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推し活の本質とは? 紐解くキーワードは「解釈」「イマジナリー」

以前、「腐女子と夢女子の共通項」について書かせていただきました。
カップリング推しの腐女子とキャラ単独推しの夢女子はしばしば対立構造として描かれることがありますが、実際にはお互いの属性を併せ持っており、時と場合によって濃度が変化しているのです。

今回は夢女子は夢女子でも3次元に特化したアイドルオタクと腐女子の共通項について見ていきたいと思います。

共通点①とにかく推しに課金する

腐女子、ドルオタの共通点としてまず挙げられるのは、趣味に費やす金額が極めて高いことです。

2023年にちるちるがユーザーを対象に行ったアンケートではBLへの年間平均投資額は驚異の129,660円!
そして、同年に矢野研究所が実施した「オタク」に関する消費者アンケート調査では、アイドルオタクの年間消費額の平均は81,085円という結果となりました。

10代の「お金をかけたいものランキング」1位が推し活に!

さらに、今年の8月にSMBCコンシューマーファイナンス株式会社が発表した「10 代の金銭感覚についての意識調査 2024」によると10代男女のお金をかけたいものランキングの1位が推し活となりました。

特に女性に注目すると、推し活と回答したユーザーは53.8%にも上ります。前回調査で上位だった「美活」「ファッション」を抑え、アイドルやキャラクターにお金を費やす推し活ライフに熱中する女性が増えているようです。

共通点②自身の解釈を織り交ぜた「イマジナリー推し」を生み出す

腐女子もドルオタも一度ハマると趣味という枠に収まりきらず、自分の存在すべてを投入してのめり込んでしまうという特長があります。

推しは自分の人生そのもの!そんな推し活の本質は、ずばり対象の「解釈」を発生させること。
推していくうちに実体を基にした虚構、イマジナリー推しを作り出してしまうのです。

一般のアイドル、アニメファンはそのままの実体に対して「好き」「憧れ」といったシンプルな感情を持ち、自己完結で終わることが多くなっています。
一方、「推し活」といわれるようにお金と時間を惜しみなく投入するユーザーは推しのことを常に妄想し、考えています。
その愛が行きすぎるあまり、対象、つまりアイドルの実体や原作者が描いたキャラとは別に、本人の解釈を大いに加えたイマジナリーなキャラクターをしばしば脳内に誕生させてしまうのです。
そしてそれは実体よりもリアリティを持っており、フィルターを通して自身に都合の良いように動きます。

腐女子的な素養を持つユーザーはイマジナリー推しと仲の良いメンバーとの関係性を構築させて楽しんでいるのです。
こうした妄想を刺激し、「解釈」を発生させるジャンルはユーザーを熱中させ、時間とお金を大量に消費させやすいといった特徴があります。

共通点③推しを中心としたスピンオフ現象

推しとその周辺人物をイマジナリーに創造することで、さらなる妄想世界が広がっていきます。それがスピンオフ現象です。

ドルオタ・・・推しから派生するメンバーのスピンオフ現象

グループメンバー同士の仲の良さからイマジナリー関係性を誕生させます。

以前、アイドルグループジャンルに対するファンの見方は、絶対的トップ1人とその他引き立て役という捉え方でした。
「箱推し」という言葉はもちろん、グループの中で推しが輝くという概念すら存在していませんでしたが、SMAPを始めとするアイドルのバラエティ出演が増加したことでその概念は覆りました。
例えば木村拓哉さんや松本潤さんといった当時ひときわ目立っていたメンバーとそれ以外のメンバーが親しそうにしているシーンを目の当たりにすることでグループ内の関係性に目覚め、いつしかその他のメンバーのほうが推しになるという現象がしばしば起こりました。
歌、ダンスといった技術を見せるだけではこのようなスピンオフ現象は起こらなかったでしょう。
彼らの日常的な姿を見ることでイマジナリーキャラ同士の関係性の妄想が広がり、推し活をブーストするのです。

腐女子・・・主人公やメインカプから派生する他キャラのスピンオフ現象

主人公やメインカプを入口として他のキャラの魅力に気づき、推しになっていくパターンになります。

少年漫画は、正義の主人公よりもアクがあるの二番手キャラ、二面性のある敵キャラに人気が集まるスピンオフシステムになりやすい傾向にあります。
主人公は作品にかかわるきっかけとなるが、その周辺のキャラクターに興味が波及すると、そのキャラはイマジナリー推しとなり、同時にキャラ同士の関係性妄想がスタートするのです。

BLにおいてもメインカップルがまず入口となるが、メインとかかわる当て馬、おまけ的な出演だったキャラが人気を博し、スピンオフ化、さらにはシリーズ化することがよくあります。
対して少女漫画は、当て馬にお相手はあてがわれないし、スピンオフ化もしません。
したがって、このスピンオフシステムはBLや百合的な同性要素を持った作品だけで成立していると考えられます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
推し活は推しへの関心からスタートするものの、その本質は必ずしも推しを推すことではないということが明らかになりました。
次回は推し活を通して推しをどのように見ていくか、ファンダムとどう関わっていくかについてお話できればと思います。


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