[落語] 靴屋は靴を履かない
#オチを予想してお楽しみください (6文字)
客:すみませ〜ん
靴屋:はいはい,いらっしゃいま…あれ?どうされたんです?
客:え?何がです?
靴屋:いや,何しに来られたのかと思いまして…
客:「何しに」って……,靴を買いに来たに決まってるじゃないですか
靴屋:え?そうなんですか?
客:当たり前でしょ,靴屋に来たんですから
靴屋:いやでもお客さん靴履いてるのでね…
客:いや…,履いてますよ,そりゃあ
靴屋:(笑)だったら靴いらないじゃないですかぁ〜
客:何を言ってるんですか?
靴屋:いやだって…,靴を履いてない人が靴を買いに来るんなら分かりますけどね,靴を履いてる人が靴を買いに来るなんてねぇ。そんな話聞いたことあります?
客:いやいや…,聞いたことあるも何も,普通みんな靴履いて靴買いに靴屋に来ますでしょ
靴屋:あ〜,二足目ってことですね?
客:何足目かは知らないですよ。それは人それぞれだろうし
靴屋:そうなんですか?
客:でも確実に「二足目」ではないですけどね
靴屋:え?じゃあお客さんもしかして?今日は靴を買いに来てくださった?
客:だからさっきからそう言ってるじゃないですか
靴屋:いやぁ〜そうでしたかぁ〜。それは奇遇ですねぇ〜
客:奇遇って?
靴屋:いやぁ私も今ね,丁度「靴を売りたいなぁ〜」って思ってたところなんですよ
客:……。あのねぇ…,そういうことあんまりお客に言わないほうがいいですよ
靴屋:え?なんでです?私は「靴を売りたいなぁ〜」って思ったから,靴屋になったんですよ
客:分かってますから,言わなくてもそれは
靴屋:そうなんですか?お見通しってことですか?
客:それを「お見通し」って言うのかはよく分かんないですけど…,それとねぇ…
靴屋:はい,なんでしょう
客:ご主人,なんで靴履いてないんです?
靴屋:え?何がです?
客:だから,ご主人靴屋なのに「なんで裸足なんですか?」って聞いてるんですよ
靴屋:なんで裸足かって?
客:えぇ,なんでなんです?
靴屋:お客さ〜ん,私を誰だと思ってるんです?
客:誰って…
靴屋:靴屋ですよ
客:分かってますよ
靴屋:いや,分かってない。分かってないからそういうこと聞くんですよ
客:どういうことです?
靴屋:靴屋に向かって「なんで裸足なのか」って聞くなんておかしいでしょ。いいですか,靴屋っていうのは,靴を売る人のことを言うんですよ
客:分かってますよ
靴屋:つまり,靴を売る側の人間ってことです
客:だから分かってますって
靴屋:靴を売る側の人間は靴を履かない。当然のことでしょう
客:いや,別に靴を「履く側の人間」と「売る側の人間」って分かれてないでしょ
靴屋:何を言ってるんですか。例えばね,お客さん,寿司屋に行ったことあります?
客:ありますよ,そりゃあ
靴屋:寿司屋に行くと,寿司を「握る側の人間」と「食べる側の人間」っていうのがいるでしょ。寿司を握る側の人間,つまり板前さんがもし寿司を食べながら寿司を握っていたらどうです?嫌でしょ。嫌じゃないですか?
客:そりゃ嫌ですよ
靴屋:同じことですよ
客:……
靴屋:寿司を握る側の人間が,寿司を食べながら寿司を握っていたらお客さんは嫌な思いをする。だったら靴を売る側の人間が靴を履きながら靴を売っていたらきっとお客さんは嫌な思いをするだろうと思いましてね,私はいつも裸足で靴を売っている,というわけなんですよ
客:裸足で靴を売ってる方が気になると思いますけどねぇ…
靴屋:え?なんです?
客:いや別に…。じゃあご主人は,靴を売る時だけ裸足なんですね?
靴屋:どういうことです?
客:だから,普段は靴を履いてるんでしょ
靴屋:履いてないです
客:履いてない?
靴屋:はい。裸足ですね
客:裸足!?
靴屋:えぇ,私はいつでも裸足です
客:「いつでも」って…,どこかに出かけるときも裸足で行くんですか?
