アイデアをひとつに絞りこむには?:デザイン思考実践レシピ#02
お悩み:
ワークショップでアイデアをたくさん出せたのはいいけれど、そこから優秀なアイデアを抽出するのが苦手です。
アイデアの取捨選択をするうちに、いつも無難なところに落ち着いてしまいます。
富士通の社内サイトの人気コーナー、ノンデザイナーのお悩みにデザイナーがお答えする「デザイン思考実践レシピ」シリーズをnoteをお読みのみなさんにもご紹介します。
★10秒でわかるこの記事のポイント★
回答:
こんにちは、デザインセンターのMです。
ワークショップに慣れた人も増えてきて、みなさん自由な発想でアイデア出しができているなと感じることが増えました。でも、その後の作業となると、まだまだ試行錯誤の方は多いと思います。
とはいえ、デザイナー自身も、アイデアの絞り込みは、アイデア出しの2倍は時間をかけて悩みながらやっています。
絞り込みが難しいという感覚、間違っていませんよ!
お悩みにある「優秀なアイデア」という言葉について考えてみましょう。誰にとって「優秀」なのでしょうか。ユーザー?クライアント?新しさや価格、といった可能性もあります。
どこから見て「優秀」なのか、そこが今回のお悩みのカギになります。
見えないものを見えるものにする「構造と言語」
デザインは「見えないものを見えるもの」にする作業だと思います。見えるもの、つまり「可視化」に必要なのは「構造と言語」です。
ワークショップでたくさん出たアイデアはバラバラですが、構造化し、精緻に言語化することで、誰もが納得できる「アイデア」に昇華させる、というのがワークショップ後の作業になるのかなと思います。
「構造化」「言語化」であれば、ノンデザイナーの方でも得意な方はいらっしゃるのではないでしょうか?
私たちデザイナーがいつもやっている方法をご紹介しつつ、構造化と言語化について説明します。
1.クレンジング
まずはたくさんのアイデアを似たもの同士で寄せていき、扱いやすい数にまとめます。最初のアイデアの数にもよりますが、例えば50個アイデアがあれば、だいたい10個以下になるまで作業します。
10個とは、目の前に並べたときにひと目で内容を把握できるくらいの数でしょうか。これは、割と機械的な作業です。
2.マッピング
クレンジングしたアイデアをマッピングします。多くのプロジェクトでは、使用シーンや実際つかう人の状況など、決まっている与件がありますよね。その与件を「第1の軸」に据えてみます。
もう一方の「第2の軸」をブレストで決めますが、ああでもない、こうでもないと様々に軸を試してみては、アイデアの価値を確認するので、作業に多くの時間を費やします。
この軸決めこそが「構造化」と「言語化」です。プロジェクトの新規性や世の中への影響などの「価値」をどのような言葉で表すか。
プロジェクト全体の方向性にも関わりますし、改めて単語として考えようとすると、チーム内でいろいろな言葉が出てくると思います。
みんなが持つ「価値」の言葉をひとつにして、分類の軸とします。
3.決断
ここまで作業をしていくうちに、面白いアイデア、心地よく感じるアイデア、「自分が利用者だったら」「自分が最後まで関わるなら」という気持ちが生まれてくるでしょう。その気持ちを大切に、そのアイデアの価値や意味づけを強化していきましょう。
何となく選ぶのでなく、構造化と言語化のステップを経ることで、選んだアイデアに納得感が出てくると思います。
時には大人の事情でスケジュールやコストといった現実的な部分が優先されるかもしれません。
ただ今までの経験上、「みんながいいといってるし」「会社的にはこれが望まれてるし」のアイデアより「いま我々がやるべきアイデアはこれ」「このアイデアを実現したい」と、主語が「私(たち)」のアイデアのほうが、実現までのパワーが強いなと感じています。
迷ったら「やりたい方」を選んで!
アイデア出しや絞り込みの過程を知らない上層部に説明して納得してもらうフェーズはどこかで出てきますので、その時に自分の言葉で価値を語れるアイデアはやっぱり強いですね。
民主的に投票で決めたら?という人がいるかもしれませんが、「みんながいい」というアイデアって既に世の中にあったりするので(笑)、そこはちゃんと調べたほうがいいですよ。
「そういえば、こういうアイデアって見たことなかったな」という、わくわくするものが見つかれば最高だと思います。
デザイン思考実践レシピをまとめ読み!