「和牛の漫才は正統派なのか」という議論が巻き起こっていますが,今回のM1で"正統派"だったのはどのコンビ?
今回のM1,「正統派だったのは和牛だけだ」と言う方がいる一方で,「和牛は漫才コントだ。ジャルジャルや霜降り明星のほうが正統派だ」と言う方もいます。「トム・ブラウンは正統派ではない」という点ではほとんどの方の意見が一致しているようにですが,それ以外のコンビに関しては意見が分かれているようです。
このように正反対の意見が飛び交っているのは,「正統派漫才の定義」が曖昧だからだと思います。「正統派=しゃべくり」だと思っている方と,正統派漫才を別の基準で捉えている方とで意見が割れているのだと思います。
正統派漫才の定義
わたしが思う「正統派漫才」かどうかの基準は,「素の自分や素の自分たちの関係性をいかに出せるか」です。これは,今回審査員を務めたサンドウィッチマンの富澤さんが何度か言っていた「人間力を出す」というのと同じことだと思います。
「しゃべくり漫才」なのか「漫才コント」なのかは関係ありません。ただ,「しゃべくり漫才」のほうが「素の自分」や「素の自分たちの関係性」を出しやすいので,「正統派=しゃべくり」という印象が強くなるのだと思います。
普段の二人の会話や関係性に近い漫才が正統派で,会話というより「決まったセリフ」や「ギャグ」が多くなればなるほど正統派から離れていくというかんじがします。
でも,「おもしろければいいじゃないか」という気持ちも分かるので,M1のほかに「正統派漫才選手権」みたいな大会があるとおもしろいですよね。
今回のM1で正統派だったのは?
やはりダントツは和牛だと思います。漫才コントがメインでありながらも,「素の自分」や「素の自分たちの関係性」がベースになっているからです。それによって生まれる「間」が,「まさに漫才!」「正統派」という印象です。
その次は,ミキ,かまいたち,ギャロップ,見取り図あたりだと思います。ミキは,お兄ちゃんの昴生さんのあのかんじが「素の自分」なのかがいつも疑問で,「もっと普通にすればいいのに」と思ってしまいますが…
かまいたちは,漫才では濱家さんがすごくいいです。山内さんがもっと漫才師らしい雰囲気やしゃべり方になればいいのに…」と思います。
ギャロップはほんとうまかったですね。特に林さん。「毛利さんの個性がもっと漫才に出てくればいいのに」と思いました。
見取り図は,トップバッターであの落ち着きはすごかったです。でも少しギャグ漫才的な印象を受けてしまいました。
その次が,霜降り明星,スーパーマラドーナ,ゆにばーす
霜降り明星はおもしろかったですが,二人の掛け合いがあまりなく,ギャグ多めというかんじなので,正統派とは少し違う印象です。
スーパーマラドーナは,武智さんが恐くて田中さんが弱いというそもそもの関係性からなのか,どうも正統派に見えないんですよね…
ゆにばーすは,途中の原さんのしゃべりに驚きましたね。うまい!巨人さんとまったく同じことを思ったのですが,あのしゃべりでいけばいいのに!
それから,ジャルジャルとトム・ブラウン
ジャルジャルに関して,富澤さんが「機械みたい」「人間力を見たい」と言っていましたが,同感です。漫才コントではないという理由で「和牛よりジャルジャルのほうが正統派」という方もいますが,「素の自分」や「素の自分たちの関係性」があまり出ないんですよね。コント力が半端ないお二人ので,どうしてもコント的な作り方をしてしまうのではないかと思います。
トム・ブラウンは,もう正統派かどうかなんてどうでもいいですよね。あそこまで振り切ってやってくれるなら,「もうそれはそれはでいい!」というかんじがします。
正統派漫才でM1を制するには?
まるで普段の二人の会話を聞いているようなスタイルでありながら,しっかりとした話芸を持ち合わせ,ストーリーがしっかりとした内容で,最後にストンと落とすオチがある漫才をやれば,誰もが納得する正統派漫才師のM1チャンピオンが誕生すると思います。
和牛が「漫才コント」ではなく「しゃべくり漫才」を極めたら,こういうチャンピオンになれそうですね。
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