靴屋:えぇ,どこへ行くにも裸足ですね
客:なんで?
靴屋:なんでって,裸足のほうが気持ちいいでしょ
客:まぁ…そうですかねぇ…
靴屋:靴なんて履いてたら蒸れたりなんかしてねぇ,嫌ですからね
客:あの〜…,じゃあなんで靴屋やってるんですか?
靴屋:それは「靴を売りたいなぁ〜」って思ったから…
客:そういうことじゃなくて,「自分は靴を履くのが好きじゃないのになんで靴を売る仕事を始めたんですか?」って聞いてるんですよ
靴屋:あぁ,それは世のため人のために決まってるじゃないですか
客:世のため人のため?
靴屋:そうですよ。私は靴を履くのは好きじゃないですけどね,普通の人は好きなんでしょ,靴履くの
客:まぁ,好きっていうかねぇ〜,ないと困りますよ
靴屋:でしょ。だから私は「ぜひ皆様のお役に立ちたい」という思いで,靴屋を始めたんですよ
客:そうなんですか?
靴屋:そうですよ
客:それなりの志を持ってやっているということですか?
靴屋:当たり前じゃないですか。そんなことよりねぇ,お客さん, 丁度いいところに来てくれましたよ
客:え?なんです?今日丁度安売りの日?
靴屋:いや,私今ね,丁度「靴を売りたいなぁ〜」って…
客:思ってたんでしょ
靴屋:なんで知ってるんです?
客:さっきも聞きましたから
靴屋:私はねぇ,「靴を売りたいなぁ〜」って…
客:思ったから靴屋になったんでしょ
靴屋:それも知ってるんですか?なんでもお見通しなんですねぇ〜
客:……
靴屋:でも,お客さんだって丁度「靴を買いたいなぁ〜」って思ったから,今日こうしてうちの店に来てくれたんでしょ?
客:まぁ,靴屋に来る人は大抵「靴を買いたいなぁ〜」って思った時に靴屋に行きますからね
靴屋:私が今丁度「靴を売りたいなぁ〜」と思っていたところに,丁度「靴を買いたいなぁ〜」って思っているお客さんがやって来た。こういうのを「運命的な出会い」って言うんですよね?
客:……。「買い物」って言うんですよ,こういうのを
靴屋:買い物?「運命的な出会い」って言うんじゃ…
客:あのねぇ,全然運命的な出会いじゃないですし,それにそんなことどうでもいいんですよ。こっちは靴を見たいんですから
靴屋:あぁ,そうですね。お客さん,今丁度「靴を買いたいなぁ〜」って思ってるんですもんね
客:だから早く靴を…
靴屋:分かってますって。そんなに焦らなくても靴は逃げたりしませんから。靴っていうのは意外にも,そこに足を入れない限り自分で歩いてどっかに行っちゃったりはしないんですよ
客:知ってますよ!早く靴を…
靴屋:はいはい。で,今日はどんな靴をお探しで?
客:あぁ,今日はねぇ,革靴が欲しいなぁと思いましてね
靴屋:革靴ですか。じゃあ,何革にするのかはもうお決まりですね?
客:え?何革?
靴屋:えぇ,そうです。もう決まってますでしょ?
客:何の革にするのかっていうのは前もって決めてくるものなんですか?
靴屋:そうですねぇ。まぁ,最低でも,何革にするのかくらいは家で決めてから来ますよ,普通
客:家で決めてから来ます?
靴屋:えぇ…。あれ?お客さん,もしかして初めてですか?
客:初めて?
靴屋:えぇ,初めてじゃないんですか?
客:何がです?
靴屋:いや,意外に靴のことあまり知らないみたいなんでね,靴を買うの初めてなのかなぁって
客:そんなわけないでしょ。履いてるでしょ,靴
靴屋:あぁ,そういえばそうでしたね。靴買うの初めてだったら裸足で買いに来ますもんね
客:……。さっきから聞きたいと思ってたんですけど…,裸足で靴屋に来る人なんています?
靴屋:まぁ〜,滅多にいないですね。同業者くらいでしょうね,裸足で靴屋に来るのは。偵察っていうんですか?
