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世界各地でBLは「どう」愛されている?

2020年に爆発的ブームを起こしたタイBLドラマをはじめ、韓国発祥のタテヨミ漫画、中国のBL・ブロマンス小説……などなど、現在世界各国で様々なBLの受容がなされていますよね。

日本のBL漫画や小説も海外で翻訳されて刊行されていたり、ドラマ『美しい彼』や『体感予報』がアジア各国でも大人気を博している今日。果たして、世界のBL事情はどのようなものなのでしょうか……?

ということで、国別のBLトレンドや人気の媒体などを調査してみました!
調査してみると、想像もしなかった文化が明らかに……!? 早速BL海外旅行に行ってみましょう!!

1.世界のBL事情ー北米

まずは、あまりBLのイメージがない北米から見てみましょう。
北米では、クランチロール(=アメリカのアニメ配信サービス)の配信をきっかけに、日本のアニメが盛り上がっています!

「Crunchyroll」トップページ

漫画に関しては韓国発のタテヨミ漫画が隆盛。「NAVER WEBTOON」の月間アクティブユーザー数(MAU)が975万人を記録するなど、圧倒的な人気を誇っています。
一方でBLに関しては、現実の問題(LGBTQ)と結びつきやすいこともあり、日本のようなBLは表向き流行りづらい傾向があるようです。
ただ、非公式英訳サイトが複数存在し、かつその勢力が非常に大きいのが特徴的。日本のアニメやBL漫画、韓国のタテヨミ漫画の閲覧数が相当数にのぼり、主にアメリカ、カナダなど北米からのアクセスが多いようです!
このように北米では独自のBL文化が発達するのではなく、主に日本や韓国で生産されたものを受け入れている傾向があるようです。

2.世界のBL事情ータイ

一方、中国の影響を強く受けてきたタイのBL文化は、小説が中心!
小説投稿サイトが隆盛で、最大手の「readawrite」に投稿された人気作品はドラマの原作になることが多い傾向にあります。

タイ小説サイト「readwrite」トップページ

また最近は韓国カルチャーが大人気! もちろんタテヨミ漫画も話題のコンテンツです。

そしてタイと言えば「タイBLドラマ」。GMMTVをはじめとする制作プロダクションがテレビ・配信プラットフォーム用に番組を制作しています。日本でのファンミーティングが活発ですが、こちらは現地の企業まかせで統一管理はされていないようです。

タイは中国のBL小説文化に色濃く影響を受け、その上で独自の「BLドラマ」文化を築き上げてきたと言えます。

3.世界のBL事情ーフランス

フランスと言えば「漫画フレンドリー」なイメージがありますが……実際は厳しいよう。
2019年にNAVER、2021年にKakao(ピッコマ)がフランス語対応のプラットフォームを立ち上げていますが、NAVER WEBTOONの言語別閲覧数では最下位。またKakaoで配信されている人気タイトルのいいね数は、日本と比較すると30倍以上の差があるのが課題……。

ロマンスに関しては男女モノが中心です。BLはLGBTQと分かち難いので、表向きフィクション色の強いBLは各言語の中でも最も少ない傾向。
しかし非公式ファンサブサイトの利用が多く、SEOツールなどでリサーチするとヨーロッパ各国の中でもフランスのアクセスが多いことから、漫画アニメへの関心の高さが目立ちます。

このように、「漫画フレンドリー」という第一印象を持ちがちなフランスですが、BLジャンルは若干苦戦しているようです……!

4.世界のBL事情ー南米

南米はまさに、BLが「次に来る」地! BLへの親和性は世界でもっとも高いと思われます。
タテヨミ漫画のプラットフォームのほとんどはスペイン語に対応。というのも、メキシコをはじめとするスペイン語圏である南米でのタテヨミ漫画浸透を促しているからなのです!

