メッセージ 第3回
※5月25日22時49分にガンで闘病中の元プロ野球選手の新谷嘉孝さんがお亡くなりになられました。昨年は、闘病の中にもかかわらず地元に戻ってこられ講演会を開催したり、今後も野球人生や自分と同じように闘病をされている方たちに勇気を与えたい、支え合いたいという前向きな思いを持ってガンと向き合っておられました。
また同級生や後輩の方達が鹿児島で闘病されている新谷さんに三重県から多くのエールを送っていました。新谷さんが関わる事業を何人かの人たちがそれぞれ企画し、準備している状況でした。それだけに残念でなりません。
私も闘病中も意欲的に自分の人生をとらえてがんばっておられた姿に多くのことを学ばせていただきました。
子どもたちに野球やスポーツの素晴らしさを伝えたいという想いでスタートしたこの連載も残念ながら今回で終了とさせていただきます。
実を言いますと、新谷さんは体調のすぐれない中ベットの上から携帯電話のテレビ会議でインタビューを受けてくれていました。最後まで何かを伝えたいという想いが今でも伝わってきます。
今回の記事は病状が思わしくなかった新谷さんと途中で連絡がとれず、新谷さん本人の最終的な了解を得ていませんが、ご家族と親しい友人の方に了解をもらい掲載させていただきます。ご理解いただきますようよろしくお願いします。
新谷嘉孝さんのご冥福をお祈りいたします。
第3回 投手は打者と打者は投手と
投手は打者と打者は投手と話そう。
1、相手の考えていることを知ろう
2、同じ考え方の人ばかりと話すと偏りが生まれる
1、相手の考えていることを知ろう
野球は心理的スポーツという話を前回させてもらいましたが、心理には自分の心理をコントロールして、相手の心理を読み取るということが求められます。まず、自分の心理をコントロールするには、練習を大切にすることです。厳しい練習に耐え抜いて、自らの頭で考えて練習を行うことです。
練習だから、これでいいと考えているのであれば、試合で100%の力は発揮できません。チャンスやピンチなどの緊張する場面で弱い自分が出てくる割合が大きくなります。厳しい練習は試合での自分を一番支えてくれるものです。チャンスやピンチで揺れ動く気持ちをコントロールするためにも練習を頑張ってもらいたい。
ただ、野球は自分だけではなく、相手があって成り立つものです。投手は打者を打ち取ること、打者は投手が投げたボールをヒットすることが仕事です。それでは投手は打者と打者は投手とじっくりと話し合うことも練習の一つです。
投手がピンチの時にどういう心理状態なのか、打者がチャンスの時にどういう心理状態になるのか。仲間でよく議論しておく必要があります。もちろん同じ場面でも人によって心理状態は異なるかもしれませんが、投手は何を考えるケースが多いのか、打者はどういうことを考えがちなのかといったことを日常からお互いに研究していく必要があるのではないでしょうか。
相手の気持ちを知ることはとても大切です。技術と体力だけでは試合を勝ち抜けません。投手の気持ちを知ることは打者にとって大切なことです。その逆もまた同じです。
2、同じ考えの人ばかりと話すと偏りが生まれる
野球に限らず、同じ考えの人ばかりと話すと偏りが生まれるものです。自分では正しいと思っていることでも、他の人からみたら随分おかしなことをしている場合もあるかもしれません。また、完璧と思っていても他の人からみたらスキがあるかもしれません。
同じ考えの人が集まるとどうしても、そういった不足しているところやスキが見つけにくくなってしまいます。なので、できる限り自分の考え方と違う人と意見を交わすことは野球を上達させていく上で大切だと思います。
ここで誤解してほしくないのは、意見を交わすことです。相手を議論で打ち負かそうとか、相手の意見を疑いなく受け入れるということではなく。むしろ違いを認識することです。もっと言えば、相手の意見も尊重しながら、意見を交わすことで、考え方のヒントや試合での心理的な駆け引き役立つと私は野球人生の中で感じています。
すべては試合で投手であれば打者を押さえる、打者であればクリーンヒットを打つ。そういう目的のために多くの人の考え方に触れておくことは大切です。また、野球関係者以外の人の話や意見にも耳を傾ける姿勢はとても大切です。
ただ、誤解をしてはいけないのは、結果は自分の責任ですから、意見を言ってくれた人やアドバイスしてくれた人のせいにはしてはいけません。誰かのせいにする選手はどこかで成長もとまってしまいます。
一瞬にかける野球というスポーツは、その一瞬に向けての準備が必要です。体力と技術だけでは試合を勝ち抜けません。その準備の中にいろんな情報と意見に触れて自分を磨くことが大切です。そして、結果は人のせいにしないという自律した考え方が必要です。
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