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漫才論| ⁷ボケやツッコミが思いつかない場合はどうすればいいの❓

「漫才台本を書いてみたいけど,何から書き始めればいいか分からない」とか,「ボケやツッコミはどうすれば思い浮かぶのか教えてほしい」といった声をよく耳にします。「ボケが思いつかないと何も書けないし,何から書き始めればいいのか分からない」と思うかもしれません

確かに,「いいボケが思いついたからそれをネタにしよう」という流れでネタを書き始めるのが普通なのかもしれませんが,しかしそれだと,「ボケが思いつかない人はネタを書けない」ということになってしまいます

でも,そんなことはありません。必ずしもボケから書き始めなくても,漫才台本を書くことはできます。そこで今回は,「なかなかボケが思いつかない人でもこうすれば漫才台本が書ける」という方法を取り上げてみたいと思います


まず普通の会話を書いてみる

なんでもいいので,普通の会話を書いてみます。今日家族や友人とした実際の会話でもいいです。「まず書く」というのがポイントです。「漫才」とか「ボケ」とか「おもしろいかどうか」などまったく気にせず,普通の会話を書いてみます

例えば・・・

A:一番好きな食べ物って何?
B:「一番」っていうのは難しいね。寿司とか,焼肉とか,ラーメンとか,いろいろあるからさぁ
A:強いて言えば?
B:強いて言えば?焼肉かな?
A:やっぱり肉だよね

本当に普通の会話です。おもしろい要素は0です。それでも書くことに大きな意味があります。書かないとそれで終わってしまいますが,書くことでそこから始まります

次に,このごく普通の会話の「どこにボケを入れられそうか」を考えていきます。ここでもやはり「書く」ということが大切です。思いついたボケが「くだらない」と感じると,「こんなボケ書く必要ない」と思うかもしれませんが,それでもまず書きます。本当に「くだらない」ボケでもとにかく書いてみると,そこから何かがみつかることがあります。そこからどんどんボケが広がり,おもしろいボケに辿り着くことも結構あります

実際にやってみてください

「一番好きな食べ物って何?」のあとにボケるとしたら,どんなボケが思いつきますか?思いついたボケをいくつでも書き出してみてください

例えば・・・

A:一番好きな食べ物って何?
B:「一番」はないね。「二番」ならあるけど

わたしはこういうボケを書いてみました。どんなボケでもいいので書いてみると,大抵ツッコミも思いつきます。いいツッコミではなくてもいいので,とにかく自分が思いついたツッコミを書き出してみます

B:「一番」はないね。「二番」ならあるけど
A:どいう状況なんだよそれ。「一番がない」って

例えばこういうツッコミを書いたとします。すると,「一番がない状況ってどういうことだろう?」と,自ら書いたツッコミに対する疑問が湧いてくるので,その答えを考えてみます

A:どいう状況なんだよそれ。「一番がない」って
B:「同率二位」とかあるだろ。両方とも「二位」みたいな

ツッコミにある意味「まじめ」に答えようとすると,元々おかしなことを言ってることに対する説明を加える形になるので,結果的に新たなボケが生まれます。そしてさらにツッコミを書き加えていきます

B:「同率二位」とかあるだろ。両方とも「二位」みたいな
A:「一位」あるだろ,だとしたら。「一位」あっての「同率二位」だよ。もしくは「同率一位」かもしれないけど

ツッコミのAはまともなことを言っていますが,次は元々おかしなことを言ってるBの感覚で,Aのツッコミにある意味「まじめ」に答えてみてください

A:「一位」あるだろ,だとしたら。「一位」あっての「同率二位」だよ。もしくは「同率一位」かもしれないけど
B:数学の話?

ボケの人は,最初のボケに沿って「まじめ」に受け答えをしていくと,結果的に連続でボケる形になります。このやり取りを繰り返し,話題が途切れるまで書いてみるといいと思います

今回は例なので,ここはそれほど引っ張らず普通のツッコミを入れて,先に進みます

B:数学の話?
A:違うわ。「一位がない」ってことはあり得ないんだよ
B:「一番」って決められないでしょ。寿司とか,焼肉とか,ラーメンとか,いろいろありますからね
A:それはそうだよ。でも,強いて言えばだよ

この部分は「普通の会話」です。話が展開する上で必要であれば,無理してボケを入れなくてもいい箇所もあります。ただ,「普通の会話」が長くなりすぎると漫才としてみるのがきつくなるので,これくらい「普通の会話」が続いたら,そろそろボケを入れたいところです。これに続くボケを考えてみてください

A:それはそうだよ。でも,強いて言えばだよ
B:強いて言えば・・・,煮豆かな

一番好きな食べ物に一度も選ばれたことがなさそうな「煮豆」をボケとして入れてみました。これに対するツッコミを書きます

B:強いて言えば…,煮豆かな
A:「煮豆」ってなんだよ

このボケに対するツッコミはいろいろ思いつくと思いますが,次の定番のボケ方につなげるために,今回はこのツッコミにしてみました

A:「煮豆」ってなんだよ
B:煮豆とは,「大豆や小豆やえんどう豆などの乾燥豆を水でもどし甘い味付けでやわらかく煮た煮物料理のひとつ」だろ

「言葉の意味を聞いているわけではないのに言葉の意味を説明する」というよくあるボケです。そしてこれにツッコミます

B:煮豆とは,「大豆や小豆やえんどう豆などの乾燥豆を水でもどし甘い味付けでやわらかく煮た煮物料理のひとつ」だろ
A:分かってるわ。ウィキペディアか!

このように,「普通の会話」がだいぶ漫才っぽくなりました

A:一番好きな食べ物は?
B:「一番」はないね。「二番」ならあるけど
A:どいう状況なんだよそれ。「一番がない」って
B:「同率二位」とかあるだろ。両方とも「二位」みたいな
A:「一位」あるだろ,だとしたら。「一位」あっての「同率二位」だよ。もしくは「同率一位」かもしれないけど
B:数学の話?
A:違うわ。「一位がない」ってことはあり得ないんだよ
B:「一番」って決められないでしょ。寿司とか,焼肉とか,ラーメンとか,いろいろありますからね
A:それはそうだよ。でも,強いて言えばだよ
B:強いて言えば…,煮豆かな
A:「煮豆」ってなんだよ
B:煮豆とは,「大豆や小豆やえんどう豆などの乾燥豆を水でもどし甘い味付けでやわらかく煮た煮物料理のひとつ」だろ
A:分かってるわ。ウィキペディアか!

これは,「普通の会話」からまず一つのボケを考え出し,そこから生じる流れに沿ってツッコミとボケをどんどん加えていくというやり方です。この方法でたくさん書けば書くほどコツが分かってくると思います。ポイントは,「書き出すこと」「数をこなすこと」です。良かったら試してみてください!

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THE MANZAI magazine
❶「自分たちにしかできない漫才スタイル」を確立する方法 ❷しゃべくり漫才のうまさは「相槌」で決まる ❸「漫才台本の書き方」と「オチのつけ方」 ➍ボケやツッコミってどのようにして思いつくものなの? ❺「言い訳-関東芸人はなぜM-1で勝てないのか-」は"現代漫才論"ではない-ナイツ塙さんが何を「言い訳」しているのかが分かれば,関東芸人がしゃべくり漫才でM-1王者になる道が見えてくる- ❻漫才詩集「38」

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あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】