客:みんな靴履いてますからね,靴屋さんだって
靴屋:で,どうします?何革にします?
客:何革って…,普通牛革なんじゃないんですか?
靴屋:まぁそうでしょうね
客:じゃあ牛革で
靴屋:ちょっと待ってくださいよお客さん。うちはいろんな革で革靴を作るということにかなりのこだわりを持った靴屋なんですから
客:いろんな革って…,どんな革があるんですか?
靴屋:まぁそうですね。ワニ革やヘビ革はもちろん,今ねぇ,じわじわと人気を集めている革靴があるんですよ
客:へぇ〜,何の革でできた革靴です?
靴屋:みかんの皮でできた革靴
客:え?なんですって?
靴屋:だから…,みかんの皮でできた革靴
客:みかんの皮でできた革靴?
靴屋:えぇ。みかんの皮のビタミンCが足に染み込んで健康にいいという大変画期的な革靴でしてね…
客:画期的と言えば画期的ですけど,みかんの皮でできた革靴なんて聞いたことないですよ
靴屋:確かにね,まだあまり知られてませんからね。でもねお客さん,これから絶対はやりますよ
客:みかんの皮でできた革靴が?
靴屋:えぇ,絶対はやります
客:「絶対」って…
靴屋:絶対にはやります!
客:なんで言い切れるんですか
靴屋:それがねぇ,丁度今朝のニュースで履いてたんですよ
客:誰が?
靴屋:トランプさん
客:トランプさんて…,あのアメリカの大統領の?
靴屋:そう!あのアメリカの大統領のトランプさんが,みかんの皮でできた革靴を履いている映像が流れましてね…
客:え?トランプさん,履いてたんですか?みかんの皮でできた革靴を?
靴屋:そうなんですよ
客:スーツを着て,みかんの皮の革靴を履いてたんですか?
靴屋:私は映像を見てないんでね,詳しいことは分からないんですけど,まぁでもおそらくスーツでしょうねぇ。トランプさんはスーツしか着ないですからねぇ
客:普段は普段着着てるんじゃないんですか?トランプさんだって
靴屋:なぁ母さん,トランプさんが履いてたんだろ?みかんの皮でできた革靴
靴屋の妻:えぇ,履いてましたよ
靴屋:ほらね。で,トランプさんはスーツ着てたのかい?
靴屋の妻:えぇ,そうですよ
靴屋:ということは,スーツを着て,みかんの皮の革靴を履いてたってことだよなぁ
靴屋の妻:当たり前じゃないですか。トランプさんはスーツしか着ないんだから
靴屋:ほら,トランプさんはスーツしか着ないって
客:そこはどうでもいいんですよ
靴屋:まぁそれでね,今朝急遽,みかんの皮の革靴のトランプモデルっていうのを作ったんですよ
客:そんなにすぐ作れるんですか?靴って
靴屋:すぐ作れますよ。みかんの皮をうまいことむいて,靴の形にすればいいだけですからね
客:それはそれですごい技術ですけどねぇ
靴屋:これなんですよ〜
客:あぁ〜
靴屋:どうです?
客:これがトランプモデルですか?
靴屋:えぇ
客:……。意外にかっこいいですねぇ…
靴屋:ね,いいでしょ!
客:ご主人,意外にいい腕持ってるんですねぇ
靴屋:意外って…
客:ただ…,色がねぇ…
靴屋:色?
客:まぁでもみかんの皮だから,当然この色しかないんですよね
靴屋:そうですねぇ…,まぁ基本的には。ただ…,ご希望であれば,オレンジの皮,だいだいの皮,レモンの皮,ゆずの皮,すだちの皮,かぼすの皮,グレープフルーツの皮などなど,どんな皮でもすぐに作れますよ
客:「すぐに作る」っていう才能があるんですねぇ,ご主人は
靴屋:まぁそうですね。ですからお好きな色を選んでいただいて…
客:そうですか……
靴屋:なんか今,流行ってるんでしょ?カラーバリエーションっていうんでしたっけ?
客:あぁ,はやってますねぇ
靴屋:これからはやっぱり靴もね,カラーバリエーションっていうのが大切だと思うんですよねぇ〜
客:大切だと思いますけど…,カラーバリエーションの幅が狭すぎません?
