最近発刊された「死亡遊戯で飯を食う。」というライトノベルを読んでほしい
「死亡遊戯で飯を食う。」とは、2022年11月より刊行された著者:鵜飼有志先生、イラスト:ねこめたる先生によるライトノベル作品。現在、既刊は第3巻まで発売しており、月刊コンプエース2023年6月号から作画:万歳寿大宴会先生によるコミカライズ版が連載中。
半年ほど前に発刊された作品なのもあって、自分はつい最近までこの作品を知らなかった。物語の概要は裏社会でビジネスと化したデスゲームにおいて主人公・幽鬼が99回クリアを目指す、というもの。
本作品のデスゲームは基本的に参加の有無を自分の意思で決められるため、「何も知らない少女達が無理やり巻き込まれた」のではなく「事情があって参加」「生きるか死ぬかのスリルを味わいたい」「自殺する前に記念参加」「合法的に人を殺せるから」「ただ何となく居着いている」などが主な動機として挙げられる。防腐処理という特殊な設定によりデスゲームでありながら残虐性を緩和しているのも特徴の一つ。
以下は公式のあらすじ。
あらすじだけでは「デスゲームに精通した主人公が卒なく攻略していく内容」と誤解する人もいるかもしれないが、実際の内容は一味も二味も違う。熟練プレイヤーの主人公もミスだってするし両腕をへし折られることだってある。
正直最初は期待も興味も薄い状態で読んでいたけど4人中3人分の重量しか乗れないエレベーターの攻略法として主人公が全員の脚を斬り落として進もうと提案する辺りから面白くなって特に2巻の女性同士の関係に惹かれた。
誰かいつ死ぬか分からないドキドキ感、グロテスクに感じさせない工夫、主人公の人物像、思考運び、物語の面白さに加えて、2巻以降から死地で変化及び強調される女性同士の関係性、シリーズとしての面白さ、伏線、生き様にも厚みが増し、巻末に掲載された各著名人解説の言葉を借りるなら「登場人物達の感情のぶつかり合いと、そこで生まれる熱い展開」も魅力且つ好きな要因といえます。
第1巻読後の所感
第1巻を読み終えた時点では面白いと思いつつ自分の趣味嗜好により不満点が一つあった。
幾度かある「~した」「~いた」「~った」と同じ語尾を繰り返す文体に慣れるのに多少時間がかかったがそれは脳を慣れさせれば気にならなくなったのでいいとして、問題は第1巻終盤のある描写に納得し難いものを感じたのが不満の原因。
しかし、その不満点が後のシリーズで良い形に活きたことにより、結果として全巻通して好きなシリーズに。ネタバレになるので詳細は伏せる。
第2巻のある女性同士関係と第3巻の全体的な面白さも特によかった。死地で変化認識増長強調される女性同士の関係性好き。無論2巻以降に限らず、第1巻の萌黄のあれやこれや終盤のバトルも印象深い。
防腐処理と肉体改造
防腐処理という名の肉体改造によって、前述の通りグロテスクなシーンを緩和、毎回シビアな展開を可能にしている、防腐処理+治療により絶対に元通りになるご都合設定ではなく場合によっては修復不可、更には脚を切り落とすシーンや全員が一人を刺すシーンなどを上手いこと割愛、省略してデスゲームの悪趣味な面を感じさせない作りなのは素直に好感が持てる。もし苦しみながら脚を切り落とすシーンなどをねっとり描写していたら自分の中でこの作品の評価は著しく下がっていた。
防腐処理とは別のとある肉体改造は最初「これがアリなら皆やればよくない?」とも思ったが、第1巻ではメリットの印象が強かった肉体改造が第2巻以降でデメリット(例:全身改造は短命)でもあることが分かり、諸刃の剣として一気に納得感を得た。
コスプレルールの是非
メイド服ならまだしも露出度の高いバニー服や水着は物語のノイズになるのではとも最初は思ったが、媚びるような描写もエロいと感じさせる描写も一切なく、あくまで衣装は展開に活きる備え付けの要因に留まっているが良かった。例として殺人動機、水着=傷を隠す場所が共通認識になる等。小説媒体だからこそとも捉えれる。
「死亡遊戯で飯を食う。」を読んでほしい
主人公の特徴やこういう展開があるのが良いなど他にも箇条書きで書き連ねようとしたものの、出来るだけ前情報や先入観を持たずハードルを上げすぎず読む方が楽しめると思うので、つまるところ読んでほしいの一言に尽きる。是非、死亡遊戯を読んでほしい。最近の作品の中でも最もおすすめの作品です。