世界で興行収入200億突破「名探偵コナン」から見る【腐女子・夢女子人気とコンテンツの寿命】
前回の記事で「腐女子・夢女子人気とコンテンツの寿命」について書きました。
今回は、劇場版の上映スタートから25年以上経過(2023年)して興行収入100億円突破を果たした「名探偵コナン」シリーズを題材に、コンテンツ寿命の重要な要素である「カップリング」について見ていきたいと思います。
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2024年公開の劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』は6月末で150億円を突破し、シリーズ歴代1位の興行収入を記録。また8月から公開が始まった中国でも約2週間で40億円の興行収入を記録。すでに8月末の時点で台湾では約10億円、韓国では約7億円、アジアで200億円の興行収入をあげており、さらに記録が伸びそうです。
劇場版「名探偵コナン」について
1997年上映の『時計じかけの摩天楼』から年イチで制作されている人気シリーズ。
同じファミリー枠映画である「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」と比較して、なぜ「名探偵コナン」だけ爆発的な人気となっているのでしょうか?
赤井秀一と安室透が大活躍するバディストーリーで腐女子ブレイク!
ファミリー映画からの進化
劇場版「名探偵コナン」ブレイクの鍵は、やはり2016年に上映された『純黒の悪夢(ナイトメア)』でしょう。
イケメンキャラを単独で登場させるだけでなく、そのイケメンと他の男性キャラをカップリングさせる——過去の因縁をもつ赤井秀一と安室透の関係性が腐女子の間で一躍話題に!
また、劇場版放映20周年を記念してシリーズ初の映画入場特典を頒布するなどの後押しもあって、興行収入が前年比で3割増加という大ヒットを記録。
これをきっかけとしてオタク層とファミリー層を同時に狙える稀有なコンテンツとなりました。
彗星のごとく現れた「赤安」で二次創作爆増!
腐女子にウケたことで二次創作の作品数が急激に増加しました。
特に「赤安」(赤井秀一×安室透のカップリング表記)タグの作品数が驚異の前年比5200%という赤安ビッグバン(!)が発生。
pixivやX(当時はTwitter)などのSNSで話題になったことで他ジャンルのファンの呼び水となりました。
カップリング表記研究家のタルトさんの調査も面白いです。
「赤安」「赤井×安室」「AKAM」「沖安」…これらは全て同じ2人を指すカップリング(「沖安」の判定は一部微妙な所ですが)で実質構成比は31%となり、一瞬でジャンル最大手に!
タルトさんの最新の調査でも並みいる強豪を抑えて6位に君臨していました!恐るべし赤安。
怒涛のグッズ展開
時を同じくして、コナンのグッズのラインナップに赤井さん(沖矢さん)と安室さんも頻繁に登場するようになりました。
2015年から開催されているコナンカフェのグッズの変遷を見てみましょう。
純黒の悪夢が上映された2016年、コナンカフェのメインビジュアルにいたのは赤井さんや安室さんではなく映画に登場しない平次や怪盗キッドでした。
コナンカフェは2017年から予約特典の配布を開始。
その年の劇場版の出演有無にかかわらず、赤井さんや安室さんのグッズ展開が一気に増加しました。
意外にも?原作ではほとんど顔を合わせていない2人ですが、お互いに抱えている秘密や過去の因縁など、腐女子が大好物であろう特別な関係性が見え隠れしています。
さらに、赤井秀一&安室透の関係性に特化した公式ファンブックや2人が一緒に温泉に入っている場面のピンナップポスターが付録についた雑誌が発売されるなど公式からの後押し(という名の燃料投下)もあり、爆発的に人気が広がりました。
「安室の女」で夢女子大量発生。だけど…?
「僕の恋人は…この国さ!」のセリフでお馴染みの『劇場版名探偵コナン ゼロの執行人』。
トリプルフェイスを使い分け、自身の正義を貫き悪の組織に立ち向かう姿に多くの女性が魅了され、「安室の女」という言葉が一躍トレンドに。
2018年、最も夢女子を製造した男性キャラと言っても過言ではありません。
しかし、奇しくも「赤安」の検索ボリュームが最も多かったのもまた2018年5月、映画が最も盛り上がっていた時期なのです。
『ゼロの執行人』で数多の夢女子を獲得したと同時に、本編で匂わせられた赤井秀一という存在に腐女子が燃え上がりました。
『純黒の悪夢』上映から8年が経過した今でも、映画放映の時期になると発作のように「赤安」の検索ボリュームが増えています。
まとめ
劇場版名探偵コナンは1997年の第一作の上映から一定の興行収入は獲得しつつも長らく停滞している状況にありました。
しかし、2016年から2018年、そして2023年と興行収入を伸ばし続け、ここ10年間でおよそ3倍までに成長を遂げています。
赤井秀一、安室透というキャラの人気と活躍っぷりと彼らのカップリング萌えが巻き起こしたムーブメントがコンテンツの人気を押し上げました。
原作の面白さやキャラの魅力はもちろんですが、ファンの熱量を持続させるためには二次創作などの活動も非常に重要となっています。
名探偵コナンは公式がある程度寛容であることも、一助を担っていると言えるかもしれません。
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