ボカロ史上最も重要な楽曲20選
ちょっと前に話題になってたやつのパロディです。
オリジナルと同じく1人1楽曲。投稿が早い順。
シーン全体や一般社会へ与えた影響の大きさに重きを置いています。
音楽理論素人なのでコード進行などの音楽性はあまり考慮してません。
ちなみに筆者は2014年からボカロを聴き始めたので、それ以前のボカロシーンについては掲示板や大百科やインタビュー記事で見聞きした情報しか知りません。
「こいつ全然わかってねーな」と思われた古参勢の方は是非コメントで意見してください。
1. 恋スルVOC@LOID/OSTER project (2007)
黎明期のボカロは『Ievan Polkka』など「既存の有名曲のカバー」としての使用が普遍的であった。その時代において「初音ミク」というボカロキャラを主軸に添えたこの曲のヒットは、初期のボカロシーンにおけるキャラソン文化に発展した。これ以降、ボカロ曲の投稿者はアイマス文化に準えて「ボカロキャラをプロデュースする存在=『ボカロP』」と呼称されるようになる。
2. みくみくにしてあげる♪/ika (2007)
ネット上で空前の初音ミクブームを巻き起こし、当時無名だったVOCALOIDの存在を最初に世間に広めた功労者。この曲を起点にニコニコ動画では大量のn次創作が作られたことで、ボカロシーンは現代インターネットにおけるUGC(ユーザー生成コンテンツ)の開拓者となった。「ボカロ」という音楽ジャンル、そして文化を成立させた紛うことなき金字塔である。
3. メルト/ryo (2007)
キャラクター性のない歌詞、「バーチャルシンガー」としての初音ミク、作曲者=ボカロPに注目する文化。現在のボカロシーンの根底にある様々な価値観は、全てこの曲のヒットによる「メルトショック」で形造られたものである。「歌ってみた」が二次創作の一大ジャンルとして台頭するようになったのもこの出来事から。ボカロの歴史を動かした、恐らく最も重要な曲。
4. 悪ノ娘/mothy (2008)
現在まで続く二次創作文化「ボカロ小説」を初めて出版するなど、ボカロ曲のメディアミックス展開の先駆けとなった楽曲。『七つの大罪シリーズ』の1つであるこの曲は、初期のボカロシーンの流行の一つ「ボカロキャラをモチーフとしたシリーズもの」を象徴する存在でもある。
5. 裏表ラバーズ/wowaka (2009)
「ボカロキャラが存在しない」という当時としては異色のサムネと共に、wowakaの名と音楽性を広めた楽曲。高速・早口・ロックという「ボカロっぽさ」を確立させ、ひいては現代邦楽ロックの流行すらも変えてしまった彼は、まさしくボカロシーンのゲームチェンジャーであった。後発のボカロPで彼の影響を受けていない者はまずいないだろう。
6. 千本桜/黒うさP (2011)
ニコニコ動画ボカロ再生数1位、カラオケランキング上位常連、紅白出場、CM起用、和楽器バンド、歌舞伎コラボ等々。一般社会でボカロが色物扱いされていた時代にこれだけの実績を残したことは称賛に値する。「ボカロと言えば千本桜」「ボカロは聞かないけど千本桜は知ってる」と、一般社会に対してボカロシーンの顔であり続けた伝説の楽曲。
7. カゲロウデイズ/じん (2011)
オリコン1位など社会現象を巻き起こした『カゲロウプロジェクト』は、「企業の積極的な参画によるメディアミックス展開」の時代の到来を告げ、「○○プロジェクト」ブームを生んだ。ただそれ以上に、「ボカロをモチーフとしたキャラMV」が主流だった時代に「完全オリジナルキャラMV」を一般化させ、ボカロのキャラクター性が喪失し始める転換点でもあった。
8. 人生リセットボタン/kemu (2011)
2013年の活動休止までの「全投稿曲100万再生超え」という驚異的な人気を博したkemuの処女作。耳をつんざくようなシンセを軸とした高速で中毒性のある曲調、動きの激しいMVで描かれるダークなストーリーという作風は、大量の「kemuフォロワー」によって模倣されたことでボカロシーンの流行を一変させた。
9. Tell Your World/kz (2011)
GoogleのCMソングとして突如地上波で放映され、ボカロシーンに激震が走った楽曲。「初音ミクってこんなコラボができる程すごい存在なんだ」というメッセージをお茶の間に与え、初音ミクの認知度を世界中で急上昇させるエポックメイキングな出来事であった。この曲もまた、ボカロ文化のマネタイズという当時の流行を象徴する存在である。
10. 夜明けと蛍/n-buna (2014)
カゲプロやKEMU VOXX終了後の2013年後半〜2015年のボカロシーンは、特定の人物による影響よりも大物ボカロPの不在による自然発生的な変遷という側面が強い。それでも後世から振り返ると、「スローテンポ」「一枚絵MV」という特徴を持つこの楽曲は、高速VOCAROCKの時代に終わりを告げ、その後のポップスの流行を確実にした点で特筆すべきだと考えた。
