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【投資危険】GMクルーズ殺人ロボタクシー終了でホンダは提携解消? Google・テスラとの違いは〇〇だ!

2024/12/14

/www.youtube.com/watch?v=LuXKRjySeJs&t=748s

今日(12月14日)のニュースではないが、アメリカのゼネラル・モーターズ(GM)が傘下のGMクルーズと手掛けてきた自動運転の無人タクシー事業を「安全なサービスの開発に難航している」という理由で撤退するという報道があった。

JBプレスからも後追いで『ロボタクシー、なぜテスラやグーグルは推進しGM・ホンダは撤退するのか・・・ITとクルマでまるで違うコスト感覚』というニュースが出ている。このニュースは、なかなかよい視点で面白い。

そもそものコンセプトが自動運転を進めるために車を作るのではないということだ。イーロン・マスクのテスラという自動車メーカーは、自動車を作るという発想ではやっていない。そんなテスラとITの大手Googleが進めているのに、クルーズはなぜ自動運転事業を撤退してしまうのか。
 
拙著『EVの終焉とエネルギー利権の戦い』でも紹介したが、GoogleのウェイモとGMのクルーズが無人自動運転タクシーの試験運転を始めてから、昨年の10月にサンフランシスコでクルーズ社の無人自動運転タクシーが人を轢き殺すという事故を起こした。しかも轢いた後にその女性を何十メートルも引きずって、停車したと思ったら女性の上に止まってしまったのである。
 
EVはバッテリーが重いので普通の車よりも重い。そんな車が女性の上に停車するという事故を起こしたのだ。その後、クルーズ社はカリフォルニア州から営業停止命令を受け、同社はアメリカ全土でサービスを停止していた。
 
今回、GMはついに自動運転事業から撤退した。今後は自動運転の試験走行で得たデータを使い、これを運転支援の方に回すということで着地しそうである。

では、ホンダはどうするのか。JBプレスのニュースによると、ホンダは「12月10日にGMが発表した内容が正式決定すれば、ホンダはクルーズから手を引くことになる」ということだ。
 
「2026年から都心で計画していた実験は中止か?」という質問に対しても「正式決定していないが、本日GMが発表した内容が正式決定すれば、日本での3社ジョイントベンチャーによる計画は中止を含め判断する」と答えている。
 
「ホンダは独自でロボットタクシーの実用化を目指すのか?」という質問には「様々な技術の研究開発は行っており、今後も新価値提供に向けて検討を進めていく」ということだが、実際には難しいと思う。
 
なぜならホンダはまずEVがそんなに売れていない。ホンダが稼いでいるのはガソリン車とハイブリッド車、後は2輪バイクであり、EVは強くない。自動運転はどうかと言うと、これもそんなに強くない。
 
そう言うと身も蓋もなくなるが、今回クルーズ社が自動運転ロボタクシーをやめると発表したことは、日本で被害が出なくて済むというものすごい朗報なのだ。今の段階では、このまま計画がつぶれてくれる方が私たちの命にとっては安全である。
 
ホンダとクルーズとの提携解消は、ホンダにとっては決してネガティブなことではなく、無駄なお金が出ていかなくてよかったという程度の出来事だと思う。
 
JBプレスの記事の面白いところは『GMが撤退する一方で、ウェイモやテスラなど一部の企業はなぜロボタクシーに注力し続けるのか』ということで、やはりこれはデファクトスタンダードの戦いなのである。
 
自動運転の標準化でライセンスビジネスができると思っているのだ。前述拙著新刊にも書いているが、中国が自動運転で成功しているというニュースがものすごくたくさん出ている。
 
中国ではタクシーが足りないので、たくさんの中国人は無人タクシーに乗って、みんなが安くて便利だと宣伝されている。そういうことは宣伝されるが、中国では事故が起きて、人が死んでも絶対に報道されることはない。うまくいっているというニュースだけが出て、日本で報道され、世界で報道されている。
 
世界は、中国が嘘の報道を流しているのではないかと疑いつつ、多少の焦りを感じている。それで各国が自動運転の技術競争をすると、中国が各国の会社の自動運転の技術を盗んで、自分のところに応用するということを行い、エコシステムで回している。
 
自動運転の未来が来ると自動運転が儲かる。世界各国の自動車メーカーは焦って開発する。中国はそれを盗んで、先に実装する。他の国は法的な規制があって実装にまではいかないので、データが整わない。中国は人が死んでも構わないと思っているので、どんどん公道を走らせる。人が死のうが、どんな事故が起ころうが、それを無視してやり続けるのでデータもノウハウもかなり溜まってくる。だから、中国の方が早く自動運転のロボットタクシーを実装することができるようになったという流れなのだ。
 
