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視察報告:長崎県対馬市における「海洋ごみ対策」について(2019年11月)

2019.12.03

長崎県対馬市での視察では、「海洋ごみ対策」「移住・定住促進策」について、調査いたしました。今回はこのうち「海洋ごみ対策」について、その概要を報告します。(2019年12月の蒲郡市議会定例会において、本視察・調査の内容に基づいて、一般質問を行いました。本報告も、議会質問の内容に沿っています。)

● 海洋ごみ対策について

(1)対馬市における海洋ごみの現状

日本列島と朝鮮半島の間に位置する対馬市には、年間で推計2万立方メートルの「海洋ごみ」が漂着しています。「海洋ごみ」とひとことに言っても、その実態によって3種類に分けることができます。ひとつは、海を漂っている「海洋漂流ごみ」、もうひとつは、海を漂ったのち、海岸に流れ着き、海岸に打ち上げられた「海岸漂着ごみ」、そしてもうひとつが、海底に沈んでいる「海底ごみ」です。

対馬市で対策に取り組んでいるのは、この中でも、「海岸漂着ごみ」、海を漂ったのちに、海岸に流れ着いた、海岸に打ち上げられたごみについてです。


画像1対馬の海岸に流れ着く「海岸漂着ごみ」には、様々な種類があります。流木など自然のものももちろんあるのですが、最も多いものは発泡スチロールで全体の約4割を占め、ついでペットボトルやポリタンクなどの空き容器(農薬や洗剤が入っていた容器)が25%を占めます。また漁網やロープ、空き缶、空き瓶やガラス、また食器類など、本当にいろいろな種類のごみが流れ着いてきています。

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私が見たものですと他に、ビデオデッキがありました。VHSビデオのビデオデッキです。すっかりさびついていて、メーカーや製品番号などは確認できるような状態ではなかったのですが、ある程度、重さもあるものだと思うのですが、こんなものまで流れついてくるのかと思わされました。

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毎日のように大量のごみが、海から押し寄せてくる、そんな状況です。実際に、現場にお伺いしましたが、海岸の全体を埋め尽くすように、様々なごみが散乱していました。到底回収しきれる量ではありません。

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日本列島と朝鮮半島の間に位置する対馬に流れ着くごみですから、大陸からのごみが多いのではないか、とも思われるのですが、ごみを実際に手に取ってみると、中国や朝鮮半島から渡ってきたと思われるものもたしかに多いのですが、それ以上に、日本からのごみが実際には多くありました。

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しかも、ペットボトルや空き缶の図柄を見ると、現在では販売されていない商品や、一昔前のパッケージデザインのものがほとんどでした。つまり、何年もかけて、あるいは十数年をかけて、海を漂って漂って、対馬の海岸に流れ着いてきていることがわかります。

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まさにこの対馬の「海洋ごみ」の問題は、世代を超えた問題であり、実は私たち自身のライフスタイルの問題であると同時に、地球規模の問題でもあることを実にはっきりと示しています。

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さらに、今回は深く立ち入りませんでしたが、ごみの散乱した海岸で、足元をよく見てみますと、大変細かな、数センチから数ミリくらいの大きさの、小さなプラスチックの破片、発泡スチロールの破片が無数にありました。いわゆるマイクロプラスチックです。どんなにごみを拾っても、このような小さな破片までは行き届かないとのことで、こうした小さなプラスチックや発泡スチロールの破片が、海へ流れ出していき、マイクロプラスチックとなってしまうということでした。まさにその現場を目の当たりにいたしました。

(2)対馬市における海洋ごみの処理プロセスについて

対馬市における、「海岸漂着ごみ」の処理のプロセスは、まず、集められたごみを分類するところから始まります。発泡スチロール、流木、リサイクルできるペットボトル、リサイクルできないペットボトル、廃プラスチックなど、細かく分けられて、いわゆるフレコンバッグ、黒色のトン袋という、高さが1メートルほどの大きな袋に詰められます。画像8

