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「十月桜」のマイクロノベル 他3篇 #8

 十月桜は春と秋に咲くのでその名があるが、閏十月桜は何十年かに一度しか咲かない。そのため、その花を目にすれば十年長生きし、蜜を口にすれば百年長生きできる。でも、ほとんどは偽物らしい。いま作ってるから。

 桜花宇宙論によれば、花びら一枚一枚の挙動が、どこかの宇宙の一生と対応しており、花びらの舞う偶然性が世界を決めているという。ならば、桜の塩漬けにされた花びらに対応する宇宙はどうなってしまうのかが知りたい。

 桜の塩漬けには、花びらが多く採れて色がよい八重桜「関山」が主に使用される。つまり、塩漬けとなる宇宙が偏在するということだ。これが時空の揺らぎを生み、この宇宙、ひいては生命がある。心して戴くといい。

 

 都内へ出たついでに、駒込から少し歩く。駅前に染井吉野桜記念公園と桜のポスト。江戸時代に染井村と呼ばれていた辺りには、植木屋が多かったとか。英国の植物学者ロバート・フォーチュンもこの辺りを歩いたのだな。

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