「アポロチョコ」のマイクロノベル　他３篇　#32

2023年1月8日 10:47

　アポロチョコの収穫が最盛期を迎えています。採れたてのアポロチョコが食べられるのはいまだけ。大きくなったのを食べようなどと欲張りなことを考えていると、咲いてしまって、チョコは消えてしまうのでご注意を。

　森の中、耳を澄ましてみよう。鳥の囀り、枝のこすれる音、虫の音。そんな音に混じって、ハンショウヅルの鐘の音が聞こえるだろう。そう、半鐘の音、あなたには聞こえない？　森に、この世界に危険が迫っている。本当に聞こえない？　そのあなたの声が聞こえない。

　くるくるくると、蔓を回しながら支柱に巻きつけて伸びていくアサガオ。その回りをなんともせわしなく動き回る生き物がいる。でも、その生き物が去ると、土がちゃんと湿っている。ありがたいことだ。たまにはゆっくりしていけばいいのに、あの生き物。

　ヤセウツボは葉緑体のない寄生植物なのに、日当たりのよいところを好むとある。陽の光を浴びると、進化の途中で落としてきた葉緑体のことを思うだろうか。あなたが落としたのは、この金の葉緑体ですか、それとも銀の葉緑体ですか。いえ、緑の……そんな夢をみながら。

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