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ケガをしたからこそ気づいたこと/山下詩織①

スポーツにケガはつきものです。
残念ながら、それは認めざるを得ません。
大切なことは、そのケガをどう受け止めて、
どう立ち向かっていくか、ではないでしょうか。

富士通レッドウェーブのパワーフォワード、
山下詩織選手(コートネーム:シオ)も、
数々のケガに見舞われてきた選手のひとりです。
それでも山下選手は足を止めませんでした。
前に進めない時期もありましたが、
足踏みをしながらでも、次の一歩を踏み出すため、前を向き続けてきたのです。

苦手を上回る楽しさに触れて

バスケットを始めたのは小学3年生のとき。
兄の送迎について行っていたとき、コーチに誘われたことがきっかけです。
ただ、当時の山下選手は運動が得意ではありませんでした。
「運動が苦手で、運動神経もよくなくて……体育の成績も、中学の途中まで5段階評価の3しか取ったことがないんです」

それでもバスケットは楽しかったと言います。
「きついメニューはたくさんありましたし、できないこともありました。でもそのなかで少しずつできていく達成感が楽しかったんです」
それだけではありません。
先輩や同級生に恵まれ、彼女たちとともに勝つ喜びを得られたことが何よりも楽しかったのです。
「みんなとバスケットをすることが楽しくて続けられました」


前向きな日々に突然の暗い陰

中学は地元の公立中学校に進みます。
ミニバスケットのチームは全国大会にも出場しています。
その子たちが集まれば、チームも強くなるのではないか。
そう思いがちですが、簡単にはいきません。
コーチは、バスケットの経験が少なく、
練習にあまり力を入れない先生でした。

それでも1学年上にはミニバスケットの先輩たちが多くいて、
県大会のベスト8くらいまで勝ち進みます。

山下選手自身も、その身長の高さを買われて、
1年生のときから神奈川県の選抜チームに選ばれています。
当時は都道府県対抗の全国大会があり、そのメンバーに選ばれていたのです。
選抜チームの練習に行けば、いろんな選手たちに会える。
その選手から得られる刺激こそが、当時の山下選手の原動力だったのです。

しかし3年生のとき、大きなケガを負ってしまいます。
右膝の前十字靭帯断裂。
あってほしくないことですが、バスケットではよく聞くケガです。
結果として、最後の県大会には出場できず、引退を余儀なくされました。

名門で引き出された負けず嫌いの心

高校は千葉・昭和学院高校に進むわけですが、
実は愛知県の高校からも声がかかっていました。
どちらにしようか迷っていたときにケガをしてしまい、
そこで山下選手は考えたと言います。
「ケガをして、考える視点が変わったように思います。近くに助けてくれる人がいたほうがいいと思ったんです。あのときのケガは、自分の体に合ったことをすべきだという考えを持つきっかけになりました」
自らのケガを受け止めることで、自らの体に向き合い、
その先をより見つめられるようになったというわけです。


昭和学院高校は、千葉県を中心に、全国からも有望な選手が集まってきます。
自分の経験したことのない舞台を経験しているチームメイトに囲まれて、
また、ケガで出遅れた分、ついていくのに必死でした。

それでも、1学年上に赤穂ひまわり選手(現デンソーアイリス)が、

高校生年代の日本代表に選ばれていく姿を見て、
山下選手も刺激を受けたと言います。
「私ももっとうまくなって、上のレベルを目指してみたい」

飛躍的な成長は得られなかったけれども、
目指してみたい未来が見えてきたことは、
高校3年間での大きな収穫でした。

2度の大ケガを乗り越えて

白鷗大学に進学した山下選手は、大きな壁にぶつかります。
フィジカルの差を痛感させられ、バスケットの質の高さにも当初は戸惑いました。
もはやセンターのプレーだけをやっていればいいわけではない。
それをするにしても、ゲームの流れに沿って、チームメイトを生かす動きを、瞬時に判断しなければいけません。

それらのことに慣れてきた2年生のとき、
山下選手は、またも大きなケガをしてしまいます。
左膝の前十字靭帯断裂。
中学生のときとは逆の足です。

不運は重なります。
そのリハビリ中に唯一の同級生が退部をしてしまったのです。
それでもケガを治して戻ってきたときは、頼りになる先輩たちがいました。
しかし4年生になると、頼れる先輩たちはいません。
柄でもないキャプテンの職に就き、
チームのことを考えすぎて、自分のプレーがまったくできないジレンマを抱えることになります。

そんな4年生の春、今度は右膝の内側側副靭帯を切ってしまいます。
全治4か月。
またもプレーできない日々。
秋のリーグ戦で復帰しましたが、最後は後輩たちに
「助けてほしい」
と素直な気持ちを伝え、インカレ(全日本大学バスケットボール選手権大会)へ。
後輩たちに助けられながら準優勝を果たします。

チャレンジの舞台へ

前後して、富士通レッドウェーブからオファーが届きました。
そのときのことを振り返って、山下選手は言います。
「みんなが練習している姿を見ていると、どうしてもバスケットがしたくなるんです。ただケガから復帰してすぐのときは、そのトラウマからできないプレーも多くありました。そのなかで自分のできることを探したり、克服しなければいけないこともあります。自分のケガと向き合いながらプレーできる環境でなければ、バスケットを続けていけないのではないか。そう思っているときだったので、富士通で自分の体を大切にしながら、できるところまではやってみたいなと思ったんです」


2022年春、山下選手は前シーズンのアーリーエントリーを経て、
レッドウェーブに正式入団します。



#17 PF 山下詩織 Shiori Yamashita



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