非常階段のマイクロノベル 他3篇 #38
さあ、好きなだけ干したまえ。あなたはそう言って、非常階段を貸してくれた。マットレスとふとんをあわせて三枚。あと、枕を干すだけでせいいっぱいだった。大根も干して、いっしょに日向ぼっこをすれば良かった。
年に一度、一番くじが当たった人だけに許される。その人は右手にコーラの缶を持って現れると、一気に飲み干して逆さにしてみせ、にやりと笑った。そして「ミゴ、ナルテス」と叫んで、空きカンを思い切り投げ捨てた。
恋の解錠屋、どんな錠前でもお引き受けいたします。縁切りしたいこんな鍵はありませんか。しかし、このところ商売敵の溶接屋が出没して困っている。次は切断屋とし開業すべく、金ノコのスキルを磨いているところだ。
こんな端を歩くのはてっきりネコだと思っていたけれど、爪痕があるのはイヌだとも聞いた。お前はネコだったのか、イヌだったのか。それともネヌだったのか、イコだったのか。ただ見知らぬものの歩いた痕だけが残る。
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