靴屋:どうします?何色にされます?
客:いや〜,実は……,このカラーバリエーションの中にも僕が欲しい色がないんですよねぇ…
靴屋:あぁ,そうですか。何色が欲しいんです?すぐに作りますよ
客:いや,でも,みかんの皮でその色はたぶん無理ですよ
靴屋:いやいや,それは分からないでしょ
客:いや,無理ですって
靴屋:とりあえず何色か教えてくださいよ
客:でもねぇ……
靴屋:どんなご要望にもお答えしたいという意欲だけは誰にも負けませんから!
客:そうですか?
靴屋:はい
客:じゃあ……,白
靴屋:……。白ですかぁ〜
客:やっぱり無理ですよね。みかんの皮のトランプモデルで,しかも白
靴屋:いや,無理ではないんですけどねぇ…
客:え?作れるんですか?
靴屋:作れるって言うか…,実はねぇ…,あるんですよ,すでに
客:あるんですか?
靴屋:えぇ,あるんです
客:じゃあ見せてくださいよ
靴屋:ちょっと待ってくださいね。お〜い,母さん。あれどこにある?
靴屋の妻:あれってなんですか?
靴屋:あの〜,トランプモデルの白
靴屋の妻:トランプモデルの白?
靴屋:そうだよ。お前さんどっかにしまってたろう
靴屋の妻:トランプモデルに白なんてありましたっけ?
靴屋:ほら,あれだよ。今朝「これどうしようか」って話してた…
靴屋の妻:あぁ,あれですか
靴屋:そうだよあれだよ。あれどこにしまった?
靴屋の妻:どうするんです?あの靴?
靴屋:「どうする」って,お客様にお見せするんじゃないか
靴屋の妻:え〜!? あれは「売り物にならない」ってあなたも言ってたじゃないですか
靴屋:いいから,お客様がどうしても「トランプモデルの白が欲しい」っておしゃっているんだ。とにかく持ってきなさい
靴屋の妻:わかりましたよ。ちょっと待ってください
靴屋:すみませんね。ちょっとうちのが奥にしまい込んじゃったみたいで
客:今奥さん,「あれは売り物にならない」って言ってましたよねぇ
靴屋:いやいや,それはこっちの話ですから
客:私にも関係のある話じゃないですか
靴屋:そうなんですか?
客:「そうなんですか?」じゃないですよ
靴屋:まぁとりあえず見るだけ見てくださいよ。ね,見るだけ
客:……。わかりましたよ。とりあえず見ますよ
靴屋:お〜い,まだかい?
靴屋の妻:はいはい。ありましたよ。これですね
靴屋:おぉ,これだこれ。トランプモデルの白
客:あぁ,これがトランプモデルの白ですかぁ…
靴屋:ね,白いでしょ
客:確かに白いですねぇ…
靴屋:これねぇ,全くの偶然なんですけど,湿気の多いところに置いておいたらカビがびっしりとはえて,白くなったんですよ
客:偶然ではないでしょ
靴屋:こういうのを「奇跡」って言うんでしょ?
客:そのプラス思考が奇跡ですよ
靴屋:じゃ,お買い上げで
客:買いませんよ
靴屋:え?なんで?
客:「なんで」って…
靴屋:これ,お客さんがあんなに欲しがっていた,あのトランプモデルの白ですよ
客:分かってますけど,こんなカビだらけの靴なんていりませんよ
靴屋:そうですか?駄目ですかカビは
客:当たり前でしょ
靴屋:かといってこのカビをきれいに落としてしまったら白くなくなっちゃいますからね。それはそれで駄目なんでしょ?
客:まぁそうですけど…
靴屋:……。わかりました。ではこうしましょう。白にこだわっているお客さんのために,カビはこのまま残します。その代わり,今この白のトランプモデルをお買い上げいただきますと,もれなく,餃子の皮でできた白い革靴を差し上げます。これでどうです?
客:いらないですよそんな靴
靴屋:え?なんでです?
客:「なんでです?」って,カビの靴と餃子の皮の靴でしょ
靴屋:そうです
客:「そうです」じゃないですよ
靴屋:何が駄目なんです?両方とも白の革靴ですよ。しかも,餃子の皮でできた革靴は差し上げるって言ってるんですよ
客:だからそれもいらないんですよ
靴屋:だからなんでです?
