商業BL 10年史 ~トレンドはどう変わったか~
1970年代、当時は『少年愛』と呼ばれた広義としてのBLが誕生して50年余。
男性同士の恋愛を描いたボーイズラブは日本を代表するサブカルチャーとして進化と発展を遂げています。
今回は、商業BL10年史と題して2014年から2024年上半期までの商業BLの変遷を辿っていきたいと思います。
直近10年の商業BLコミック発行数
パンデミックが流行した2020年を除いて、コミック発行数は右肩上がりで推移しています。
特に2014→2015と2016→2017の伸びが著しく、2010年代後期において一時代を築いたといっても過言ではありません!
この時期のBLといえば…
・『テンカウント』『恋するインテリジェンス』の第1巻がそれぞれ2014年に発売
・電子コミックス界で大人気だったスカーレット・ベリ子先生が紙コミックスデビュー(2015年)
・『狂い鳴くのは僕の番』(2016年)、『百と卍』(2017年)がBLアワード「次に来るBL」ランキングで1を獲得
などなど、大人気シリーズのスタートや今ではBLアワード常連のビッグネームが新人として登場している、まさに黄金期。
さらに、同人誌から設定が逆輸入されたオメガバースが台頭したのも2015年の出来事でした。
2024年も上半期だけで904点とハイペースで出版されており、さらなる成長を遂げそうです。
直近10年の商業BL小説発行数
一方で、商業BL小説発行数は右肩下がりの傾向です。
現在は年間400冊弱の水準を保っている状況ですが、出版数の減少幅が2020年に下げ止まっていることと、2022→2023は微増であることからこれ以上減ることはなさそう…!?
BL小説で2014年と言えば、『美しい彼』が出版された年ですよね!
今年は記念すべき10周年イヤーでした。
人気BLのエロ度10年史
BLといえば「エロ」と思われがちですが、実際はどうなのでしょうか?
ちるちるレビューランキングで1000P以上獲得した作品のエロ度を比べてみました。
エロ度が標準的の割合が最も多いのは共通事項となっていますが、それ以外のエロなし、エロ少なめ、エロエロに関しては年によってばらつきがあります。
特に2020年以降の傾向としてエロエロが減り、エロなしが増えています。
2023年に至っては、あわやエロなしがエロエロを逆転しそう…!
おまけ:BL修正方法20年史
BLといえばエロ、エロといえば修正…ということで修正方法の歴史も少しだけ振り返ってみましょう。(参考記事の都合上、20年史となっています)
まだまだ規制が緩く、少しの点々…いわゆるホタル修正を見ることができた2009年。この頃から刻みのりは使用されています。
白ふちやライトセーバー、ぐしゃぐしゃなど各社の涙ぐましい努力と工夫が見え隠れする2010~2019年。
そして、白抜きが猛威を振るい、読者の想像力が鍛えられまくる現代…。
ぜひぜひ記事全文を読んでみてくださいね♪
ホタルから白抜きへ!?BL修正方法20年の歴史
人気BLのトーン10年史
人気作品のトーンの推移を見てみると、「あまあま」「せつない」作風が二強となっていました。
とはいえ、トーンは重複してタグ付けされている場合もあるため、あまあま要素もありつつシリアスも…といったようにハイブリッドな作品も数多く存在しています。
(例)
あまあま×シリアス
『コヨーテ』『媚の凶刃』など
せつない×コミカル・シュール
『エスケープジャーニー』『かんしゃく玉のラブソング』など
人気作品を多く出している出版社 TOP5
人気作品の多くはこの5つの出版社から発売されていて、他の出版社とは人気作の数に大きな差がある状況です。
2024年上半期は特にリブレ、シュークリーム、大洋図書が好調です。
表には入っていませんが、ホーム社は出版点数こそ多くはないものの人気作品の割合が高く、高打率となっています。
まとめ
ここ10年間で総合大手出版社ほか、多くの企業がBL業界に参入しています。しかし、ほとんどのヒット作はBL老舗出版社から生まれるの現状です。
老舗以外の後発では編集プロダクションのシュークリーム、最近はホーム社、ブライト出版、一迅社がコンスタントにヒット作を出している印象が強く、また老舗出版社であるコアマガジン、海王社が盛り返しています。
これらの出版社に共通するのは、エロ度の高い作品を適度に供給していることです。
ちるちるのタグ検索の上位はここ10年間、エロ度「エロエロ」「変態」が圧倒的多数となっていました。
2023年の上位作品はエロ少なめ作品が9割というかつてない状況でしたが、2024年上半期で「エロエロ」作品が4割に戻しており、強固な需要を感じざるを得ません。
老舗、新興出版社問わずアダルト要素を取り除こうとする試みるレーベルが2010年以降次々現れたものの、そのほとんどは方針転換、縮小を迫られる結果になりました。
「エロなし」BL主体でヒット作を定期的に出すのはかなり難しいといえそうです。