11. ゴーストルール/DECO*27 (2016)
2014~15年の所謂「ボカロ衰退期」に終焉を告げたとされる楽曲。実際にシーンが盛り上がり出すのはこの年の春以降(『エイリアンエイリアン』くらいから)だが、「100万再生を一瞬で超すような、その年の代表曲が存在しない」という状態が2年続いた後の年始からのメガヒットはファンに衝撃を与えた。当時を知る人にとっては今なおボカロ再興の象徴である。
12. シャルル/バルーン (2016)
10年代後半のv flowerブームを起こしただけでなく、「ボカロ曲でヒット」→「セルフカバーでヒット」→「自作曲を自分で歌って投稿」という活動展開を一般化させた楽曲。それまで米津玄師が特殊例とみなされていた時代から、有機酸(→神山羊)、こんにちは谷田さん(→キタニタツヤ)など何人もの「ボカロ発シンガーソングライター」を輩出する流れを作った。
13. ダンスロボットダンス/ナユタン星人 (2016)
それまで接点の少なかったボカロシーンと音MAD界隈を強く結びつけるきっかけとなった楽曲。この曲が無ければ『ラグトレイン』や『アルティメットセンパイ』は今ほど人気ではなかったかもしれない。後にプロセカへ継承される「大勢のボカロPによる書き下ろし曲の継続的な提供」も「#コンパス」が先んじて挑戦し、シーンの活性化に欠かせないコンテンツになった。
14. 砂の惑星/ハチ (2017)
ボカロ史では2010年前後の代表格としてwowakaと共に語られがちなハチだが、1人1曲の縛りにおいてはこれを選ぶほかなかろう。賛否はともかくとして、ボカロシーンに大論争を巻き起こし、数多くのアンサーソングが生まれた事実そのものがインパクトの大きさを物語る。「砂漠に林檎の木を植えよう」というフレーズは、ボカロ曲で最も引用された歌詞に違いない。
15. ナンセンス文学/Eve (2017)
歌い手兼ボカロPとして活動し、「歌い手はボカロPのお陰で生きていける存在」という共通認識を覆したEveの初ヒット曲。米津玄師や須田景凪のような「ボカロPが自分で歌い始める」というルートとは異なる、「シンガーソングライターが自分で歌うためにボカロ曲を作る」という新たな活動形態がボカロシーンに定着したのは、彼の活躍によるところが大きい。
16. ロキ/みきとP (2018)
まだニコニコ動画が主戦場だった時代に、(米津玄師などと異なり)ボカロPのままYouTubeで初めてメガヒットを叩き出した楽曲。ボカロ曲がシーンを飛び出し一つのJ-POPとして若者に広く支持されるようになった最初の曲だと思う。この傾向は20年代になると更に強まり、AdoやYOASOBIのようにコンポーザーとしてのボカロPが邦楽のトレンドを支配するようになる。
17. グッバイ宣言/Chinozo (2020)
ボカロ初のYouTube1億再生という実績はさることながら、「TikTokなどのショート動画でバズる」「投稿後しばらくして急激に再生数を増やす」「ニコニコ動画よりYouTubeで人気になる」という、20年以降のボカロ曲の売れ方を網羅している点が特徴的。「ボカロシーンはニコニコ動画が無くとも繁栄し続ける」、そんな時代の到来を証明した曲だろう。
18. KING/Kanaria (2020)
「中央にオリキャラを強調した1枚絵」という20年代以降のボカロMVの流行を確立した楽曲。同様のスタイルではかいりきベアという先駆者がいるが、シーンに与えた影響の大きさからこちらを選んだ。この出来事は結果的にVTuber界隈とボカロシーンを大きく近づけ、ボカロPがトラックメイカーとしてシーン外に楽曲提供を行う機会を格段に増やしたように思う。
19. フォニイ/ツミキ (2021)
『KING』がもらたした1枚絵MVの流行に"動き"を加え、可不ブームの立役者にもなった楽曲。UTAUやCevioなど、それまで「VOCALOIDでないボカロ曲」というある意味異端な存在だったジャンルを、ボカロシーンのメインストリームまでのし上げた功績は大きい。カゲプロ全盛期や2016年すら上回る盛り上がりを見せた2021年投稿曲群の筆頭格。
20. 人マニア/原口沙輔 (2023)
Synthesizer V発売の盛り上がりを背景に、現在のテトブームの起爆剤となった楽曲。「架空のVOCALOID」として生まれた重音テトが15年経って初音ミクと双璧を成すなど、一体誰が想像できただろうか。天才トラックメイカー原口沙輔をボカロシーンに参入させ、この曲を世に生み出した「ボカコレ」という祭りの存在も忘れてはならない。