【前編】BLコンテンツの特異性を理解する 「その尊さはどこから来るのか?」
「BLって流行ってるけど受けのビジュアルはなんだか女性っぽいし、別に男同士でやる必要なくない?」とわれることがよくあります。
…いやいや、男同士だからいいのです!!たとえ見た目が女性でも形式的に男同士というのが重要なのです。
たとえば少年漫画、少女漫画では、本命ヒーローよりも人気のある男性当て馬が登場することがありますよね。しかしその人気と裏腹に彼の思いは成就せず、孤独に退場していくケースが少なくありません。
BLであれば、すかさず当て馬によき恋人(男性)があてがわれスピンオフがスタートするのですが、少女漫画で彼によき恋人(女性)が現れたらどうなるでしょうか?
BLの場合と打って変わって大炎上するでしょう。
作者、または読者の嫉妬が邪魔するのでしょうか、少年・少女漫画では、本命が本命と結ばれないことが少なからず起こります。そしてめでたく結ばれる場合でも、読者は口では「おめでとう」と祝福しながら、心に一抹のもやもや感を抱く場合が多いのではないでしょうか。
このように男女モノのストーリーは本命と本命が結ばれても、なぜかみんなが幸せになれるわけではない構造的問題を抱えていました。
そして、そんな問題を一気に解決してくれるシステムが登場したのです。
そこに現れたのが、誰もが幸せになれるシステム、BLです。
男と男がくっつくのであれば、男女で感じる嫉妬心を完全に排除でき、心の底から「おめでとう」といえるのです。
だからこそBL(BLシステム)は尊いのです。
BLの特異性について
BLの特異性とは、キャラクターを男性同士にすることで、キャラクターを少年漫画・アイドル的な視線で見る「客観性/観察」目線、TL的な視線で見る「主観性/自己投影」目線、この2つの目線を獲得できるようになったことです。
BLは少年漫画・アイドル、TLコンテンツそれぞれの要素を同時にカバーしていると言えるのです。
前半となる今回は「少年漫画・アイドルグループ」コンテンツとの特異性を解説していきます!
少年漫画、アイドル的な側面から考える
BLと少年漫画、アイドルグループとの共通点は主に3つあります。
壁目線
こちらの存在を知られることなく、戯れるイケメン男子を愛でたい、あわよくば妄想したいという気持ちです。
BLに興味がなくとも男性同士がわちゃわちゃしているところを見るのが好きだという人は意外といます。
若い女性を中心に絶大な人気を誇るK-POPはそこをうまく取り入れプロモーションしていますし、タイBLやK-POP以外の男性アイドルグループも仲の良さをアピールポイントとしているところが多い印象です。
イケメンがわちゃわちゃしている姿を見て妄想、そして物語の創造をすることができる能力は一見特殊に見えますが、実は女性の多くはこの力を持ち合わせています。
実体をもたないステルス観察モードとなり、自分は介入せずに妄想で楽しみます。さらに気持ちが強くなると妄想を具現化するための創作へ向かうエネルギーを発生させるのです。
対して男性にはこの妄想力と創作力があまり備わっていません。
例えば男性が美人2人が仲良さそうにしている場面を目撃しても百合関係を描いた妄想や創作という方向にエネルギーが向かうことはなく、女性の中に混ざろうとする自分と対象という関係で見てしまいます。
主体的・実行的に振る舞いたいという欲望を持っており、現実的・物質的な快楽を求める傾向にあります。
ケミストリー目線
推しを応援していると、推しをもっとも輝かせてくれるメンバーがいることに気がつきます。
たとえば少年漫画では、特定のキャラにだけ明らかに周囲と異なる態度を取るキャラが登場すると、もしかしたら好きなのでは?と妄想が広がっていくんですね。
~筆者の推し話①~
普段は何でもそつなくこなすイケメンキャラのはずなのに、特定の相手の前でだけ感情が高ぶって空回りしてしまうという設定が公式から発表されました。
また、アイドルでも特定の二人がプライベートで仲が良さそうに見えると、もしかしたら付き合っているかもしれない!と妄想が働きやすくなります。
~筆者の推し話②~
推しが弟のように可愛がっている後輩くんの高校の式典に出席したという実話があります。
推し、または推しとまでいかないキャラやメンバーでも特定の相手と絡むとより輝いて感じることを化学反応(ケミストリー)と呼びます。
男性同士の相性を敏感に感じ取り、あれこれと妄想をふくらませることが推し活を彩り、さらなる充実感へと導きます。
母親目線
一方、女性グループにおいてもケミストリー(仲良しペア)は存在するものの、推し方や創作への熱量は男性グループと異なる特徴があります。
目標に向かってひたむきに頑張る男の子を応援したい!という心理です。
推しを継続して応援していると、以前は苦手だったダンスができるようになったなどささやかな成長を見て楽しむことができます。
また、オーディション番組で合格デビューにむけて男の子たち皆が力を合わせて頑張る姿はとくに心を打つことが多いです。
ときに推しを「この子」と呼び、身内感覚で応援することがあります。
ときには良きライバル、ときには切磋琢磨する仲間となり、推しを輝かせてくれる他メンバーにも興味があります。
そのため、関係性や成長を見届ける過程でカップル推し、箱推しになる可能性が高くなります。
女性にとって推しが所属するグループとは推しを成長させてくれる場所なのです。
対して男性は推しのグループの中での位置づけや他メンバーとの関係性には興味がない、というかそんな概念を理解できないことが多く、どこまでいっても個人と個人の限定的な関係として捉えられています。
なぜ「わちゃわちゃ」はいいのに、「いちゃいちゃ」は許されないのか?
話はまったく変わりますが、推しアイドルが、男性とわちゃわちゃしていると心ときめくけど、女性とわちゃわちゃ(いちゃいちゃ)していると嫉妬の炎が燃え上がります。
これまで紹介した「壁目線」「ケミストリー目線」「母親目線」などという視線は木っ端微塵に吹き飛びます。
推しの笑顔は変わらず尊いのに…。
推しの笑顔は、隣に配置される人物によって、天使にも悪魔にもなるのです。
いかがでしたでしょうか?
後半は「TL」(+少女漫画)コンテンツとの特異性について解説いたします!
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