が入っていた。


■ 公害が起きたら国民に負担させる

それは、水俣病の原因となったチッソだ。 チッソ株式会社に対する金融支援の仕組みが掲載されている。チッソが被害者に対して支払うお金があるが、チッソが患者や被害者に対してお金を支払ったら経営が危機に陥ったので、国の要請を受け、県が昭和53年から患者への補償の資金不足を補うために、県債を発行し、チッソに貸し付けていると書かれている。

平成7年は一時金県債。平成7年政治解決に基づき、チッソが支払う一時金の資金を水俣問題解決支援財団から貸付けるための出資金、国85%県15%に関わる負担金分について県債を発行した。特別県債、平成12年チッソ金融支援抜本策によりチッソは経常利益から可能な範囲で県へ債務を返済し、約定償還に不足する額について、8割の支払い猶予し2割については特別県債を発行しチッソに償還のため貸し付けている。

平成22年一時金県債、水俣病被害者救済法特措法による救済に基づき、チッソが支払う一時金の資金を財団法人水俣芦北地域振興財団から貸し付けるための出資金にかかる県負担金分について県債を発行した。水俣病の補償がされて熊本県の皆様良かった。チッソはきっと反省していると思われた。だが、保証金は私たちの税金で賄われていた。この様な事が書かれている。

チッソのこの件が、県が発行している債券で賄われたが、これは税金ではない。県が債券を発行して資金調達し、そこから得たお金をチッソに貸している。そしてチッソが返せない為、この資金繰りを助けるために国と県が助けていると書かれている。

この事から国は政府と企業が癒着すれば、いくらでも環境汚染をし、国民や県民に対し健康被害を与えても、国と県が手を組んで企業の損失を補填する。この事から国も政府も企業も環境問題について反省することはない。これを主導したのが萩生田議員だ。TSMC誘致を決定したのは、時の経産大臣萩生田議員である。

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