好奇心は海をも超える/伊森可琳①
人生はよく「旅」に例えられます。
旅の楽しさのひとつに、
新しい扉を開ける、
つまり知らないものに触れて、見聞を広げることがあります。
富士通レッドウェーブのスモールフォワード、
伊森可琳選手(コートネーム:カリン)は
そんな「旅」を楽しんできました。
今もそれを楽しんでいます。
夢はニュージーランドの羊飼い⁉
伊森選手は中学、高校、大学と日本一を経験しています。
しかし彼女はエリートでも、ましてやスーパースターでもありません。
少なくとも現時点では。
それでも今、彼女はレッドウェーブに欠かせない選手であることに変わりはありません。
その原点を辿っていくと、ひとつのワードにぶつかります。
彼女を語るうえでのキーワードと言ってもいいでしょう。
「好奇心」です。
幼いころから好奇心旺盛な子どもでした。
「小さい頃から、いろんな世界を見てみたいと思っていました」
最もわかりやすいのは4歳ころに思い描いていた夢です。
「お母さんに『可琳は大きくなったら何になりたいの?』って聞かれたとき、『可琳はニュージーランドで羊飼いになるんだ』と答えたそうです」
なぜか。
遠い記憶を呼び起こして、伊森選手から出てきたのは、
イギリスのストップモーション・アニメーション、『ひつじのショーン』でした。
『ひつじのショーン』を見て、
どこにあれだけ多くの羊がいるんだろう? と好奇心を持ち、
調べた結果たどり着いたのがニュージーランドだったというわけです。
「今思えば、アニメなんだし、普通に楽しんでみればいいじゃないかと思うんですけど、
その頃から、ちょっとでも興味が沸いたら、すべてを知りたくなっていたんです」
アニメの世界だけではありません。
お父さんに頼み込んで、お父さんの会社の偉い人にも会わせてもらい、
会社で上に立つ人はどんな世界観を持っているのだろうかと、話を聞いたこともあります。
「とにかく、自分の知らない世界が見えることがすごく好きなんです」
拍車がかかる好奇心
もちろん伊森選手の好奇心はバスケットにも向けられます。
バスケットを始めたのは小学3年生のころ。
3歳年上の兄と、当時、同じ地区に住んでいて、今なお姉のように慕う山本麻衣選手(トヨタ自動車アンテロープス)の影響が大きかったと認めます。
結果として、上記のとおり、日本一を経験するような強豪校でバスケットをし、
アンダーカテゴリーの日本代表にも選ばれています。
「学生の頃は、強いチームにいればすべてが見える……強いチームでしか見られない、自分の知らない世界があると思っていました」
バスケットでも、自分が知らない、あるいはわからないと思ったら、行動に移す。
東京医療保健大学時代には、恩塚亨ヘッドコーチ(現・女子日本代表ヘッドコーチ)と食事に行ったこともあります。
「恩さん(伊森選手は親しみを込めて恩塚ヘッドコーチをそう呼んでいます)って何を考えているかわからないところがあったから、恩さんを知りたいって思ったんです」
3人制のバスケットに積極的に関わっていったのも同じ理由です。
それまで5人制だけでプレーしていた伊森選手にとって、
3人制のバスケットは知らない世界であり、知りたい世界でした。
だから迷わず飛び込んだのです。
しかし、それらは将来を見据えた、打算的なものではありません。
「好奇心でしかありません。先のことよりも今、目の前にあることで、いろんなことを知ってみたいという思いだけです」
伊森選手の好奇心は、日本国内にとどまりません。
周囲の話題が日本の女子バスケット――たとえばWリーグや女子日本代表に向けられているときも、
伊森選手は「いや、自分も今、日本でバスケットをやっているから」と考え、
その目を自分の知らない世界、海外に向けます。
レッドウェーブのホームページで公開された新人インタビューでも、
あこがれの選手として、海外の選手を挙げているほどです。
「きっかけは、高校時代に見た国際試合の映像です。女子カナダ代表のキア・ナース選手がすごくかっこいいと思ったら、彼女は普段どこでプレーしているんだろう? と検索しました。当時はWNBAのニューヨーク・リバティと、今、オコエ桃仁花さんがプレーしているオーストラリアのWNBLでプレーしていることがわかりました。でも当時はYouTubeしか見られなくて、そこでフルゲームを流しているのがWNBLだったので、それを見ていました。すごいな、すごいなと思って。じゃあ、ニューヨーク・リバティのほうも見てみよう思って、ハイライト映像で見たときに、とんでもなくすごい選手がいて、その選手を調べたら、フランス代表のマリーヌ・ジョハネス選手だったんです」
カナダからオーストラリアへ、オーストラリアからアメリカへ、そしてアメリカからフランスへ――
伊森選手の情熱は国境を軽々と越えていきます。
「別に自分自身が海外志向というわけではありません。世界には今、こんな戦術でバスケットをしているチームがあって、こういったプレースタイルの選手もいるんだと、自分のなかで情報がどんどんアップデートされることがすごく楽しいんです」
楽しさの裏側にある芯の強さも携えて
このように書くと、自分に興味のあること、楽しいと思うことだけを追い求めていたように思われるかもしれません。
そうではありません。
強豪校であればこその、大小さまざまな問題にも直面してきました。
そんなときの伊森選手は、自らの信念に従い、
受け入れられないことは頑として受け入れない強さも発揮します。
「体育館から出ていけ!」と言われて、本当に出ていったこともあります。
自らに非があることを認めて謝罪をしながら、それを頑なに受け入れてもらえないときには、やはり出ていったこともあります。
「そうした芯の強さ……頑固なところはあると思います。でも強いチームでプレーするには、そうした強さがなければ生き残っていけないと思っていたので、その芯だけは崩しませんでした」
好奇心だけが伊森選手を形成しているわけではないのです。
強豪校に在籍していたということだけでなく、
また身体的な能力が高かったというだけでもなく、
旺盛な好奇心と、頑固なまでの芯の強さが絶妙に混じり合い、
化学反応を起こすことで成長していった伊森選手。
2023年、彼女はレッドウェーブに入団します。
#45 SF 伊森可琳 Karin Imori
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