視察ではごみが回収され集められた現場にも伺いましたが、黒い大きなフレコンバッグが234袋、ごみの種類別に分けられて、置き場に整然と並べられていました。担当の方のお話によると、週末の土曜日曜だけで、138人の人の力で、これだけの量が集められたとのことでした。これだけたくさんのごみが、日夜流れ着いてきているという事実に、驚きを禁じ得ませんでした。

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こうして分別されたごみのうち、リサイクルできる発泡スチロールやきれいなペットボトルはリサイクルに回され、残ったものは最終処分場で処分されるということでした。

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(3)「海岸漂着物処理推進法」について

「海岸漂着ごみ」への対応については、「海岸漂着物処理推進法」という法律の枠組みに沿った場合、国からの補助金が出るという仕組みになっています。対馬市でもこの枠組みを利用しており、ごみ処理のための予算3億円のうち、9割が国の補助、1割が対馬市の負担となっています。

補助金を受けるためには、都道府県において「海岸漂着物対策推進地域計画」を策定する必要があり、同計画において、「重点区域」として定められる必要があります。

なお、対馬市においては、すべての海岸が「重点区域」として定められています。

(4)地域の関わり方について

回収、分別、リサイクル、処分という4つの段階があるごみ処理のプロセスの中で、対馬市においては、最初の2つ、回収と分別については、地域のボランティアの方々や漁協の漁師の方々、また、企業などの団体から集まるボランティアの方々が担っています。

あとの2つ、リサイクルと処分については、対馬市が直接担当しています。対馬市においては、漁師の方々やボランティアの方々など、地域の人の協力があってはじめて、ごみ処理のプロセスが回っていく、という状況になっています。

(5)蒲郡市の現状について

蒲郡市においても「海岸漂着物処理推進法」にもとづき、海岸漂着ごみの処理を進めています。蒲郡市内で重点区域に指定されているのは「形原地区」「蒲郡地区(竹島海岸〜海洋ヨットハーバー西側)」の2カ所です。形原地区では2018年度(平成30年度)に5回、蒲郡地区では12回の作業があり、愛知県の補助金を受けて、業者に委託して、ごみの回収を実施しました。年間の回収量は、3万5,400キログラムです。対馬市とは異なり、蒲郡市での海岸漂着ごみの多くは草木や流木で、ペットボトルや空き缶、発泡スチロールなどはあまり目立たない状況のようです。また、台風の上陸回数が多い年にごみの量も増加するという傾向があります。

なお、蒲郡市内で重点区域の指定を受けているのは、「形原地区」と「蒲郡地区」だけで、「西浦地区」は除外されています。このため、愛知県の補助金の支給対象外となり、西浦地区のごみの処理については、地域の方々や地元の漁師さんにお願いして、ボランティアで清掃・回収作業にあたっていただいています。市内の他の地区が重点区域に指定されている中、西浦海岸だけが除外される理由はないと考えられ、非常に残念です。西浦地区においても、重点区域としての基準は満たしていると考えられます。県への働きかけが必要です。

(6)まとめにかえて画像11

対馬に海からのごみが大量に流れ着いている、という話は、以前から知ってはいたのですが、今回、現場に伺ってお話を聞いて、その規模の大きさに、膨大な量のごみに、ただただ圧倒されるばかりでした。そして、日本からのごみが対馬に流れ着いてきていることを考えると、自分たちがその原因であるかもしれないというだけでなく、他国の海岸にもおそらく、例えば、太平洋を通じて、ハワイやはるかアメリカ大陸まで、日本からのごみが流れている可能性も十分に考えられるわけです。軽々しく他の国を批判することなど、決してできないと、改めて感じました。

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将来にわたって美しい地球を残していくために、また、この世界が持続可能であるためには、ポイ捨てをしないことはもちろん、ごみを減らすこと、プラスチックを減らすことが、必要不可欠なことであると、再認識をさせられました。それは同時に、私自身にできることは何か、深く問い直す機会でもありました。

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(お世話になりました対馬市役所のみなさまに感謝・御礼を申し上げます。ありがとうございました。)


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