漫才論| ⁵²ネタってどうやって育てたらいいの❓
漫才は台本が完成しても,ネタはそこからどんどんと育てていくことができます。場合によっては無限に育てることも可能です
ネタの育て方には,「台本を推敲し続ける」という方法と,「アドリブを入れながら演じる」という方法があります。「台本を推敲し続ける」というのは結構大変なことですが,「アドリブを入れながら演じる」という方法でネタを育てるのはそれほど難しいことではありません
そこで今回は,アドリブを入れて演じながらネタを育てる方法について,和牛の「口裂け女」のネタを題材にして説明します(和牛は二人でしゃべりながらネタを作ります。それはいわば「最初からアドリブを入れて演じながらネタを育てているようなもの」なので,題材にさせていただきました)
和牛の「口裂け女」というネタ
これは,「口裂け女」というのがどんな話なのかを演じてみるというネタで,水田さんが前半は口裂け女役でボケ,後半は脅かされる側になってボケるというのが基本の構成です
このネタにはいろんなパターンが存在していますが,今回題材として使いたいのは,「ビーチボーイズバージョン」です。後半脅かされる相手として反町隆史さんや竹野内豊さんが登場するバージョンです(ちなみに,「ビーチボーイズ」というのは1997年に大ヒットしたドラマです)
ネタが育つ過程を想像してみる
当初はこのネタに「『ビーチボーイズ』のメンバーは一切登場していなかった」と仮定して,アドリブを入れながら演じることによってどのようにネタが育つものなのかを書いてみます(脅かされる人が「かっこいい人」というボケに水田さんがどのようにアドリブを加えていったか,川西さんがそれにどのようにアドリブでツッコんだかを想像してみました)
最初はただの「かっこいい人」という設定が,「反町隆史です」とアドリブでボケてみたによってどんどん新しいボケが生まれている様子が分かると思います
❸の「竹内豊です」はボケとしては弱いので,一番最初はただの間違いで,でもそこから「"の"を盗む」というかなりおもしろい展開ができあがっていったのではないかというのは私の予想です
❶~⓫まで一気に新しいボケとツッコミができあがるというより,何回かアドリブを入れながら演じることによって少しずつできあがっていくというのが,ネタを育てるイメージです。毎回やるたびにアドリブを入れ,その中でよかったボケや展開がその後も本ネタとして採用されるというかんじです
「反町隆史です」や「竹内豊です」はそんなに強いボケではありませんが,最初は弱いボケでも,また単なる間違いでも,それがきっかけで大きなボケや展開が生まれることはよくあります。ですから,練習であっても毎回やるたびにアドリブを入れていけば,ネタは確実に育ちます
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THE MANZAI magazine
❶「自分たちにしかできない漫才スタイル」を確立する方法 ❷しゃべくり漫才のうまさは「相槌」で決まる ❸「漫才台本の書き方」と「オチのつけ方」 ➍ボケやツッコミってどのようにして思いつくものなの? ❺「言い訳-関東芸人はなぜM-1で勝てないのか-」は"現代漫才論"ではない-ナイツ塙さんが何を「言い訳」しているのかが分かれば,関東芸人がしゃべくり漫才でM-1王者になる道が見えてくる- ❻漫才詩集「38」
フィクション漫才『煮豆🌱』-いとこい師匠のテンポで-
作: 藤澤俊輔 出演: おせつときょうた
あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】