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「3」のマイクロノベル 他3篇 #82

「3」が落ちていた。つまり3の差分だけ、これまでとは世界は変わってしまったことになる。裏返しになった3を拾い上げると、3はとても軽かった。そして、小さく鳴いた。3と暮らすようになったのは、それからだ。

 3と暮らすいっても、なんということはない。朝起きたら「おはよう」といい、「ただいま」と帰ってくれば、3はちょっと起き上がって応えてくれる。世界の差分が部屋にいるというだけで、外の世界と違う気分になる。

 そこへ6が落ちてるのを見つけ、家に連れて帰ったところから様子が変わった。加減乗除の魔法により、9と3と18と2が生まれた。それから派生的に、1や5や7までも生まれ、部屋の中は自然数でいっぱいになった。

 さらに落ちていたのは「ア」だった。数字じゃないんだ。これも家に連れ帰ると、自然数たちは困惑し、やがて「ア1」「ア2」などの座席が生まれた。開演のブザーが鳴ると幕が上がり、新たな世界の上演がはじまった。

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