外国人が親を日本で暮らさせること


特定活動(高度専門職人材の親)

1.難しい理由
日本で暮らす外国人が、その親を日本に呼び寄せて、中長期的に日本に滞在させることは難しいです。

日本では、外国人の親が長期間滞在するためのビザが非常に限られています。特に、高齢の親が長期間日本に滞在するための「親のための介護ビザ」のような特定のビザカテゴリーは存在しません。

親の滞在について厳格である理由については、法令などで明文化されているものではありません。推測されるのは、外国人の親は、日本において労働者として経済に貢献することができない反面、健康保険や年金といったメリットだけを享受することができるのは、不当であり、ただでさえ高齢化が進む日本社会の負担になるという理由があります。フリーライドは許さないという見解ですね。

2.例外
「例外のない規則はない」という表現に示されるとおり、この原則にも例外があります。

一つは、明示的に要件が定められているものです。それは、高度専門職外国人の親としての「特定活動」のビザ(正式には在留資格といいます。以下同様)です。
(1)高度外国人材又はその配偶者の7歳未満の子(養子を含む。)を養育する場合、または(2)高度外国人材の妊娠中の配偶者又は妊娠中の高度外国人材本人の介助等を行う場合、以下の要件をすべて満たせば親の滞在が認められます。
①高度外国人材の世帯年収※が800万円以上であること
②高度外国人材と同居すること
③高度外国人材又はその配偶者のどちらかの親に限ること

まず、高度専門職外国人制度とは、「学歴」,「職歴」,「年収」などの項目ごとにポイントを設け,ポイントの合計が一定点数に達した場合に,出入国在留管理上の優遇措置を与えることにより,スペックの高いと判断される外国人材の我が国への受入れ促進を図ることを目的としています。受入れを促進しているので、高度専門職外国人として認められると優遇措置が講じられることがあります。そのうちの一つが、「親の帯同(親を日本に呼び寄せて住まわせること)」です。

もう一つの例外は、要件が明文化されていないものです。これも「特定活動」(通称:老親扶養)というビザです。
これは前者と異なり、法令で定められていないものの、法務大臣の裁量で認められるものです。この場合、①親が高齢である、②日本国外にその親の面倒をみる親族等がいない、③日本にいる外国人の子が一定の収入を得ており、納税義務を果たしている、という要件すべてを満たせばビザが認められることがあります。とはいえ、このビザが許可されるハードルはかなり高いといわれており、親が高齢で一人暮らしであっても、重度の持病がなければ認められなかったり、③の「一定の収入」の基準が不明瞭であったりします。さらに、入管当局からは多くの書類を求められます。
このため、行政書士業界でも、この老親扶養ビザは依頼を受けない事務所が多いです。

3.当法人の実例
冒頭の画像にありますとおり、当法人で外国人の親の呼び寄せに成功した事例はあります。それはやはり前者の例外の方で、高度専門職外国人の親の帯同なのですが、今回の事例ではやや問題がありました。
それは、依頼者の高度専門職外国人が当法人に依頼後に離婚し、7歳未満の子の親権が配偶者にわたり、配偶者がその子と同居することになったことです。これにより、「(1)高度外国人材又はその配偶者の7歳未満の子(養子を含む。)を養育する場合」という要件を満たさないかもしれないとも思いました。しかし、親権=同居=養育というわけではなく、親権や同居がなくても養育はできると考え、ダメモトで申請しました。
案の定、入管窓口では、「形式的な条件を満たしていないので、難しいですよ。」と言われましたが、とにかく審査してほしいとお願いして申請を受理してもらいました。その後、入管当局から追加書類を求められ、提出し、結局許可が下りました。

4.所感
外国人の親の呼び寄せについては、批判的な意見があることと、その理由について理解しております。それでも私は依頼者の要望に応えるのが仕事ですので、許可される可能性があると判断すれば、依頼を受けます。老親扶養の方は依頼を受けません。それは許可の可能性が低いわりには書類を多く求められた結果不許可になることがありえるからです。この点については、外国人の皆様もよくご理解されているようです。それでも親に日本で済んでほしいと考える外国人は多く、そのような国に生まれて良かったと思うことがあります。そんな日々です。



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