NAVER WEBTOON スペイン語版より

また非公式翻訳サイトでもスペイン語に翻訳された作品が一定数あり、その多くは南米の国々で読まれているようです。BLの人気も高く、「NAVER WEBTOON」の自由投稿コーナー「CANVAS」におけるBL投稿は他の言語の比率に比べるとかなり多い傾向!

このようにBL文化のイメージがない南米でも、実はBLコンテンツが好まれているようです!

5.字幕サイトの現状

BLコンテンツの世界的な広がりにおいて、無視できない存在が「ファンサブ=ファンによる非公式の字幕付け」です。

例えば、世界的なファンがついている中国ブロマンスドラマ『陳情令』は当初YouTubeで全話無料配信されていました。YouTubeの字幕機能やファンサブによる翻訳が各国で行われてさらに人気となり、その盛り上がりを追いかける形で日本でもヒットしました。「タイBL」と呼ばれる男性同士のタイ恋愛ドラマも同様にファンサブによる翻訳で火が付き、 公式がYouTubeで字幕対応を積極的に行い世界的に広がったという経緯があります。

このような経緯から、中国・タイの制作会社は当初BL的ドラマが世界的にこれほど需要があると思っていなかったと思われます。この人気を理解した中国の制作者は規制がある中でもドラマを作ろうとする機運が強まりました。またタイではBLドラマは一大ジャンルとして認識され、制作を強化している模様です。

6.完全にチーム化されたファンサブの状況

「ファンサブ」が話題になるのは映像作品だけでなく、漫画作品においても同様。現在はファンがチームを組んで外国のコンテンツを字幕化する動きが見られています。

自然発生的なチームを組んで行うのですが、最近はコミュニティアプリ「Discord」により連絡が容易に活発化しているようです!

「画像入手→翻訳→校正→言い回しの変更→テキスト打ち込み→グリーニング→最終チェック」と、最近は分業システム化されています。ユーザーも彼らに翻訳してほしいコンテンツ要望を出し、各字幕チームが競って翻訳しているという状況に。

公式の配信だと、その国にとって好ましくない表現や言葉使いには修正が入りますが、ファンサブは原文にその国にとって不適切な表現があってもそのまま掲載できるのが特徴。そこに公式版よりもファンサブが求められる理由があるようです。

7.ファンサブから見るタテヨミ漫画の拡大

ファンサブはオタクコンテンツの発信地である日本にはない概念ですが、着々と世界的に広がっています。全世界的にファンサブサイトが存在し、かつそこにアクセスするユーザーが全世界的に存在し、公式サイトのアクセスを上回る場合も!

韓国の「2021ウェブトゥーン事業体実態調査」資料によると、2021年の被害は8427億ウォン(日本円842億円)、合法市場規模販売額1兆5660億ウォンの54%にものぼります。現在ファンサブでは韓国タテヨミ漫画がファンサブでは人気!
ファンサブサイトではタテヨミ漫画のBL作品数・閲覧数が日本作品を圧倒しているほどです。また、ファンサブには10年前の日本のBLが多く存在します。海外ファンに昔のBLが人気なのは、その要素が大きいのでしょう。

ファンサブサイトの活発度から計る5~10年後のコンテンツ消費有望国

8.まとめ

今や世界共通のコンテンツとして成長したBLですが、その受け入れられ方、展開のされ方は国によって様々でした! 中でも南米など、今まではBLコンテンツが愛されているイメージのなかった国にも勢力は拡大していることがわかりました。

そして、このようなBLコンテンツの世界的な拡大の背景には「ファンサブ」の存在がありました。ファンサブサイトの仕事の速さからコンテンツの拡散に火が付き、中華ブロマンスやタイBL、ひいては韓国WEBTOONを中心に大人気につながる結果となりました!

おわりに

BLコンテンツの世界への展開の仕方と、受け入れられ方についてまとめてきましたがいかがでしたでしょうか?

筆者は今後日本でもタテヨミ形式のBLジャンルが伸びていくのではないかと期待しております。
ぜひぜひ皆様の注目する「世界のBLコンテンツ」も教えてくださいませ!

それでは良きBLライフを♪

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