中国はずっと世界で一番の自動車工場になることを目指してきた。私はずっとその警鐘を鳴らしてきて、2019年にはそのことを拙著『IT戦争の支配者たち』で書いた。このままEVを推進すると中国に取られるという話をずっとしてきたが、5年経った今、中国は世界で一番の自動車輸出国になってしまった。
 
そういう未来を止めようと頑張ってきたのだが、やはり日産などのEV技術が中国に流出してしまった。EVの自動車技術はコピーするのが簡単なので、中国に簡単にコピーされて、結果として、中国が世界で一番の自動車立国になった。
 
中国はEVと自動運転をセットにして自動運転の標準スタンダード、グローバルスタンダードとして売り込みたいのである。
 
グローバルスタンダードとして自動運転を世界に輸出するということは、通信規格を世界各国で実装するということであり、街にそのスマートシティの規格を入れるということだ。
 
中国の自動運転システムを日本で始めるということは、中国のスマートシティの規格を日本に入れて、日本人を監視するということだ。これがセットになっているので中国はいくらでも投資資金を入れてくる。
 
中国はこういう考えで自動運転を進めているのだが、ではGMが撤退して、Google、テスラが進められるのはなぜなのか。はっきり言うと、Googleはたくさん利益を出しているので、自動車で儲けなくてもいいと考えである。テスラも基本的には環境ビジネスなので自動車本体で儲からなくてもよい。しかし、GMやホンダは自動車で勝負しているので、自動車に力を入れないといけない。
 
規格ビジネスやライセンスビジネス、グローバルスタンダードという世界の戦いでは、ホンダは全く優位性がなく、ここで戦うことは自殺行為だと思う。GMも同じで、自動車産業はITビジネスにはなれない。なぜなら、自動車は単なるハードウェアではない。ハードウェアだけでなく、メカニカルな機構が入っているのである。
 
Googleのような会社はソフトウェアが強い。ハードウェアではサーバーを開発ししているのでハードウェアも強い。しかし、ソフトウェアとハードウェアの強みだけは車の世界はやっていけない。
 
Googleはロボットタクシーを推進しているのだが、本当に儲けたいと思っているところは規格の部分なのだ。それはテスラも同じである。テスラは今後もEV事業をこのまま続けるとそれほど儲からないと思う。実際にテスラのEVはあまり売れていない。最近は失速がすごく、このままではテスラ自身が危ない。
 
自動運転の世界が始まると、先駆けて始めた方が先に市場を取れる。テスラやGoogleはそういう部分を狙っているのではないか。
 
ただし、これは諸刃の剣である。なぜなら事故を起こした時のライアビリティが高すぎるのである。損害賠償などを請求されることを考えると、メーカーとしては非常に危険なのだ。今まで自動車メーカーはそのようなライアビリティの部分、責任問題で賠償責任を負うと「これは運転している人の責任」ということで車を売り続けることができた。
 
しかし、自動運転はAIを開発した開発者の責任なのか、自動車メーカーの責任なのか、明確ではない。事故が起きた時にセンサーが認識していたのかどうなのか、そのセンサーから出てきたデータをAIは正常に判断したのか、それが正常と判断された結果、ブレーキが適切に踏まれたのか等々、色々なステップを踏む。事故がどこでどのようなきっかけで起きたのかという検証が非常に難しいのである。
 
こういうことを考えるとユーザー側、事故にあった側からすると「自動車メーカーが悪いのではないか」となってしまう。
 
自動車メーカーは販売している側の責任があるので、下請け先であるAIを作った会社、センサーを作った会社等にどこに問題があるのか追及していく。しかし、これに時間がかかると、その間も事故がどんどん起きる。人が死ぬたびに訴訟をされることを繰り返すと、企業の体力が持たなくなるリスクがあり、会社のイメージも悪くなる。
 
そういうことを考えると、今回GMがクルーズ社への投資を引き上げて、クルーズ社で培ったノウハウを運転支援に活用するということは妥当な判断である。
 
Googleやテスラは山気があるので、中国と同じように次のグローバル スタンダードを獲得するという別の視点でビジネスを考えている。ホンダにそのようなビジネスができるのかと言うと、絶対にできない。
 
グローバルスタンダードを作るということはものすごくエネルギーがいる。年間に何人も学者を送り込んで、標準化学会などにずっと貼り付ける。これに関してはドイツ、韓国は国家予算がついている。中国もつけており、必要であればスパイも送り込んでくる。アメリカはロビイストをたくさん雇っている。ファーウェイもたくさんロビイストを雇っている。
 
では日本がそこまでできるのか。日本にはそのような習慣がなく、日本人はグローバルスタンダードを作ることに非常に弱く、交渉も弱い。ホンダにとってはその道を進むということは、茨の道を歩むことになるのではないか。


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