「オニシバリ」のマイクロノベル 他3篇 #81
山道で気づく花の香り、緑の花を咲かせるオニシバリだ。ずいぶん山に木が増えた。迎え撃つ準備を山が知らせてくれている。鬼が攻めてくる日が近い。この木の繊維で綯った縄は、鬼には切れぬという。縛り上げるのだ。
冬の空っ風に乾ききった藤の莢がカランと音を立てて落ち、中の種子がバラバラとこぼれる。その様子から未来を予言するのが、藤莢占い師だ。だがそれを攪乱するのは、子供らによる莢の投げ合いだ。それで未来は変わる。
松葉の影茶をご存知か。大鍋に沸かした湯に松葉の影を映し、陽の動きにあわせて影を逃がさぬよう半日ほど煮る。これがボケ予防によく効くというのだが、こうして鍋を一日動かして煮ているとボケたなとよく言われる。
この細い繊細な雲を描くには、特別な筆がいるんだ。ひつじ雲の毛がよく使われる。その筆を持って、腕を長く長く長く長く伸ばして、さっと描くんだけど、ぼくはまだ新米でね。まず短いのをたくさん描く練習をしてる。
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