結城カフカくんとの対話の物語その3

 ぼくは翌朝、起きるとザ・フーのTommyを聴いていた。ロックオペラに分類されるらしい。結城カフカくんもロックが好きでキング・クリムゾンやドアーズを好んで聴いていた。音楽は人の心や魂を癒してくれたり、逆に奮い立たせてくれる。図書館でジャズ・ピアニストのセロニアス・モンクの評伝とスタンリーキューブリックの評伝を借りてきた。

 創作する人のなかには孤独に陥る人もいるらしい。スタンリーキューブリックは完璧主義でひきこもり体質であったそうだ。ぼくは作品がどれも好きなのでその裏側を見たいという気持ちでその本を読んでいった。

 ぼくの彼女のみゆきさんもスタンリーキューブリックのファンで『2001年宇宙の旅』という映画作品が好きと昨日、バーで映画について話しながら飲んでいたときにぼそりともらした。

 ぼくは密かに数学をもう一度やり直したいと考え、図書館でいくつかの数学書もかりてきた。ぼくは自閉症を抱えて知能指数が高くはなかったのでわかりやすい数学書から始めることにした。参考書も基礎からはじめるものを買いなおした。高校数学がまともに理解できるようになりたかった。将来的にはぼくは理論物理学者になりたいなぁと漠然と考えていた。もちろん小説も書き溜めていきたい。

 結城カフカくんはジャズも好きでいきなりジャズバーをオープンして店を切り盛りするようになっていった。肉体労働が大変で予想外の忙しさに戸惑っていた。そのために3ヶ月間、休んでいたがまた再開し、ピアノの生演奏をできるまで回復した。まったくの驚きだ。

 みゆきさんはダンテの『神曲』とセルバンテスの『ドン・キホーテ』を研究し、小説を書いていた。ぼくも戯曲を書きたくなったので、赤いノートに戯曲を書きとめることにした。これは一種のセラピーのような営みであった。

 ぼくはそうこうしているうちに麻薬的なUKロックの沼にハマるようになっていった。オアシスやピンクフロイドを好んで聴くようになっていった。

 一方で、みゆきさんはスピノザの『エチカ』を学ぶようになった。邦訳と原書がボロボロになるまで読み込んでいった。そのうちにみゆきさんはビートルズのコピーバンドを結成し活動するようになっていった。みゆきさんは後期のビートルズ1960年代の曲をエレキギターを持ちながら歌った。

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