マドモアゼル・モーツァルトを観てきた話
あらゆるチケット購入手段ですべて落選し、諦めかけていたところ、ぴあ のリセールでA席を1枚入手できました。初めて行ったブリリアホール、初めて観るタカラジェンヌのお芝居、コロナ禍久しぶりの観劇。楽しい時間を過ごすことができました。
東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
池袋の東口に2019年11月に新しくできた劇場。こけら落とし公演シリーズの1つ、宝塚歌劇団星組『ロックオペラ モーツァルト』のチラシを観たときに、この劇場で私と縁のある演目は上演されるんだろうか?と思っていました。まさかのご縁に感謝です。
チケットコントロールに向かう大階段は、赤を上手に使った華やかなイメージで、テンションが上がります。今日はA席(3階席)だったので中に入ってからもひたすら上階にのぼっていきました。2階や3階は未就学児禁止になっていましたが、さもありなん。座席が急な階段状になっていて、前の席の人が邪魔にならないのは良いですが立ち上がるのも怖い傾斜です。
席の幅は狭く、かつて新宿にあった厚生年金会館を思い出させる狭さと傾斜。さらに3階には超邪魔な手すりがついています。ステージに横線が入る始末。安全面の配慮なのは十分わかるのですが、本当に邪魔過ぎます。覚悟して行ったものの、非常にイライラしました。
音響は素晴らしかったです。今回オケピを使ってキーボードやPCで操作する音出しをしていたのですが、ちゃんとチューニング音(オーボエ、バイオリン、フルート、ティンパニ、などなど)を出してくれる演出があったため、まるで生オケがいるかのような錯覚を覚えました。
コロナ禍のため休憩中の移動も制限されましたので、ロビーの設備はわかりません。トイレも行かなかったので不明。またの機会に。
音楽座の『マドモアゼル・モーツァルト』
1991年、音楽座が初演した、漫画を原作とするミュージカル。私が音楽座を知ったきっかけで、初めて観たミュージカルでもあります。なぜって、それは劇伴を小室哲哉が担当したから。確か深夜番組でミュージカルの音楽を担当することになったと発表があって、問い合わせ電話番号が表示されたものだから、即電話をかけたら人間が応答してびっくりした記憶まで残っています。後で音楽座の人に聞いたら「念のため対応できるようにしていたら本当にじゃんじゃん電話が鳴ってびっくりした」と言っていました。
音楽座は海外のミュージカルを翻訳上演するのではなく、オリジナル脚本と音楽で、独自の日本語ミュージカルを上演する劇団。一度解散して主要キャストも一掃され新体制になったものの、今でも当時の俳優さんが数名残っています。『星の王子様』を世界で初めてミュージカル化する権利を得たことでも有名。
『マドモアゼル・モーツァルト』ですっかり音楽座にハマった私は、学生で自由な時間があったことも手伝って、ワークショップにまで参加しました。数日間町田まで通ったのは良い思い出です。
そんな音楽座、今は新人社員研修やリクルーター学生の研修なども請け負っていて、「シアター・ラーニング」という参加型ワークショップをパッケージ提供しています。音楽座の俳優が講師で、研修そのものが長時間の公演という見方もできますし、アクティブラーニングや自己啓発セミナーの一種という見方もできます。
東宝ミュージカルの『マドモアゼル・モーツァルト』
『レ・ミゼラブル』『RENT』『エリザベート』『モーツァルト!』などなど、数々の有名なミュージカルを上演している東宝が、元宝塚トップスターの明日海りおが主演と発表した時点でもチケットが取れる気がしなかったのですが、さらにコンスタンツェ役が、退団時の相手役・華優希で、華優希は退団後初の舞台出演とあっては...ヅカファンで埋め尽くされること必至じゃないですか。平方元基やLeadの古屋敬多のファンだって来るはず。そんな中私は、小室哲哉の曲で音楽座のミュージカルがよみがえることを楽しみに行ったわけです。
上演発表時、まだ華優希の名前が伏せられていた記事は、こちら↓。
感想
明日海りお は元男役だけあって、アマデウス・モーツァルト(男装の女性、周囲は男性だと思っている)を演じる部分はしっかり男性に見えるし、女優さんだから幼少期のかわいいエリーザや、初めて女装で外出するときのエリーザは、ドレスのぎこちなさを上手に表現されていたし、もちろんダンスも歌も超一流だし、いやぁタカラジェンヌすごいわぁ。の一言です。華優希さん共々たぶん本来の音域とは違うところも多かったのだと思います。もともとのアテガキ相手が違いますから。でもさすがの技術でした。
カンパニーの舞踏(精霊役の部分)と衣装、素敵でした。白やベージュやグレーをうまく組み合わせた衣装。メインキャストの華やかな衣装ともども、めっちゃお金かかってると思いました。普段私が観るストレートプレイとは大違いだ。
音楽座版では、『魔笛』の打ち上げで差出人不明のワインを飲んだらそれが毒入りで、モーツァルトが死んでしまう。という終わり方だったと記憶しているのですが、東宝版は、毒を盛られて徐々に衰弱していく、という死に方でした。『魔笛』の一番有名な『パパゲーノとパパゲーナの二重唱 (パパパの二重唱)』が唐突に差し込まれていた印象を受けたので、ここも音楽座版とは違っていたのかも。
原作者の福山庸治さんのTweetに「音楽座ミュージカルの時に気になっていた台詞が、気づいた範囲では2箇所変更されていて安堵した。1箇所は台詞ごと無くなり、もう1箇所は別の言い方に変えてあった。」というのがあって、もう一度観に行く(=チケットを取る)元気がないだけに、ぜひとも円盤化して欲しいと思っております。
東宝ミュージカルだから東宝所属の人ばかりだと思っていたら、研音、ホリプロ、ライジング、アミューズと様々な事務所の人たちで、上演スケジュールにもカメラが入る予定が書かれていないので、Blu-ray発売は難しいのかなぁ。とも思っています。
原作本の復刊
当時の原作コミックは絶版になっていて、電子書籍で買うしかないなぁ、と思っていたところ、このミュージカル上演に併せて復刊されていました。
「男」でも「女」でもなく、自分らしく、生きる。
新装版コミックの帯に書かれた言葉。
今回の演出を担当した小林香さんのインタビューでも、ジェンダーの話に触れています。
『マドモアゼル・モーツァルト』は、確かに、女性が作曲家として成功したことはないからと父親に男性として生きることを強いられたモーツァルトのお話。初演を観たときの私が若すぎたのか、ジェンダーについて考えるきっかけにもならなかったし、その視点で観たことはありません。インタビューを読んだ後で今回は観たわけですが、やはりジェンダー視点というよりは、自分らしく生きる。に焦点を当てた方がしっくりきました。アナ雪のエルサのような。
ただ、コンスタンツェに注目すると、確かにジェンダー論を持ち出さないと彼女の生き方は説明できないとは思います。恋をして結婚した相手が実は女性で、でも自分はストレートで、不倫相手との子を結婚相手との子として育てたわけですが、カトリックだから離婚はできない、と宗教を持ち出したところでぼやけてしまった部分は否めませんでした。
新装版のコミックが届いたら、また追記します。
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