客:なんでって…,雨の日とか困るでしょ,餃子の皮でできた革靴なんて
靴屋:え?あぁ……いや,それなら大丈夫ですよ。雨の日に履けば,水餃子になりますから
客:どこが大丈夫なんですか
靴屋:水餃子になれば……,それはそれで役に立つでしょ
客:どう役立つんですか?
靴屋:……まぁ例えば…,雨の日に歩いていれば…,小腹がすくこともあるでしょ
客:食べろっていうんですか?足に履いている水餃子を
靴屋:まぁ確かに足に履いてるのでね,衛生面での問題もありますから,私の方から食べることをお勧めすることはできませんけれども…。まぁでも,飢え死にするよりは,足に履いている水餃子だってなんだって,食べた方がいいですからねぇ
客:小腹がすいたくらいで飢え死にしたりしませんからね
靴屋:そうなんですか?
客:「そうなんですか?」じゃないですよ。それにねぇ,そもそもその餃子の皮でできた白い革靴ですか?それを雨の日に履けば本当に水餃子になるんですか?
靴屋:え?あぁ……そうですねぇ……ごくまれに…
客:ならないですよねぇ
靴屋:ならないですけどぉ〜
客:なんで嘘つくんですか
靴屋:すみません。今丁度「靴を売りたいなぁ〜」と思ってたところだったんでつい…
客:「つい」じゃないですよ。そんなことしたって売れないですからね
靴屋:そうなんですか?
客:だいたいなんなんですかこの店は。変な靴ばっかり作って
靴屋:別に変な靴を作ってるわけじゃないですよ
客:作ってるじゃないですか変な靴ばっかり。みかんの皮の革靴とか,餃子の皮の革靴とか…
靴屋:いや,それは違います。私はお客さんに喜ばれる靴を作りたい一心で,日々ありとあらゆる革を試して靴を作っているんです
客:わざと変な靴を作ってるんじゃないんですか?
靴屋:わざと変な靴を作ったりするわけないじゃないですか
客:そうなんですか?
靴屋:そうですよ。私が目指しているのは,健康的で,経済的で,雨にも強くて,履けば履くほど革が丈夫になって,一生履ける革靴,そういう革靴を作りたいと思っているんですよ
客:そんな高い志をもって作ってたんですか?
靴屋:当然の志ですよ。靴屋なんですから
客:でもねぇ,そんなすごい革靴を作るのは無理でしょ
靴屋:「無理」って言っちゃったらなんにもできないでしょ
客:それはそうですけど,でも無理なものは無理ですよ
靴屋:いや,そんなことはないです
客:いや,無理ですって
靴屋:無理じゃないですよ
客:いや,無理ですよ
靴屋:あるんですよ,実は
客:え?「ある」って何が?
靴屋:だから,そういう革靴がですよ
客:「そういう」って?
靴屋:だから……,健康的で,経済的で,雨にも強くて,履けば履くほど革が丈夫になって,一生履ける,そういう革靴ですよ
客:え?健康的で,経済的で,雨にも強くて,履けば履くほど革が丈夫になって,一生履ける革靴?そんなのあるんですか!?
靴屋:あるんですよ
客:だったらそれくださいよ
靴屋:いや〜,これはね,売れないんですよ
客:売れない?
靴屋:えぇ,売れません
客:でもあるんですよねぇ
靴屋:えぇ,あります
客:だったら売れるでしょ
靴屋:いや,売れません
客:なんでです?
靴屋:「なんで」と言われましても…
客:お金なら出しますよちゃんと
靴屋:そういう問題じゃないんです
客:じゃあどういう問題なんです?
靴屋:いや〜,これはちょっと特殊な革でできた革靴なんでね,……売れないんですよ
客:特殊な革でできた革靴?
靴屋:えぇ,そうなんです
客:特殊な革とか言ってぇ,今度はワンタンの皮とかじゃないでしょうねぇ
靴屋:いえ,違います
客:じゃあ,一体なんの革でできた革靴なんです?
靴屋:◯◯◯◯でできた革靴
客:あぁ,◯◯ね
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あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】