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DNA

「この国の法律では本人がその子の父親だと認めない場合はDNA鑑定によって父親だと判断され次第女性にその後の男性の選択権が移ります。」

ある国で恋愛して彼女に子供が出来た。
そんな時、この国のある組織から罪を犯して捕まるように呼び出されて俺は警察の監獄みたいな所で俺の担当と言われる人にこの説明を受けていた。
彼女を妊娠させて父親になると聞かされた俺がどうしてこんな所に連れてこられたのかまだ意味が分からないまま。
その後の選択権って何?

「あなたは彼女の子供の父親だと認めますか?」
そんな質問が投げかけられた。
もちろん彼女に他の男性の気配が無い事も知ってるし認めるも何も俺が彼女の子供の父親だろう。
この国では父親になる事は罪なんだろうか?
そうしたら俺は父親だと返事するべきではないのか?それとも素直に父親だと名乗っていいのか?
このまま意味も分からずこの問いに応えて良いものなのか?
沢山の疑問が頭の中で流れて、真実ではなく今の状況でどう答えるべきかを考えてしまう。
そして答えない俺に対してもう一度質問が繰り返される。

「あなたは彼女の子供の親だと認めますか?」
ここで否定しても所詮DNA鑑定に回され後でやっぱりとなるなら素直に答えるべきなのか?
それにそもそも否定する意味がない。
俺は彼女を愛していて俺が親なんだから俺が彼女と共に彼女の子供を守り育てていく。
と正直に自分の子であると答えることにした。

「たぶん俺の子だと思います。」
「分かりました。たぶんなのですね。
でしたら赤ん坊とあなたとのDNA検査をして再度彼女とあなたの将来について話し合いましょう。
それまでにもしあなたがこの国から逃げてもこの国全ての生き物にはGPSを内蔵しているので逃げ切れませんよ。
またGPSも取り出すと死んでしまうような仕組みで埋め込んであるので取り出すことも不可能です。
あなたの体にもこの国に入る許可をした段階であなたの体の中にGPSを埋め込んであります。これは世界的にこの国の法律が認められていて、どの国に逃げたとしてもこの法律はこの国の者と子供が出来た段階で適応されます。
お忘れなきよう。
ではこれからの生活もまたお楽しみ下さい。」と意味ありげに不気味に笑い釈放された。

彼女は妊娠してから「これからはずっと私と一緒だね」なんて無邪気に言って凄く嬉しそうだ。
どの国でも愛し合う者達が幸せである事にきっと変わりは無いって俺も幸せに思う。
彼女と出会えてよかった。

今日釈放されて家に帰ると心配そうな顔で彼女に迎え入れられた。
父親になる話で質問された話を彼女にしてみる。
「いきなり警察みたいな人に道で捕まるように警察署みたいな所に連れてかれて質問されたんだけど、この国では父親にはなる事は罪なのかな?」
妊娠中の彼女に対してちょっと聞き方にデリカシーと言うか優しさのない言葉だったかな?と悩みながら聞くと少し彼女は困った顔をしながら「この国では子供が出来た男性はその相手の女性から離れる事が出来ないんだよ」と困った顔で言われた。
この国では子どもが出来たら離婚が出来ないって事?しかも男性だけってどういう事?
まだこの国の法律がよく分からない。
彼女にもう少し詳しく聞いてみないと。
今は妊娠中の彼女を大切にしたい。

それから数日たった日の夕食時に彼女はいつも通りにでも、いつもよりも嬉しそうに俺にゆっくり話し出す。
「あなたはとても知的で魅力的だわ。
私はあなたと出会えて本当に良かったって思うの。
でも、私はあなた素敵すぎて貴方を信用出来ない。
でもあなたとは一生一緒にいたい。
だからね私はあなたを食べる事に決めたの。」
えっ?食べるとか言ってる?彼女はいったい何を言ってるんだ?
俺は全く意味が分からないけどなんだかいつもとは違う彼女の態度に動悸を覚える。
そしてまた彼女の話は続く
「この国の女性はパートナーを食べる事であなたの知識も力もスキルも全ての私に吸収する事が出来るの。
私もあなたの全てが理解できるようになる。そして、あなたの知識と力のおかげで私も子どもを育てるだけの力を得て今以上の仕事ができるようになるわ。」
と彼女が聖母マリアな様な優しい笑顔で話を続ける。
でも俺が彼女の言ってる事を理解できないままに話は続く。

「心配しないで、私が貴方を食べたからってあなたが死ぬわけじゃないの。
あなたの意識も精神も私の中で私が死ぬまで生き続けるのよ。
ずっとあなたは私とだけ話して理解しあって生きていけるの。
私がこれから生きていく姿を見守ってくれるだけでいいの。
ただ、今のあなたの体が無くなるだけ。
私との意思の疎通に不自由はないから心配しないで。
子どもの成長も私が死ぬまで私とだけ共に見ていけるわ。」
彼女の微笑みはいつも以上に優しげに天使のような微笑みで愛おしそうに俺を見ながら話は続く。
「貴方は安心して私に食べられて私の1部となってくれればいい。私と貴方はずっと一緒よ。」

俺は逃げるべきなのか?愛しい彼女の表情を見ていたら恐ろしい話をされているはずなのに逃げようと思えない。
俺は彼女に食べられるつもりなのか?
彼女が俺に近寄り俺を優しく抱きしめ頭を撫でながら愛おしそうに話を続ける。

子供が出来た段階であなたに選択権はないの全て女性である私が決めるのよ。
あなたの国にも似た特徴を持つ生き物がいるって聞いたわ。
確かカマキリとか言う名前だったかしら?
それともアンコウって魚かしら?」
そう言いながら彼女はまるで少し面白い話を聞いたようにクスリと笑いながら話をまた続けていく。
幸せな出来事がもうすぐおきるのが楽しみで仕方ないかのように。

「あなたがこの前呼ばれた管理局の人をもう呼んであるの。
DNA鑑定も終わってこの子はちゃんとあなたの子供だって。
今家の外を取り囲んで私達が出てくるのを待ってるわ。
安心して明日からあなたは私の1部よ。これから私達はもう1人じゃなくなる。
幸せでしょ。
ずっと1つになって私達ずっと一緒に居れるのよ。」
そう彼女が話している途中で管理局の人らしい人が家に入ってきて俺は彼らに両脇を抱えられて家を出た。
何事が起きたのか理解出来ないままで。


アンコウの生態を知ってカマキリとかアンコウになったらどんな気分よ?って思ったら妄想したくなっちゃって妄想しちゃいました。
これは過去に書いた物の書き直しをコッソリUP。

今回も写真はみんなのギャラリーからの借り物。
アンティークそうな建物の螺旋形状が美しい。
写真から本人のページに飛ぶようになってたらありがたいのになぁ。
そう書いてたらしばらくしたら改善されてた。
ありがたやありがたや。
素敵な写真お借りしました。
ありがとうございます。

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